裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

7日

日曜日

虞や虞や汝を気管支炎

 病気タイトルダジャレのため、病名リストのサイトなどを回るといろいろ教えられる。“巨大舌”なんて見るとすぐ“の襲撃”とつけてしまうのはB級SF映画マニアの性(サガ)である。“ねこひっかき病”というのはも少し何とかつけようがなかったか、という病名である。回復に数ヶ月かかることもある病気だそうだが、この病名の診断書で会社に休みの届けを出したら怒られそうだ。逆に“肥満性摩擦疹”という病名の解説にひと言“太りすぎのまたずれ”とあるのも悲しい。朝8時起床。夢で立川談生、見えない世代(一行知識掲示板常連)の二人と何か話していた。

 朝食、トウモロコシ、サツマイモ、クレソンの蒸したの。さすがにそろそろ飽きてきた。ただし、この朝飯にしてから便通は極めてよろしいし、クレソンを加えてからバテも解消されてきた気がする。ネットで、作家の桐生祐狩さんから、小野伯父と某所で同席、いろいろと大きい話を聞いたということ。初対面の人間に誇大妄想的にいろいろホラを吹く癖(躁病時の特徴)が相変わらず出ている。

 母から電話。毎度伯父のことばかり、というのもナンなので、今日はそこそこにしておく。昼はセンター街に出て江戸一の回転寿司。エンガワ、トロサーモン、煮はまなど1000円。相変わらず外人客多く、表をチンドン屋が通るとカメラを掲げて駆け出して行く。気持ちはわかる。日差し強く気温高く、本格的な夏の気分。こうなるとこのセンター街は露出狂女どもの闊歩する巷と化す。永六輔の『一般人名語録』で あったかで、“女が意味もなく色っぽくするのは、男に対するセクシャル・ハラスメ ントである”という文句を読んだが、セクハラどころか、私に獣欲をかきたたせて強姦して! と要求しているような奴までいる。昔はそういう格好は、そうでもしなければ男がふりむいてくれまい、というご面相の子がしていたものだが、最近はそうまでせずとも相手には不自由すまいに、というレベルの子までが素っ裸一歩手前、というスタイルで歩いたりしている。しかも可哀想に誰も振り向きもしない。それだけ男 の性本能が弱っているのかもしれない。

 西武デパート地下で晩飯の材料を買って帰る。原稿、まず開田さんの同人誌用にとりかかるが、やたら長大なものになりかかる。これだと今日一日で終わらないので、あわててフィギュア王の方に切り替え。中川彩子の画集の前宣伝にする。これなら河出に欠いた原稿を一部使えて、時間が節約も出来るという算段である。途中、伯父のことが気になって嘉子伯母に電話。少し話したところで伯父が部屋に入ってきたらしく、中断。すぐ後で杉男くん(長男)から電話があった。いろいろ状況について報告を受ける。安心することもあり、困ったもンだということもあり。7:3で困ったことの方が多いのは当然だが。それやこれやの中断はあれども筆は進み、8時までに大体書き終える。すぐ食事の支度。

 夕食、9時。おだまき風茶碗蒸し、カツオの刺身、豚バラとニガウリの炒め物。テレビでロシアの近況などを見、ビデオでハリーハウゼンもの数本。これも画質確認。DVDを買う決心の前にいちいち、所持しているビデオやLDの画質を確認するのがいじましい感じである。10時には食べ終わり、フィギュア王の原稿完成させる。

 それから11時過ぎ、家を出て新宿ロフトプラスワン。昨日のアレ。今日は確かにやっていた。斎藤さんに挨拶、楽屋で司会の太田出版Mくんと沙村広明さんに挨拶。あと、今日アトラクでベギちゃんにアナル調教をされるというエロライターさん。ベギちゃんはやたらハイで、自分の誕生日のケーキまで自分で用意している。プレゼントに贈られたというセーラー服姿で、頭に近くのドンキで買ってきたというシリコン製のハリガタを載せてトーク。なんだかな。日曜深夜というのに客がかなり入り、なに仕事してんだこの人たち、という感じ。ベギちゃん、私、沙村氏、Mくん、それに倉田真由美さんも壇上に上がり、お誕生日トーク。いきなり昔の風俗仲間、というカノジョたちを壇上にあげて無茶苦茶濃すぎの体験談はじまり、われわれゲストは置いてきぼりを食う。彼女が『聖コスプレ学園』勤めをしていたときのオタク客相手のエピソードが、なんだか快楽亭の『イメクラ五人回し』そのままで、大笑い。オタクの性のこういう問題は、第三世代以降はなくなるというのは本当だろうか?

 風俗仲間の一人がくすぐリングスの宇多まろんだったが、開演前に今日は東大生のカレシ連れてきましたあ、と見せびらかしに来る。これが東大生かいな、というチーマー風。でも、壇上に上がって、“今日はいきなり言われて上がりましたが、カレシが一緒で、驚いてると思うけどすいません、内緒にしてたんだけど、風俗やってましたあ!”と天然だかツクリだかわからぬ笑いをとる。眠剤のんで、ラリってるようでもあり、しかしこないだの試合のときもそうだったがトーク抜群にうまく、ボキャブラリーが豊富で、ココにコレ、という言葉でしかも意表をつく表現をピタリピタリと選んでくる。後でもまたマイクパフォーマンスをしていたが、しゃべりの構成も見事で、くらたまと大感心。なまじのモノカキなどより言語感覚は優れているだろう。しかも顔はまずベギちゃんと並び十人並み以上、くらたまと、“ベギラマにしろまろんにしろ、あれだけのルックスと体と頭持っていて、なんでコンナコトしているんだろう?”と不思議がる。昼間のセンター街でも思ったことだが、今日びはこの程度の可愛さは武器にならんのか、あるいは向上心などという古くさいものはもう持ち合わせないのがこの世代の生き方なのか。ちなみにまろん嬢、昨日眠剤の副作用のあまりの苦しさに自傷してしまい、“明日から精神病院に入ってきまーす!”だそうである。

 トーク後半はこちらもマイク主導権握り、フェチばなしで笑いとり、ナンとかゲストとしての勤めを果たす。ベギちゃんも足をバタバタさせて笑っていた。彼女がSMスナイパーで撮ったSM写真の過激さに、みんな仰天。しかもそのほとんどが彼女の企画なのだ。向上心のことをさっき書いたが、それがわれわれの世代とは全然別方向に進んでいるらしい。まあ、これが世代の基準にはゼッタイなるまいという変な安心感はるけれど。そこで後半に入り、私は降りてくすぐり男爵、ブラバスター・リーとベギラマことプリンセス・みゆきとのくすぐりマッチを見学。もうベギちゃん、ボロボロ見せまくり。実に楽しげである。こちらは客席で扶桑社Oくん、山本夜羽氏などと雑談。まろんの真のカレシ(今日の東大生はぜいたくなことにダミーだそうな)の名を聞いて驚く。業界の有名人。くらたまさんは知らないらしくポカンとしていた。3時過ぎに鶴岡が志加吾(元)とやってくる。ついさっきまでそこで飲んでいたらしい。志加吾、相変わらず屈託している模様。しかもその原因が(以下略)。彼らが登壇して、ベギラマ出演のAVを見ながらトーク。鶴岡が相変わらずトバしていた。くらたまとしばらく話していたが、4時近くなり、明日のこともあるので近くの人たちにだけ挨拶して退散。タクシーでほの明るくなった街を見ながら眠い眼をこすり家路につくのは、学生時代にもどった気分。こういうのもたまにはよかろ。帰り、脂でベトベトになった顔を洗って寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa