裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

20日

月曜日

ザラメに埋まる

 夢のケッタイな想像力というのにはときどき感心するが、“よくこういうことを思いつくものだなあ”という夢と、“なんでこんなことを思いつくんだろう”という夢の二種類がある。今朝、明け方に見た夢は、私が殺し屋の出てくる小説を書かねばならないのだが、いい殺し屋のキャラクターを考えつかず、そこで『007/ロシアより愛をこめて』に登場した殺し屋レッド・グラントの死体が実は冷凍保存してあり、これが人工心臓で生き返って主人公になる、という話を考えて、よし、これなら今までいろんな映画に出てきた殺し屋キャラクターをみんな生き返らせて自分の作品に出すことができるぞ、他人のフンドシで相撲を取るとはこのことだ、とホクソ笑むというものだった。これなどは前者の夢である。

 そして、7時過ぎにウツラウツラしながら見たのは、私が講演かなにかの打ち合わせをせまい事務所で行うのだが、打ち合わせ相手はその事務所の地下におり、彼とは床板を通して話さなくてはならない。しかも、その床にはザラメが1メートルくらいの厚さに敷き詰められており、話が聞き取りにくいことおびただしい。そこでザラメを掘って穴をあけ、床板に直接耳を当てて聞こうとするが、そこでザラメが周囲から崩れ落ちてきて、窒息しそうになる、というもの。これは後者である。何故ザラメ?

 8時起床。朝食、ダイエットスープ、チキン少々、リンゴ。午前中にメンズプライスマガジン8枚。目は昨日の豚足のせいか調子よし。

 昨日、『おにいさまへ・・・・・・』を黙阿弥の芝居のようだ、と書いたが、集英社新書『悪への招待状』(小林恭二)を読んだら、これが偶然、その黙阿弥のことについて書かれた本であった。黙阿弥が因果律を強調した作品を多く書いたのは、近代的自我が芽生え始めた幕末の日本人が、因果を不条理なもの、と認識したればこそである、という指摘は鋭い。時代に反する思想やテーマだから、なおその時代の人々の印象に強く残る、というポイントは、何かというと時代の先端を言う今のマスコミ知識人たちの盲点をついたと言えるだろう。作品論を超えて、非常に斬新な文明論になっている。・・・・・・ただし、現代の渋谷の若者を江戸時代にタイムスリップさせる、という趣向は上滑りしていてイタダケない。そういう趣向をこらすなら、もっと今の渋谷系ヤングと江戸ヤングの価値観の違いを際だたせてくれなくては。たぶん小林氏にとっては、渋谷の若者より、文化文政の江戸の庶民の方が、より近しい存在なんだろう。

 3時、“時間割”NHKBSのYくんと打ち合わせ。来年1月の番組に出演の件。残念ながら、こういうときに私に似合ったおバカな映画をやってない。×木××がどうしようもない性悪である話などを聞く。

 風邪薬のんでるせいか、いまいちテンション上がらず、仕事も読書も中途半端になる。原稿の図版資料とか送らねばならないのだが、ちょっと宅配に電話をかけるのがおっくうである。ゲラなおしひとつ、電話での原稿なおし指示ひとつ、やったきり。鶴岡から電話がある。マンガ批評の本出したいが売れない、と言われているらしい。

 夕食作るのめんどくさくなり、ソバ屋でK子と。マイタケてんぷら、トロ中落ちなど。寒いので温かいてんぷらソバすする。この店、以前にやおい系と書いたが、最近店員の質(顔の質だが)落ちた。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa