裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

6日

火曜日

渡る世間はアリガバリ

橋田壽賀子・仮面ライダーを描く。

6時に目が覚めてしまい、『映画の授業〜映画美学校の教室から』(青土社)を読んでいたらいきなり私の名前が出てきて驚いた。塩田明彦(『黄泉がえり』)の授業で『ゴジラ』を扱っていて、あの映画の特異な“いまの感覚からいえばありえない”作劇について、説得力ある答として、私の“ゴジラ/神話説”がとりあげられ、それを中心にして講議がなされていた。

7時半起床、入浴、日記つけ。9時朝食、カブとセロリのスープ。ニンニクが入っているのかと思う程セロリが濃厚。それにスイカ、ブドー。今日は本来であれば1時に楽工社でトゥーン本打ち合わせなのだが昨日、編集のバーバラに言って、しばらく日延べしてもらった。現在のスケジュールでは資料用意するのが無理。

そんなわけで午前中はずっと原稿。『社会派くんがゆく』の対談起こしチェック。最中に談之助さんから電話。大東両先生が亡くなったとのこと。やはり、と思う予感はあったが、しかし愕然、そして落胆。あと一ヶ月、天が余命を与えてさえくれれば、最後の花道を飾らせて差し上げられたものを。潮健児さんのことなども思いあわせ、複雑な心境。最晩年に至って新しい芸を開拓し、それが看板になってテレビやイベントに引っ張りだこになったというその芸人魂のたくましさは畏敬の対象だった。その最後の輝きを先生に与えた獅篭、功徳を積んだことだと思う。黙祷。談之助さんと、と学会で花を送ることを話し合う。

12時に弁当、ウナギの自家製佃煮と卵焼き。冷蔵庫の中をひっかき回し、ニラと油揚で味噌汁を作る。体調不良というわけではないが、足がむくむ。血行が滞っている感じ。ベッドの上に寝転がって、血行がよくなる(んじゃないかと思う)運動を少しやる。気持ちはいいが、汗が出ること。シャワー浴びる。

事務所に出る。今日はオノは入籍手続きのため休み。ラジオライフの原稿、遅れているのを書く。途中で講談社モウラN氏から、まだ改稿原稿が届いていないとの電話、あわてて送ろうとしたら、改稿データが自宅だった。もう一回、頭から改稿したものを送る。

それから静岡の講演仕事のプロダクションからプロフィール等を送れという電話、さらに週刊プレイボーイから、『笑店40年』という記事を書くので何かそれにまつわるエピソードなどを、と電話インタビュー。この雑誌のこのあいだが“日本における高額訴訟裁判”についてのインタビューで、今日は笑点、聞いてくる方もそうだが私も窓口の広いことよ。

そんなこんなでラジライ進まず。バーバラ出社してきて『創』で連載取れたと報告。S編集長のことを表現して曰く“まったく愛想のないオヤジ”と。大笑い。

7時半、あとの仕事は自室で、と思い、東急本店で買い物して帰宅。さて、とパソコンの前に座り、インターネットエクスプローラーでネットを立ち上げようとしたら、起動途中で落ちてしまう。何度やってもダメ。再起動してもダメ。

パイデザに電話したら、飛んできてくれて、ネットスケープでつないでみるがこれも起動したかと思うとすぐオチ。新しくファイアフォックスを入れて試みてみるがそれもダメ。かろうじてサファリでつなげたので(なぜこれだけ?)、明日以降また様子みて、ということにする。これでもう9時を過ぎてしまい、今日の仕事は投げる。

鴨肉と豆腐の煮物、一夜干し目刺などで夕飯。DVDで『名探偵登場』を見ながら。どうしてパッケージにチャールズ・アダムスのあの絵を使わないのか。版権の問題なのだろうか。しかもそのパッケージも、ピーター・フォークのサム・ダイヤモンド一人を大きく扱っており、うっかりすると『名探偵再登場』と間違えてしまう危険性もある。フーダニットの写真の中にエルザ・ランチェスターが出ていないのもひどい。字幕翻訳がまずくて、途中から英語字幕に切り替えて見る。まあ、ダジャレが多い台詞で訳しにくくはあろうが、劇場版の字幕はとにもかくにもなんとかギャグを翻訳しようとがんばっていた。こっちのは訳しにくいと見ると飛ばしてしまうんだからお話にならない。

名探偵たちに殺人ゲームをいどむ謎の富豪役にトルーマン・カポーティ。確か筒井康隆も言っていたが、われわれ日本人が見ることのできる“動いている”カポーティはこの作品の姿だけなので、とてもこの男がかつてハリウッドスターやニューヨーク文化人の間で奪い合いになった美青年とは思えぬ。

特典映像は原作・脚本のニール・サイモンのインタビューだけ、とややショボい。まあ内容は面白かった。アレック・ギネスが撮影のあいまに、新しく来た台本を読んでいて、それが『スター・ウォーズ』のものだったとか。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa