裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

31日

月曜日

淫靡服

 露出の多いコスプレ衣装のこと。朝、7時に目覚め、布団を出たのは7時半。いつものとおりだが、やはり昨日の酒がまだ血管中に残っている感じ。K子も回復。朝方にホンの十五秒ほどの短いものだったが、内心で大キライな奴に、行動をたしなめられるメールを送られて激怒する、という夢を見た。朝食は豆サラダ。今日の内容はグリンピース、サヤインゲン、トウモロコシにニンジン角切り、大豆、シシトウの小口切り。果物としてモンキーバナナ。

 日記つけ、入浴、洗顔如例。来ているメールのうち数通に返事を書き、原稿執筆に必要な資料を数冊、各古書店に注文。ひと息いれて、恵贈を受けた河井克夫『女の生きかたシリーズ』(青林工藝舎)読む。『ブレーメン』で多少居心地悪く一緒に収められていたバカ作品と怪異譚風作品のうち、今回は怪異譚(もちろんバカテイストは十二分なのだが)を中心にまとめられており、読み通したときに、この作者慣れをしていない読者にもとまどいを与えないで楽しめるであろう、いい感じの本になっている。ナンセンス&シュールの世界の岡本綺堂といった感じか。戸川昌子がオビ文を書いている、というのもナンセンス&シュールのうちみたいな感もあるのだが、さて、河井克夫の読者で戸川昌子の名に反応する人がどれだけいるのか? 同じことは水木しげるのパロディ『爪に絵を描く女』や、つげ義春の『蟻地獄』のパロディ(ではないか、と思うのだが……)『オートロ』などでも感じる。いや、もちろん、元ネタを知らなくても楽しめるだけの技量で描かれている作品なのだが、かつて同じ指向のものを書いていたものとして、その“通じなさ”に対する諦念も、人一倍持ってしまっ ているのである、私は。

 1時、依頼していた本数冊持ってどどいつ文庫氏来。Z級コミックス関係の資料探しを依頼しているのだが、今回は見つかったもの少なし。フランスのエロ漫画家名鑑など。雑談しばしの後、お中元ですと言って(ずいぶん早手回しなお中元である)、『THE MARX BROTHERS SING&PLAY』をくれる。フランス製の三枚組のCDだが、マルクス兄弟映画の中の歌と音楽が収められており、このあいだ日記に書いた『The Country’s Going to War』をはじめ、私の鼻歌の定番のひとつである『RIDEING THE RANGE』(マルクス二丁拳銃)などもそっくり入っていて、実にうれしいお中元だった。

 2時、バスで参宮橋に行き、『道楽』でノリラーメン。参宮橋にわざわざ行ったのはここにある中華屋『仙園』の電話番号を確認(表の看板に書いてある)するためであったのだが、ノリラーメン食って、近くのローソンで週刊誌数冊立ち読みしたら、そのことを忘れて、たまたま来たバスに飛び乗って渋谷に戻ってしまう。最近こういうポカ多し。

 廣済堂の書きかけの原稿さらに一本。使っていた資料のうち、さらに深くつっこめるものがあることを発見し、ネットでいろいろ調べるも、まったく情報なし。書庫に入り込んで探すもダメ。結局、力の入れどこを変えて一本に仕上げたが、おかげで、僅々6枚の原稿に半日かかってしまった。書き上げて、ふと時計を見ると、もうロフトに行かなければならない時間。あわててタクシーに飛び乗る。歌舞伎町一丁目のあたりで降りたら、歩いていた中野貴雄さんにバッタリと出会った。

 ロフト『社会派くんがゆく! 激動編』刊行記念トーク。村崎さんは以前、このロフトプラスワンに嫌な思い出があるというので、徹底してここをきらい、斉藤さんが差し出した名刺も受け取らない。そもそも今日は村崎百郎ではない、“ニセ”村崎として来ている。斉藤さん“ひさびさに緊張しました”という。その、失礼なこと(村崎さんと根本敬さんに、互いに相手がイベントしたがっている、と言って釣って、企画を出そうとしたらしい)をやった当時のスタッフというのが、もう一人も勤めていないので、さっぱり事情がわからないのだそうである。

 楽屋に談之助さんが来て、ファンだという奥さんのために本に村崎さんのサインをしてもらっている。雑談しばしで、すぐ始まる。60人程度の客だが、壇上への集中力は異様なほど。二人、冒頭から飛ばす。内容はもちろんイラクのことから北朝鮮、マイケル・ジャクソンから天本英世(ちゃんとイカデビルになって死んだのか? とか)なんやかやと世情全般。精確にここに内容を書くと四方八方から糾弾されそうな内容なので書けない。休息時間にサイン会、及びスズキくんの唐沢フィギュアと、と学会東京大会の前売り予約を受け付けたが、みなかなり好調。ことにサイン本は、会社にあるだけの在庫と、近くの書店から買い戻したもので三十冊ばかり並べておいたものが、完全にハケた。これでアスペクトにも在庫ゼロだそうである。私も一冊、著者値段で買って、来てくれた開田夫妻に進呈(昨日持っていったものは川上さんに回してしまった)。やたら向精神薬やっている女性から、いま出ているクスリについて相談受けたが、出ている量がハンパじゃないのと、クスリに対する認識がもう一般人とは段が違っているようなので、私も村崎さんも、ちとまっとうなサジェスチョンをしかねた。

 村崎さんも本が好調に売れたので機嫌よくなったようだったが、まだ仕事が残っているというので、北朝鮮ビデオなど流したあと、10時半でお開き。トークの途中で腹が減って減ってまいった。K子、談之助、開田夫妻、それに水民玉蘭さん誘い、青葉でメシ。宮崎駿が文化勲章もらうようだという話、ブラ房、踊りで真打試験をハネられて、いま追試待ちの状態らしいとか、そんな話多々。カキ唐揚げ、牛肉土鍋煮、アヒルロースト、ダイコン餅など食って、12時、帰宅。

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