裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

5日

日曜日

シェーの目覚め

イヤミの真似をしたいお年ごろ。

朝8時45分起床、あわてて入浴、9時朝食。ジャガイモスープ、ピオーネ、みかん。今日はまず朝に映画を見て、それから取材に向かう予定だが取材先の場所がわからないことに朝、気がつく。オノにメールするが、外でメールは読めない。ま、ナントカナルダローと思い出宅。

11時に青山着。イメージフォーラムで武智鉄二『華魁』。先日の快楽亭とのトークでさんざネタにした映画だが、何しろ二十年以上前に観たっきりなので、何か記憶違いもあったのではないかと思い、またそんなにトンデモな映画であったか、今では自分でも信じられないが最初に見たころはまじめな映画青年であり、ただ憤慨したという記憶ばかりだったので、いま一度確認したいと思い、観に入ったもの。

で、結果、いや、記憶以上にトンデモな映画で大満足。怒ってそして呆れた昔に比べ、こういう作品を愛せるようになっている自分がウレシかった。

明治の長崎遊郭を忠実に再現したセットの豪華さと華魁道中、太夫お披露目などの儀式をきちんと考証したシーンの風格に比しての、俳優たちの演技、なかんずく主演の親王塚貴子のあまりの台詞回しの下手糞さも今の目で見れば微笑ましい(彫物師役の伊藤高など、あの伊藤雄之助の息子なのにあんなに下手でいいのか?)。

恋人の人面疽が女のあそこに現れて白人男(モルガン商会の御曹司)のペニスにかみつく、そこのシーンの怪獣映画みたいな音響のアホらしさ、その人面疽を退治しようとする神父とのエクソシストまがいの対決シーンのバカバカしさはつとに有名だが、それより、そこまでは遊郭の話だけに音楽も和風だったものが、ラストの本番シーンではいきなりムード歌謡みたいな安っぽい主題歌になるところ、すっかり忘れていたが大爆笑モノであった。
……ところで、いくら爆笑モノのトンデモ映画であっても、一般の劇場では笑いは内心に収めて静かに見ること。中には真面目にこの映画を鑑賞している人がいるかもしれない。いや、この映画の感想を書いたブログで、笑っている客に怒っている記述があった。日本人は静かに映画を観るのを好むのだ。

満足して館を出て、青山をちょっと歩き、カレーうどんで昼食。そこからタクシーで中野。携帯でオノに場所を確認。霊スポットに行って、そこで堤裕司さん率いるゴーストハンターズに幽霊を捕獲してもらうという企画で、某所の地下倉庫に向かう。編集部のYさん、編プロEさん他、ライター、カメラマン、そして堤さんを筆頭にゴーストハンターズ。堤さん、相変わらず(昔、オノプロの仕事で数度ご一緒したことがあったのだが、忘れているようである。確かに、あのころの私と今の私では立場も何も違いすぎている)。他に女性含めハンターズ3人。

まず堤さんの霊理論を聞く。氏に言わせると、幽霊は人間の魂ではないという。なぜなら、人間の魂であるなら、服を着ているのはおかしい、服にも霊があるのか、と、中国の無鬼論のようなことを言う。また、幽霊が人間の生前の思考能力をそのままに備えているなら、何十年も同じ場所に出て、同じようなこと(皿の数を数えるとか)をするというのもおかしい。あれは、その場に残留する磁気のようなものに記録された、思念なのではないか、と堤氏は言う。いわばビデオテープが繰り返し繰り返し再生されているようなもので、だから、同じ行為を繰り返す。では、その記録再生装置はどこに、というと、ダウザーらしく、地下水脈、それから植物、そしてもうひとつ(聞いたが失念した)といった状況がそろうと、そこが霊のビデオデッキになるのだそうだ。

そのそもそもの思念の記録ということがどういうリクツで可能なのかはおいておいて、幽霊の出現や行動を論理的に説明する理論として、これは面白い説だと思った(イギリスの某ダウザーの説の改良版だそうな)。堤氏はこの理論で、“幽霊=霊魂”説の信者たち(つのだじろう氏など)と大論争しているそうである。

