裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

20日

水曜日

渡辺美佐子

 早川書房のAさんからのゲラ戻し催促の電話に“木曜にはなんとか”と逃げをうったら、“じゃ、明日ですね?”と言われてしまった。あひゃあ、もう水曜? てな感じ。日経ヘルス仕上げてメール。二見書房Yさんから、“唐沢さんの本、十二月の予定にもう入れちゃいましたから”と電話。うひいいい。
 イーストプレスのゲラに赤入れて戻す。六本木に出て、ABCで買い物。近くの釜飯屋でランチ。車中、ABCで買った早瀬まひる『マゾ・パラダイス』読了。へんてこなものだった。ブンガクなのかね、これ? 『SFマガジン』『ナンプレ』でイラスト描いてくれてるDちゃんが河出の文藝の表紙に出ている。可愛いからなあ。もっとも、よく見ると鶴岡法斎にも似ている。顔出しが宣伝になる文化人と、出すと売り上げが落ちそうな文化人の二種類がいるよな。後者には東浩紀とか。
 帰って電話二、三本無視して一時間昼寝。なをきに用事あって電話するが留守。 朝日新聞のアンケート記事、最終行調整して返FAX。9時、晩飯。サトイモとハスの煮物、豚モヤシ蒸し煮。あと、夏に御中元でもらったヒヤムギをアツムギにして食べる。昼間、『映画秘宝』の『セクシー・ダイナマイト猛爆撃』を読んで渡辺美佐子のスチール写真が間違って別人のが掲載されているのを発見したので、実物の顔が拝みたくなり、LDで鈴木清順『野獣の青春』を見る。かつてのオールナイト映画館での私のバイブル。宍戸錠にホモ的な友情を抱く子供っぽい殺し屋の江角英明がいい。退屈そうに見ていたK子、ラストのオチに大笑いしていた。殺し屋たちがボスの家で退屈そうにたむろしているシーンや、ボスの小林昭二がシャム猫を抱いているシーンなど、構図を007映画から頂いている部分がだいぶある、と思っていたが、公開年度を調べてみると、こちらの方が早いのもかなりあった。さすが清順。
 最近、ベッドに入ると本も読まずすぐに深い眠りに入り、夜中に目をさましてパソ通やったりして、明け方また眠るということが多い。今朝(21日)は再眠りの目覚め際に、二秒くらいの短いシーンの連続のものが二十本くらい立て続けに続く夢を見た。タクシーに乗ったら運転手がヒッチコック、というようなものから、おせんべを食べようとおもったら真ん丸で食いにくいというもの、耳元でウグイスの声が一声聞こえるだけ、というようなものまで。最後は某女流漫画家が私の書いた批評に腹を立てて、“取り上げてくれたことには感謝してるんだけど、あれはないんじゃないかと思ってえ”と怒った文句が留守電に入っている、というヤツで、目が覚めてメゲた。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa