裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

26日

火曜日

タイトル鯉ボケ

 伊賀良の朝、おみやげのザザムシを買って、ヒコク氏のバンで、水引美術館を見学(まったく期待してなかった割に案外おもしろかった)、それから山の中にある手打ちソバ屋『洗心庵』へ。表に店主の大きな像が手を広げて立っている。どこかで見た顔だ、と談之助師匠と話してたが、そうそう、三遊亭新潟にソックリだわ、と思い付く。K子が、“あの女中さんの顔、化粧がきつくて志加吾に似てない?”というと師匠、“じゃ、これで外人(快楽亭)連れてきたらトンデモ落語会になっちゃう”。
 しかしたしかにソバはシコシコとしてうまい。信州地ビールもさわやかで結構。ワサビ漬けをさかなに小さめのジョッキ2ハイと、大もり一マイ。冬は猪肉料理も出るらしく、玄関に巨大な猪の剥製が飾ってあった。帰りの道で、黄金色のカネゴンの像を見かけたけど、ありゃ何だったのか。
 帰京のバスにもうまく連絡でき、ほとんど待たずに乗車。東京までの3時間半はさすがに疲れが出て、あまりおしゃべりもせず。4時に帰着して家に戻ると、すぐさま電話が乱れうちのようにかかってくる。応対はするんだけど、どうも要領を得ず。鯉ボケかな。
 細かな仕事、それから編集部との電話(夜に入っても頻繁)。G書房、“新刊の注文が書店からひっきりなしなんで、早く書いてください”そんなこと言っても、書けないものは書けない。それからM社、“洋泉社で使った『と学会』のシンボルマークをコピーしたいのだがデザイナーの連絡先はわかるか”という問い合わせ(そんなもの自分で調べろ)。他に『SPA!』が写真使わせてくれというのでその受け渡しなども算段しなきゃならない。モノカキというのはモノを書いていりゃいい商売かというとさにあらず、かくも雑用ばかり多い職業なのであります。逃げ出すようにして9時にK子と外で待ち合わせ。東急本店わきのお好み焼き屋でわびしく夕食。まあ、アクセントでまずいものも食べなきゃ、と自分をなぐさめる。
 あめぞう漫画(マンガ業界の噂話や感想の掲示板)に、“伊藤剛さんが亡くなったそうですが”という書き込みがあってちょっと驚く。真相やいかに。

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