裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

14日

金曜日

河合その子は誰のもの

 いえあの子は僕のもの(後藤次利)。朝、夢の中で鳴っている音楽がいったい何の曲かとずっと夢の中で悩んでいた。目を覚ましてから、ああ、『花神』で戦争シーンに流れていた曲だ、と思い出した。もっとも、これは昨日の夢だったかも知れず。朝食、豆サラダ。豆々と書いているが、主体はトウモロコシで、これは豆ではない。それに莢剥きのグリンピースと、缶詰の茹で大豆、時に豆モヤシが加わり、ドレッシングをかけて食べる。

 某誌編集長から昨日留守録が入っていて、約束の連載&単行本、いくらなんでもそろそろやりましょう、とのこと。これについては克明に章立てから内容から連載期間どれくらいで、それに書き足しをこれだけつけて必要執筆期間これだけ、とかを出して、出したことでもう安心して放ったらかしにしてあった。書き出すテンションを上げることを忘れていたのである。スケジュールに再組み入れしなくては。一昨日原稿依頼のFAXがあった編プロ“マイクロフィッシュ”から電話。打ち合わせの日取りを決める。“枚数が増えたのに原稿料同じですいません”“あ、日記読んでくださっているんですか(笑)”“もちろんです!(笑)”とか、やりとり。

 午前中はモノマガジン原稿。ネタを先日ロフトプラスワンで朗読した『涙は宇宙空間に輝く』にする。この作品、『奇譚クラブ』1958年11月号所載なのだが、実はそこで(終)になっているにも関わらず、1号おいた1959年の新年号に続編が載っている。これが、妙に枚数も短く、唐突に新登場人物が出てきたり、話のつながりが悪くなっていて、無理矢理ハッピーエンドにさせている。あるいは編集部が後半が面白くないので前半だけの掲載にして、それに著者が文句をつけてきての後半掲載になったのかも知れない。それにしても完全な蛇足。

 5枚半、途中で資料が面白くなって読み込んでしまったりして、2時にメール。途中で永瀬唯氏から電話二回。河出の原稿がなかなか進まないとのこと。内容についてはすでに聞いているので、その線で頑張って、と言う。母上の看護のことや体調のことなども聞く。それから昼飯を食いに出て、コンビニで『週刊新潮』買って『兆楽』でラーメン。いつもより麺が柔らかめだな、と思っていたら、客が麺係の親父に“なに、ゆうべあれからもやってたの? 寝てないの?”と話しかけていた。内容を漏れ聞くと、どうもゆうべ悪友たちと飲み明かしたか、徹夜でマージャンでもやっていたか、したらしい。アタマがボーッとした状態で麺を茹でているんであろう。

 週刊新潮、櫻井よしこのコラムを読んで、シラクがなぜ、米英のイラク攻撃に大反対しているかが了解できた。
「(シラクとフセインの個人的関係により)90年代中葉にフランスはバグダッド南東のナル・ウムール及びマジヌーン油田の開発権利を、事実上、得た。両油田の原油埋蔵量は200億バレルだ。イラクに対する国連の経済制裁措置が解除されれば、フランスはイラク原油の開発で大きな利益を得ることが出来るわけだ。米国がイラク攻撃によってサダム・フセインを倒せば、その後に生まれる政権は、当然米国主導となる。サダム氏の過去の約束事は見直される。未回収の武器売却代金(対イスラエル用のシュペール・エタンダール機、エグゾセミサイル他250億ドル)がフイになるばかりか、過去四半世紀以上、シラク氏を筆頭に築き上げてきたフランスの権益は御破算になる。だからこそ、シラク氏は眦を決して国連安保決議に自ら乗り込んでいく」
 決して平和とか正義とかのお題目でなく、カネで自らの動向を決するフランスのしたたかさには正直、感服するしかない。日本人は少しシラクの爪の垢でも煎じて飲んではどうか。

 帰宅、SFマガジン原稿にかかる。ネットで参考資料あさるが、面白いのなんの。とても全部は使えない。惜しいなあ、と思う。すらすらと行くが、オチの部分にインチキ精神分析理論を用いるので、そのリクツをこねくり出すのに少し、時間がかかってしまう。井上デザイン社長から電話。お仕事の話ちょっと。それから、『まさ吉』のお母さんが、最近みんな来てくれない、と怒っているそうだ。今度行きましょうと話す。

 結局、10枚弱の原稿、9枚まで書いたところでK子と待ち合わせの時間。今日は予約入れているというのでズラせない。『船山』で夕食。さすが金曜日で、混みあっている。茹で毛ガニ。塩で茹でて、カニ酢もなにも使わないで食べるが、肉もミソも甘い々々。ただ、まだ時期が早いせいか、いささか(ホンの少しだが)保冷剤のアンモニア臭がした。まあ、食べているうちに気にならなくなるのだが、あと、てんぷらと筍ご飯。帰宅して、顔洗って酔いを醒まし、SFマガジン残り400文字書き足して、編集部にメール。何とか今日中に入れますという約束は果たす。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa