裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

30日

水曜日

腹が減ってはフィクサーはできぬ

 黒幕は意外に重労働だということ。朝、8時15分起床。寒くなったので遅起きになった。朝食、トマト一個、ゴマスープワンカップ。果物はオレンジ。“拉致問題は解決済み”とニベもない北朝鮮の鄭秦和大使、最近の日本では見なくなった懐かしい表情であって、“イイ”と感じてしまった。われわれが小・中学生時代の大人というのは、よくこういう表情をしていた。こちらが例えば学園祭などのイベントに、こんなものをやりたいのですが……と持ちかけると、教頭先生などが露骨にこれと同じ表情をして“そういうのはイカンよ、キミタチ”と言ったものだ。小役人の顔である。そうそう思い出した、札幌でアニメ上映会を開催したとき、ポスターを貼らせてくださいと交渉しに行って断られたときの丸善(札幌の一流文具店)の美術用品売場の主 任が、顔といい表情といい口調といい、実にソックリだった。

 日記を書いてサイトにアップしようと思ったが、htmlエラーです、という表示が繰り返されて、いっかなつながらない。いろいろ調べてみたがどこにも故障とかはなし。どういうことか。1時、どどいつ文庫伊藤氏、ちんちん先生来、雑談。本のコレクションをすることについて、いろいろ談義。伊藤氏には探書本について依頼の件 あり、当たってもらうことにする。

 平塚くんから電話、日記アップの不調は、ニフティがhtmlサーバーのメンテを行っているせいだと判明。4時までだそうである。なんで昼日中にメンテするか、といささか腹立たしい。おまけに、トップページでも、われわれ旧ニフティサーブ会員へのお知らせが、きわめて見にくい奥の場所に移動されて、ほとんど読めなくなって いる。

 2時半、六本木に出かける。銀行で雑用すませ、吉野家で牛丼。ワッシワッシ食っていたら、トイメンの席で同じくワッシワッシ食っていた男が、掻き込みすぎて気管に飯粒をつまらせたらしく、急激に咳き込み始めた。別に自分には何の関係もないのだが、フフン、勝ったね、といい気分になり、さらにペースアップしてワッシワッシやっていたら、同じくつまらせて咳き込んでしまった。気のせいか、それを見て向こうもホッとしたような表情になったようだ。あれはなんだろうか、ホエザルの吠えあいみたいな、動物本能からくる“男らしさの誇示”の衝動なのだろうか。歩道のガードレールをまたぐときとか、街頭でのチラシ配りを上手に無視するときとか、くだらないところにばかり選って、“どうだ、オレはスマートにやったぞ”という、オスの 見栄が出る。

 カメラ持って、東日ビル地下に行く。こないだのトツゲキに続いて、オニギリ屋も閉店した。ゴルフ用品店も閉店セールである。空漠たる通路の写真を撮り、トツゲキの閉店告知のチラシを撮る。Web現代の連載の図版用である。撮り終わって明治屋で買い物、誠至堂で雑誌類物色。奥菜恵のセミヌードが掲載されている『FRAU』は、表紙がもうヨレヨレになるくらい立ち読みされていた。そんなに見たいか、と心中毒づきながら、こっちは『SMスナイパー』立ち読み。宇多まろんとベギラマの二人の写真が載っているのを確認して、うん、お仕事しているなあ、と納得。納得したところでどうしようもないが。

 帰宅、連絡類いろいろ。肌寒く、暖房を入れる。某社女性編集(お仕事は一回したきりで、それもメールでだったので顔を合わせてもいないのだが)から、退職の通知メール。編集をやめてケーキ作り職人になるそうである。ずっと以前、ワイン鑑定家になると言って退職したのがいたし、“吉本に入ってお笑い芸人になる”と言ってやめたのもいた。イラストレーターになった人もいるし、スペインに渡ってフラメンコの修行をしているのもいる。人生いろいろ。それはいいが、同じメールが何度も何度 も来る。ウイルスかと思った。

 あとは地道に仕事して、9時、K子とタクシーで新宿新田裏、すし処すがわら。ひさしぶりだったな、と思ったら、やはり様変わりしていて、店員のタケちゃんがやめていた。深夜、閉店まぎわでも店長が仕事入れるのが不満でやめてしまったそうだ。店長とK子、店員がやめるということについて、ちょっとシビアにやりとりをする。意見のぶつかりあいに近く、聞いていハラハラ。白身(ヒラメ)、コハダ、甘エビ、ウニ、アナゴなど。うまいが、以前に比べて1.5倍ほどの値上がりになった。帰宅するときのタクシー運転手、大変に小柄なおじさんだったが、こっちの指示に、“こう言っては失礼ですが、私、感心してます。この時間にここらへんから乗るお客さんに、こんなきちんとした丁寧な口調で話しかけられたこと、ありません”と、何かやたらに感動されて、とまどう。よほど横柄な連中ばかりに当たっているのだろう。それはいいが、そのあと延々、いかに自分がそのような横柄な客をとっちめたか、という話をされるにはやや、閉口。家にたどりついて、就寝前、メールチェックしたら講談社から、好美のぼる本の打ち上げの打診あり。K子に言われて店を調べてメールする。

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