堤さんからゴーストレーダー一個いただく。それで倉庫の中を調べる。さっき私の来る前はレーダーにばしばし反応していたそうだが、今はさほどでもなし。ただし、控室でやってみたら、いきなり反応し(堤さんに言わせると幽霊ではなく、守り神的ないい存在の反応だとか)はじめた。これで、ライターさんや他のハンターの方の持っているレーダーも一斉に反応しはじめれば、少なくともそこに何かある、という証明には(ついでにこのレーダーの信憑性の証明にも)なるのだが……。ハンターズの一人のひげの男性が
「すごいですよ、バシバシ来て(反応して)ますよ!」
と興奮気味に言っていたが、後で聞いたらこのレーダーを製造販売している会社の社長さんだとか。

一応霊確保に成功(霊を閉じ込める水のペーハー値が変化したのが霊の捕獲された証拠なんだそうだ)し、みんなで記念写真。揚々とハンターズは引き上げていく。来週またCSの取材があるというから売れっ子で結構なこと。堤さんの本業はマジックでの大道芸らしい。ダウザーでマジシャンというのはかえって疑われやすいと思うのだが。

一旦新中野の自宅に帰る。ベッドに寝転がって本など読み、ゴロゴロ。6時、起きだしてまた中野、アニドウ上映会。小腹が減ったので近くのカフェでクロックムッシュ買う。今日は南正時さんの著書『鉄路その彼方へ』の観光記念アニメ大会で鉄道に関係しているアニメ、ショートフィルムの上映という趣向。鉄ちゃん関係の人か、全体的に客の年齢層は高め。ぎじんさんと恵比寿興行につきちょっと打ち合わせ。クロックムッシュ食べるがモソモソしてまずく、こんなものを食ってしまった、と落ち込むような味。

上映内容は例により詳しくは書けないが、熊川正雄『ぽっぽやさん・のんき駅長の巻』がまた見られたのが収穫。初めて見るというまるさんやさざんかQさん、植木さんたちに
「これは面白いですよ」
とフッておいた。途中まではどこが、と思っていたであろう彼ら、ラストで爆笑、大拍手。いや、内容は拍手しちゃいけないようなオチなのだが。あとの対談で南さん、
「あの細かい描写は絶対国鉄の協力があったはずで、それであの内容というのは、職員たちにこうなってはいけない、という教訓のために見せていたのじゃないか」
という。対談の後で映したフィルムは満鉄の亜細亜号をはじめ、珍しい鉄道写真がぎっしり。南さんはアニメーターをやりながら趣味でやっていた鉄道写真が本業になってしまった人だが、その写真を見せて一番喜んでくれたのが大塚康生さん、高畑勲さんもまず面白がってくれたが、宮崎駿さんだけは
「こんなもの撮ってないで、早く嫁さんもらえよ」
と冷ややかだったそうな。

なみきもアニメーターと鉄ちゃんの関連性に触れて話す。ウォルト・ディズニーは自宅の庭にミニチュアの汽車を走らせていたがウォード・キンボールは“本物の“汽車を三台も持っており、自慢して
「(ナイン・オールドメン仲間の)オリー・ジョンストンも汽車を持っているが二台だけだ」
と言っていたという。なみきがあとでジョンストンに会って、キンボール氏がこう言っていたが、と言うとジョンストン、ムキになって
「しかし引いている線路の長さは自分の方が長い!」
と言い張ったとか。鉄っちゃんという人種はどこも同じ。

上映後、植木さんたちと、芸術劇場のすぐ近くのもつ焼き屋に入ってイッパイ。例によっての馬鹿ばなし、駄洒落ばなし。この店、知り合いが子供を連れてきていたり、ご飯食べに寄ったという親戚が来たりと、いい感じの下町風の店。煮込みが終わってしまったというので“もっつん鍋”というのを頼むが、これがアタリ。“メタボリック症候群なんじゃないか”と思うほど脂肪の多いモツで、口に含んで噛むと甘みがじゅん、と染み出し実にうまい。最後にメン、と頼んだらインスタントラーメンだったのはさすがこういうザッカケない店、というかなんというか。

植木さんがタクシーおごってくださる。有り難し。車中で来年のお仕事の話など。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa