裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

17日

金曜日

サブカルるジャンヌ

ジャンヌ・ダルクよ、一緒にホラー映画やゴスロリを語ろうではないか。

※『ポケット!』収録、杉ちゃん&鉄平コンサート

昨日ベッドに入ったのが3時。起床朝7時半。3時間半睡眠では今日はちょっとつらいかな、という感じ。入浴、髭剃り、9時朝食。ニンジンとポテトのスープ、王林。

10時、出勤。地下鉄で新宿まで行き、そこでスタジオに持って行くお菓子を買おうと降りたら、そこから乗り込もうとしていた中野貴雄さんに出会う。さらには東急エージェンシーのK野さんにも。やはり丸ノ内線新宿駅はハブなのだな。

中村屋で餡ころ餅買って、再び地下鉄、TBS。スタジオでもう、中野監督の例のオーラが飛び交っている。中野監督の、この世で一番とは言わないが二番目くらいに実用性のない内容のしゃべりのパワーは、この現実世界においてわれわれが無意識のうちに行っている事物や情報の区分、すなわち“役にたつ”“役にたたない”という差別を無効化する。相対化というよりは価値の逆転現象(なにしろ、意味がなく役にたたない話題ほど面白い)であり、しばらく彼を前に話していると、自分の拠って立っているこの世界が大きくゆらぎ異次元空間に放り出されたような気分になる。
「『ワールド・イズ・ノット・イナフ』って要するに日本語だと『007/世間はせまいよ』ですよね?」
「テレビや映画のタイトルにはやけにえらそうに命令している口調のが多いけど、あれ、誰が誰に対して言っているんですかね。『太陽にほえろ!』とか『燃えよドラゴン』とか」
一番笑ったのは007映画のことを話していて、それこそ何の脈絡もなく
「女諜報員『女性セブン』」
と口走ったとき。調整室の向うでI井Dが笑いすぎて、もう息をつくのも苦しげにしていた。

海保アナのテンションもかなり高く、これまでにないノリ。田舎の親戚に不幸があり、急遽帰省しなくてはならなくなったがその葬式の翌日がなんと友人の結婚式で、服を揃えたりなんだりで1時間しか寝られなかったそうである。そんな体調で相手が中野貴雄というのが、脳内アドレナリンを分泌させることになり逆に好結果を生んだか、と思う。

終ってオノと局を出たところの豚しゃぶ屋『ごげんとん』に入りランチのつぼ焼きカレーなるものを食べる。納豆とオクラのねばねばカレーというもの。まあ美味しいが、最近胃が弱っているのか(そう言えばニキビが二つほど出来た)、カレーを食べたあと、胸焼けを必ずする。

仕事場でメールチェック、京都の山田誠二監督から、12月の撮影に使う衣装を先に送ってほしいとのこと。確かに12月は熊本での講演を終えてその夜の京都移動になるため(しかし、最近このパターンの移動が多い)、先に衣装は送っておかないとまずい。

6時、新大久保までオノとタクシー。そこから歩いて労音会館アールズアートコート、『杉ちゃん&鉄平・刑事クラツアーデラックス』に。今回、と学会のトンデモ本大賞実行委員の皆さんを誘う。来年6月のトンデモ本大賞にゲスト出演してもらうため、とりあえず実行委員の皆さんに杉&鉄を体験させようと。ちょっと迷っている間にIPPANさん、I矢くん来ている。ちょっと待って植木さん。談之助さんは急な用で欠席。

植木さんが最後の到着なので待つうち、なんと橋沢さんが来た。こないだの『ポケット!』の調整室で会って、名刺交換して、すぐ行くことを約束したそうである。渡辺さんも来るという。客席に入ったら海谷さんがいて(まあ、この人はいつでもいるが)さらに驚いたことに、『ワナゴナ』のUディレクターがいた。俄然クラス会みたいになる。この人もこないだの『ポケット!』の調整室で彼らを見て、使えるかも、と思い、今日はテストでカメラを回しているそうである。その他、ぎじんさんも。

で、壇上には事件現場のような“立入禁止”のテープが貼られ、ピアノには青いシートが。そこに二人が登場して、演奏開始。テレビの刑事物の主題曲をクラシックと融合させて聞かせる、という基本芸風はいつもと同じだが、今回はおふざけばかりでなく、二人の超絶技巧をきちんと聞かせるコーナーもあって結構。いつもは鉄平くんのどちらかというと引き立て役で自ら任じている杉ちゃんのピアノの腕がたっぷり聞けて満足だった。MCも絶好調だが、逆に二人が手慣れてくると、“仕込んだギャグ”のわざとらしさがちょっとクサく思える。ここまでコントが“出来る”ようになったら、コント部分にも専門家の演出を入れた方がいい。橋沢さんなんかどうだろう。

九時半、ハネて、二人がCDにサインし終るのを待ち、IPPANさんたちに紹介。こないだの『ポケット!』を聞いて、間際に応募してくる人がかなりいたそうで、オノもホッとしていた。
「宣伝しても何にも効果がない、ということになったらイヤですからねえ」
と。Uさんも今回の杉&鉄はバッチリだと喜んでいたので、ぜひ『ワナゴナ』出演の際は私も出しなさい、と言っておく。渡辺さん、“やっぱり基礎のある人間のおふざけはいいねえ”と。

その後、私、オノ、植木、I矢、海谷、橋沢の面々で飲みに。植木さんお勧めの、新大久保近くの韓国料理店『恵美寿』。ここは焼肉の他、秋魚鍋(ドジョウ)、補身湯(犬)もちゃんとあって、グリーン食堂がなくなった喝を癒してくれる。チャドルベギ(豚の背肉)、三段バラ(サムギョプサル)など、いずれも結構。酒はビール、マッコリの他、シウォン(C1)といううまい焼酎も。店員の兄ンちゃんが三段バラをうまく焼いてくれながら、この酒は自分の故郷の酒ネ、と嬉しそうに教えてくれる。故郷ってどこだいと訊いたら釜山だそうな。

12時ころ店を出る。海谷さんとI矢くんは帰るが、久しぶりにこのメンバーなのでも少し飲もうと提案。オノが“ノリが食べたいです!”というので、寿司屋でも、と探すがなにしろ韓国料理やインド料理、わけのわからぬアジア系の店ばかりの一角。なんとか探して、ノリはなさそうだがビル地下のおでん屋“お多八”なるところを見つけて入る。古い店なのだろう、品書きがいずれもおでん鍋からただよう蒸発した出し汁で煮込まれたような色になってよく読めないくらい。中に“まぬけ”というのがあり、あれはなんだと話題になる。結局結論でず、訊いてみたらネギ。“ねぎま”の“ま(まぐろ)”抜き、の意だそうな。

ここの店でカンバンまで、と思っていたらもうすでにカンバン近く。何かそうなると飲ん兵衛というのは気がおさまらず、さらに大衆居酒屋に入ってアルコール分補充。ハシゴをあまりしない私にとっては珍しい。飲みながら今日の杉&鉄の舞台を“見せる”ものにするにはどうしたらいいか、というようなこと。結局、タクシー(植木さんがタクシー券を出してくださる)に相乗りして、帰宅したのは4時近く。睡眠不足というのも連続するものである。明日はまあ、休みだからいいが、家に帰りたがらないというのは、独り寝がイヤだからか。K子の受験準備ホテル篭りももう長い。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa