裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

1日

木曜日

ゾンビ万端

「この地下室に、食料と、やつらの頭をブチ抜く銃と、あと
軍隊にゾンビと間違えて撃たれないようにかぶる、“ゾンビじゃ
ありません”と書いた帽子が用意されてます」

※天沼打ち合わせ

朝9時半起床、ただしなんやかやメールなどを全部ベッドの上で携帯で
行い、11時まで実質的には“起床”してない。

母は今日から札幌。
弁当を作っておいてくれたのでそれを食べる。
抹茶立てて。

新しい仕事の見本原稿書くが、なかなか進まず。
本チャンもこのスピードではちとヤバい。
倍の速度で筆を進めねば。

札幌西武百貨店(五番舘)、9月30日、閉店。
103年の歴史に幕を閉じた。

西武百貨店札幌店になってもう久しいが、しかし私の世代はやはり
”五番舘”という名称で今も呼んでしまう。

赤レンガといえば北海道庁のニックネームだが、私にとり、
眺めるだけ(子供時代は立ち入りが出来なかった)の道庁より、
気軽に足を運べた五番舘の赤レンガの方がなじみ深かった。

家から歩いて五分の距離にあるデパート。
しかし、そのイメージは赤と金(ドアなどの金属部分に金メッキを
ほどこしていた)の格調あるもので、足を踏み入れると、そこに
“文化”の香がした。同じ圏内にステーションデパート(札幌駅
地下)があったが、そこがどうも拡張された売店、という雰囲気
だったのに比べ、五番舘には風格というものが感じられた。

一回の吹き抜けフロアに設置されたエスカレーターは、
上っていくと下の広い売り場が一望出来、冬には天井から
大きなクリスマスの飾り付けが下がり、それを見たいがために
買い物中の親の手を離れて勝手にエスカレーターに乗り、何度
「迷子のご案内を申し上げます……」
と店内放送を流されたか。

夏は入り口から入ったホワイエに氷柱が立った。
昭和40年代初期を体験している世代なら覚えがあろう、
ギリシア風を模したような台の上に、真ん中に乾燥花などを封じ込めた
大きな氷を立たせて、冷房がわりにしていた。
これがずらりと並ぶ光景が実におしゃれだった。
そう言えばごく一時期だったが、一階にソフトクリームショップが
オープンしたことがあって、ここで私はソフトクリームなるものに
ハマったっけ。

地方老舗デパートの雄としてその名を誇っていた五番舘だったが、
80年代に入り経営が悪化、西武グループと提携して五番舘西武となった。
しかし売り上げに過酷なノルマを課され、そのラインを達成
できなかったということで92年、伝統ある五番舘の名称は消え、
札幌西武百貨店となった。
提携ばなしが持ち上がった当時、西武との提携に反対する
古くからの社員が店頭で必死の呼びかけをしており、
小学校・中学校で親友だった小柳という男の父親も、
もう部長クラスだったろうに、タスキをかけ、メガホンを手に
“伝統ある五番舘の自立を助けてください”と連呼していたのを
偶然見たときは、胸が痛んだものだった。

そう言えばこれも中学生のときの行きつけの書店だった札幌の
老舗中の老舗“富貴堂”を、最初はその名で取り込みながら、
やがてパルコブックセンターと改名させたパルコも憎く、
当時のセゾングループのやり口には心底腹が立ったものだった。

時移り、今やセゾンもかつての覇気なく、不況のあおりで
札幌西武百貨店を閉店させる。そこに失われたのは単に一デパート
ではない、一世紀という“時代”だろう。やんぬるかな。

スケジュール調整。K社との明日の打ち合わせが急用で8日に
ズレる。と、思ったら昨日打ち合わせたN社から、担当をお引き合わせ
したいというので向うの出した日程から5日を選んで向うに連絡。
ところがそうするとすでに入っていたNさんとの打ち合わせを
時間ズラさねばならず、その連絡とか、もう大変。
とはいえ、顔合わせの翌日にもう担当との打ち合わせを、というのは
スピーディで非常によろしい。

そのN社のことと関係するあることで、ちょっと気になる報告あり。
日本は文化国家でない、とつくづく思う。
一方で、いろいろ心はずむやりとりもあり。
やはり自分は企画常に立ててないとダメで、そのために頭使って
ないとダメ。

5時半まで原稿やって、結局書き上がらず。
家を出て、荻窪まで。
天沼会議室で本多劇場とあぁルナの新企画、第一回顔合わせ。
要は演劇界のアイドルを作ろうという企画なのだが、
いつぞやオーディションを行ったとき、ほとんどが冷やかしや
連絡無しの欠席で、結局二組しか合格者がなかった。
しかもそのうちの一人(女の子)は間際に家庭の事情で
講義が受けられなくなり、キャンセル。
結局第一次合格者は一人、ということになる。
それでも頑張って舞台デビューしたいというその男の子と今日、
面談し、基本のカリキュラムなどをハッシーから説明。
プロの写真家のHさんによる宣材写真撮影。

こないだの面接にも同席した映像監督のT氏、脚本家のI氏
と、T田くん、ハッシー、それに受付やった松下あゆみと、近くの
路上焼き鳥屋で今後のこととか打ち合わせ。

T田くんとは本のことでもちょっと。
私の頭は11月公演のことばかり。

帰宅して資料DVD観るが、ちょっと頭がボーッとしていて
内容とかがきちんと把握できず、ダメだこりゃと『仮面の忍者・赤影』
などに切り替えて、黒ホッピー。
ゆうべの大根とアサリの煮物の残りの汁に飯をぶちこんで。
あまりにうまかったので二杯。
12時半、就寝。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa