裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

24日

日曜日

思いこんだら色仕掛け

 うふ〜ん、ロボエロよ〜ん。朝、7時30起床。『アバレンジャー』、夏休み特集で今回はアニメ『釣りバカ日誌』とのコラボレーション。こういう企画は以前にも、『コメットさん』(大場久美子バージョン)や『シュシュトリアン』にウルトラマンが特出したり、またシュシュトリアンが『カクレンジャー』に特出したりと、前例がないではないが、アニメと特撮ヒーローものが、ここまでしっかり共演したというのは(『宇宙怪獣ガメラ』のヤマトとかのようなカメオならともかく)これが初めてなのではないか? 最初はただの視聴率稼ぎのお遊びと思っていたが、アバレンジャーのピンチに浜ちゃんがテレビ画面から飛び出して、怪人と釣り対決をするというクライマックスの展開には、主人公の台詞“……何でもアリだな”を、思わず同時につぶやいてしまったほど。CGによるあまりの画面合成技術の進歩は、“特撮モノを見ている”という精神的なウェッジを逆に立たせなくしてしまう効果をもたらす場合が多く、実は好みではないのだが、こういう使い方には感服。

 朝食、生ベーコンとトマトのサンドイッチ。このスモーク・ベーコンは生でも食べられるというのがウリで、トワ・ヴェールというところから取り寄せているのだが、酒のつまみにも結構。北海道の中でも田舎に属する“寿都(すっつ、と読む)郡”にある。トワ・ヴェールは寿都郡黒松内町だが、海寄りの寿都郡寿都町の町長さんが、ずいぶん昔、うちの薬局の常連さんだった。自分のことを“おらハ”と呼ぶ、自他共に認める田舎者だったが、愛唱歌が“昭和維新の歌”というくらいの、思想的には徹底した保守派。その根っこには終戦時のシベリア抑留経験があって、その体験談をよく店で聞かせてくれたが、そこでのロシア人の間抜けに近い純朴さ、日本人のこすっからさのエピソードには、毎度腹をかかえて笑ったものだった。収容所の人々は、食料の配給の割り当てなどで、ロシア兵を出し抜き、また、同じ収容所仲間すら出し抜いたという。ある日、何かのことで街に出たとき、彼とたまたまバッタリ出会い、近くの喫茶店でほんの三十分ほど、一緒にお茶を飲んだことがあったが、そこで彼はしみじみと、私に語ってくれた。

「なア、若先生(私のこと)ヨ。日本人(ヌホンズン)ツのアナ、頭(アダマ)がよすぎンで、どこサ行でも、仲間も裏切るス、友達(トモダツ)も裏切ンだ。みんな平等言(ツ)っといてハア、自分(ズブン)だけが得することヌかけちゃ、世界一(イツ)だ。共産主義ツのアナ、そんな日本人に、一番(イツバン)似合ってる政治(セイズ)の形(カタツ)でネカと、おらハァ思っとンノヨ、実(ズツ)は。……ンンだかンナ、日本を共産主義にだけはスちゃなンネ。頭ハよすぎる国(クヌ)てのは、実は不幸にスかなンネ。みんな、表サ笑てて、その裏で人(スト)サ出ス抜くことスか考えネ。皇室(コウスツ)つゥもンサ上にいただいて、国のため、天皇陛下のおんためつゥことサ第一(ダイイツ)ヌ考えて、はズめて、日本はナ、世界に恥ズかスくネ国になれンだ。天皇さまがなんでエレえ、ンなことおらハわがンネ。ンだどもヨ、天皇さまツのはあれア重石(オモス)なノヨ。日本人てのア、重石がネエけれア、すンぐ、ぐずぐずヌなっツマウ国民なノヨ。……頭よすぎるてのも、若先生ヨ、あれでハア、考えもンだぞォ……」
 教養に深いものがあったとは思えないし、言動もお世辞にも高潔とは言えない兵隊あがりの老人ではあったが、しかし、それだけに、その語る声は、大地の上を行く風の音のような、素朴で現実の上に根をはった力のようなものがあったと思う。

 新聞の書評欄に蜂巣敦氏の『殺人現場を歩く』が書評されていた。知り合いの本として読売で書評されたのは初めてではないか。美好さんの掲示板に報告しておく。昼は外出し、青山で立ち食いの冷やし肉そば。紀ノ国屋で買い物したが、ネギや葉ものが高い々々。帰宅して仕事にかかる。光文社文庫あとがきだがなかなか進まない。そろそろまずいのだが。

 仕事すすまないまま、体がどよんとしてきたので切り上げて新宿に出てサウナに入る。ひさしぶりに男のH先生。男性の先生の方が揉み方がソフトなのはどういうものか。揉まれながら眠ってしまう。疲れていたのか。帰宅して、今日の料理の仕込みをしてまた少し仕事、でもやはり捗らないので、8時に放擲、食事の用意。羊肉のポーター煮込み、豆腐とキンメダイの蒸しもの、それとじゃこセロリご飯。キンキの干物 も焼いたが、量が多いので明日の昼にでも、と冷蔵庫へ。

 羊肉のポーター、塩気を抑えたのでK子にも好評。ガラス製の耐熱容器の底に羊肉を敷き、その上にジャガイモの輪切り、さらにその上にタマネギの輪切りを乗せ、上からポーター(苦みの強いイギリスビール。荷物の運搬人のような下層階級が好んだというのでこの名がついたという、いかにもイギリスらしい嫌味な命名)を注ぎ、コンソメスープも注ぐ。ベイリーフと胡椒と塩も加え、そのまま容器ごとオーブンに入 れて180度で2時間熱する。

 LD(香港製)で周星馳の『西遊記』。つまりは『チャイニーズ・オデッセイ』なんだけど、香港版なので英語と中国語(北京官話?)の字幕つき。『チャイニーズ・オデッセイ』は日本ではストーリィがややこしくて“ゴダールなみの難解さ”などと言われていたが、英語字幕で見ると意味がよくわかるわかる。ギャグのどうしようもなさに目をつぶれば、映像といい特撮といい、実に私好み。特に本物の女優を吊り操演しているクモ女が最高。周星馳が結ばれるのがその妹の白骨女であるというのがちと残念だったほど。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa