裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

13日

月曜日

鯨食

 朝8時起床。腹の具合、昨日よりだいぶよし。とはいいながら、まだ本調子ではない。ときおり急にググッと張ってきて、シクシクという痛みが腹の中でひとまわり回るという感じ。今日からグルメ目的の関西旅行というのに困ったことではある。大事をとって朝食、レトルトの卵がゆ。

 出発は12時と決め、それまでにゆうべ送り残したSFマガジン用の近況原稿、それからブツのキャプションをメール。さらに日経ヘルスの漢方薬原稿、5枚半書き上げる。

 官能倶楽部のパティオに予定を書き込みぃの電話を数本かけぇのFAXしぃの郵便局へ行きぃの、といった雑用全てすませ、12時チョイ過ぎに東京駅へ出発。1時7分のひかりで大阪。神戸々々と周囲には言っていたので、うっかり新神戸までの切符を買ってしまい、K子に怒られる。昼食は新幹線の中で弁当。これも大事をとって、茶ソバと炊き込み飯のあっさり弁当。ビールも自粛。やはり今回の不調は仕事疲れか、本も読まず車中ぐっすり眠る。

 4時過ぎ大阪着。定宿の心斎橋ホテルカリフォルニアに入る。大阪の目的は鯨料理の玉水に行くこと。予約まで時間あるので、心斎橋商店街をブラつき、輸入雑貨店でいくつか買い物。ペルーの福の神人形エケッコーなど。このエケッコーお札、家や車の模型などをいっぱい体の回りにブラ下げている、ストレートな福の神である。

 7時、玉水。カウンターで板前さんといろいろ話しながら、鯨を食う。鯨はこないだも浜松町で食ったが、あれはミンク、ここのはナガスであって格が違う(とK子が書けという)。お造り、舌の先でトロケるほど柔らかく、グリコーゲンたっぷりだから、飲み込んだあとまで、口中に旨みが残り、酒で洗い流すのが惜しいほど。生ベーコンはお菓子のような味わい、生姜醤油につけた網焼きはまたさっぱりしていて肉とは思えない。鯨カツも人気商品ということで味わったが、これはまあ、なくもがな。最後に食ったハリハリは水菜のシャキシャキしたさわやかさと濃厚な鯨肉のダシがからんで、もう絶品。他にはヨコワ(マグロの幼魚)の叩き、新タケノコ煮などを食った。関西ではもうこの時期、雪の中から新タケノコが出るのだそうである。落語の『二十四孝』みたいだ。

 日本酒かなりすすみ、実にいい心持ちになり、腹もすっかり回復。我ながら現金な腹である。こないだ、裏モノのみんなとここで食べたときは話の方に気が行っていたが、今日は鯨に神経を集中していたせいか、堪能した気分。ただしお値段も相当に結構であって、普通のグルメ旅行ツアーならこれだけで行き帰りの旅費まで出る、というような額だった。まあ、今年一年ご苦労さん、という意味の大盤振る舞いなので気にしない。ちゃんと来る前に銀行寄って金降ろしてきたし(笑)。

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