裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

11日

月曜日

エロの尿検査

 元ネタは裏モノやオタクアミーゴススタッフで活躍の“エロの冒険者”さん。マイナーですいません。しかし、“尿検査たち”とか“デジモンテイマーズ・尿検査たちの戦い”とかとやっても、“エロの尿検査”のインパクトにはかなわんのですな。

 朝、7時20分起床。朝食、発芽玄米粥に梅干。ゴールデンキウイ。昨日一日、朝からなんだかんだでくたびれたせいか、はたまた明日から雨、の予報ということは気圧がまた乱れ初めているのか、今日は調子出ず。入浴時、ヘンケルの胼胝削りでカカトを削る。削ったカカトの皮が水を吸って白くなり、排水口の目皿にたまるが、つま んでみると、イカの珍味に見事にそっくり。

 仕事関係でメール数通。文庫の打ち合わせ、ゆまに書房の少女小説傑作選の話。こちらは少し〆切が延びた。二見書房のヒーロー論をやらないと、とあせる。あせると絶対うまくいかないので、あせらないように、とヘタレるような曲をCDでかける。テレビ時代劇主題歌集の『浮世絵女ねずみ小僧』の主題歌、スキャットが(ねずみ小僧なので)“♪チュッチュッチュルッチュッチュッチュチュチュ〜”なのである。大 笑い。ヘタレるどころか盛り上がってしまったではないか。

 SFマガジンの原稿もやらねばならないが、二見の方も少しは手をつけておかないと、いやWeb現代はどうする、と、何か四方から手足を引っ張られているような感じで、何ひとつ進まない。昼は外に出るが、こういうときは何を食うかというような考えもまとまらない。道玄坂小路の『かつ一』にフラフラと入ってかつ丼。ここのかつ丼はタレも薄味で卵の半熟加減もよろしく、まことに……とほうばりかけて、いかんいかん、朝昼はダイエットなのだった、と思い出し、半分だけ食って後は残す。

 東急本店地下紀ノ国屋で野菜類、アミールSなど買って重い荷物を抱えてエンヤラヤと帰宅、少しでも食ったカロリーを消費しなくてはとの思い。しかしくたびれて寝転がってしまい、宮尾しげを『芸能民俗学』(伝統と芸能社)読む。宮尾しげをと言えば『団子串助漫遊記』で著名な漫画家で、後に民俗芸能研究家に転じた人。日本中の祭事をこまめに歩き、記録しているその資料は今になってみれば貴重極まりないものなのだが、文章が悪文で、読んで内容を理解するのがかなりの苦労である。決して難解な用語を使っているわけではないのだが、文章表現が唐突で、ときおりこんがら かり、何ヲ言ッテイルのかよくわからなくなる。
「民族芸能には、見方によって狂態に属するものと断定してよいものも少なくない。断定できないものは、第三者が見て狂態そのものと言う。本人も狂態がかっていることを充分に知ってそれを演じている。そうなると狂態そのものではないともいえる」
 一見、非常に簡明な表現でわかりやすい文章のように思えて、中の部分の“断定できないものは〜狂態そのものと言う”というところが意味不明瞭であるため、全体として、何をもって狂態とするのかが非常に判断しにくくなっている。タチの悪い悪文 と言えるだろう。

 夕方、メールやりとり数通。と学会例会のこと、某困ったちゃんのことなど。
「実際、あれにはまいりますなあ」
「あれの前世というのはダニで、私の前世がそれに噛まれていたのではないかと」
 ……人の悪口というのは楽しいものである。と、いうか、祭事のひとつとして、悪口を並べ、そういう者どもを取り除いてもらうことを神に祈る神事がいくつも日本には残っている。神を称えるという名目で、徹底して誇張した罵言を並べる、そのカタルシスに儀式の参加者は喝采したのであろうし、悪い言葉を立て続けに述べることで逆にそういう要素を自分の回りから排除する、という厄よけの意味もあったろう。悪口はストレスを払い清める手段であり、その排除のために神が存在する(しなければ いけない)という、信仰の確認作業でもあったのではないか。

 先に挙げた『芸能民族論』より、京都太秦広隆寺牛祭での災い避けの祭文の一部。
「長く遠く退ぞくべき者あり まず三面の僧坊の中に忍び入りて 物とる 世古盗人め 奇怪す 和以布和以や小わらべ共 木々の成り物とれとて 明り障子打破る 骨なさ 法師頭し危やふると覚ゆ 扨は安多腹 頓病 すはぶき 疔瘡 よう瘡 まらがさ ことには尻がさ 虫がさ 膿がさ 安布美がさ 冬に向える大あかり 並びにひび 咳病 鼻だり おこり心地 くそちつわり 伝死病 しかのみならず鐘楼法華堂のかはづるみ ざん言仲人 闘じょう 合の仲間言 貧苦男の入りたげり 無能女の隣行き 又は堂塔の檜はだ喰いぬく大鳥小鳥め 聖教破る大鼠小ねずみめ 田の畔うがつもぐらもち この如く 異類異形不道徳無ざんの奴原に於ては 長く遠く 根 の国底の国まで 払い退くべき者なり」

 6時半、家を出ようとしたときにK子も帰宅、共に出かける。半蔵門線にて神田神保町、岩波ホール前にて開田夫妻と待ち合わせ。同人誌等の受け渡し。それから、近くのカスミ書房さんに出かけて挨拶。もう四日後にはコミケが始まるわけで、なかな か大変な模様。雑談の中で私“毎年々々、「これがなければ夏が終わらない」と思い ながらも「これさえなければ楽なのになあ」と思うんだよねえ”と言うと、全員深く うなづく。

 出て、開田夫妻と『上海朝市』。あやさんがヒョウソと口内炎のひどいのとで死んでいた、というので、夏バテ解消セットというのを頼む。それに北京ダックをプラスして。前菜に鴨ロース、ピータン、湯葉海老巻、クラゲなどが少しづつ。それからワタリガニの老酒漬け、ゴーヤと小エビの炒め物、牛モツの激辛土鍋、薬膳粥。高菜メンもプラス。味は、まあ、マアマアかな、というところだが、料理の出るのが遅いので急いでね、と言ったら、遅れていますので店から、と、白魚のフリッターがサービスでついたのは感心。セット二人前と生二杯、老酒デカンタで一人三○○○円というのもまず、お得な部類か。ストレス解消神事の人のうわさ多々。とにかく痛快。食べ終わって半蔵門線で青山まで出て、そこからタクシーで帰宅。

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