裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

18日

木曜日

特撮仕事人

そう言えばハヤタ隊員とかムラマツ隊長とかもシリーズ見てると
よく殺されてました。

※神保町打ち合わせ

朝9時起床。
このところ数日、目覚めはさわやか。
手塚治虫のマンガの夢。オールカラーだがセリフはなく、奇怪な巨大生物
が跳梁する架空の惑星の物語。そこで一人の原始人が、巨大生物
のあいだをかいくぐって走っていく。到着地でなんかオチがついて
いたのだが覚えておらず。

朝食は乳酸菌ドリンクで代用。
日記つけなど、午前中の仕事如例。
メール連絡やりとり。電話も何本も。

12時、昼食。母の室で。
切り干し大根(皮で作った)の煮物と牛肉とゴボウの煮物。
サラダ代わりのほうれん草おひたし大目に。
ご飯一膳。

入浴し、作業いろいろ。
俳優・藤田まこと氏死去。76歳。
急死という感じで大いに驚いた。
こないだ主演の『剣客商売』を見たばかりだったので余計に。

ただしこの剣客商売の秋山小兵衛役は池波ファンには不評のようだ。
マイミクさんたちの日記を見るに、やはり中村主水という人、
『てなもんや三度笠』をあげる人が多い。
濃い人たちは『日曜恐怖シリーズ・穴の牙』だとか
『夜の大作戦』だとか、はたまた彼が『奥様は魔女』の
吹替えに挑戦するバラエティだとかを挙げているが、もはや
そうなるとほとんどの人がついていけまい。

何故か私は、藤田まことというと織田信長を思い出すのである。
『てなもんや三度笠』の後番組、『てなもんや一本槍』で、
藤田まことは一国一城の主をめざす織田家の足軽・長吉と、主君
織田信長の二役(もう一役、武田の軍使山本勘助も演じたそうだ
がこの回は見てない)を演じていた。

この信長が、まるで絵の中から抜け出してきたような、まさに
信長というイメージにぴったりの信長であった。その後、
大河ドラマなどで無数の信長役者は目にしているが、これほど
そっくりな(と言ったって信長本人の顔は知らないが)信長は
他に見たことがない、という信長であった。馬面というのは
時代劇の衣装をつけるとこんなに合うものか、と、喜劇役者と
しての藤田まことしか知らなかった私は改めて感心した。
その後、彼が必殺シリーズなどでシリアスな時代劇をこなす
モトは、この『一本槍』にあった(NHK大河の『新・平家物語』
で朱鼻の伴卜役で本格時代劇に出演するのはこの後)と信じている。

この信長、演技もかなりシリアス気味ではあったが、やはり
ギャグが入る。ちょうど参議院に当選したばかりの横山ノックが
公家の役で登場したときには
「あんなのが当選するとは、選挙制度というのも問題があるのう」
などとやっていた。『てなもんや三度笠』は舞台を収録したものだが、
『一本槍』はスタジオ収録。それに笑い声をかぶせるという、アメリカ風
コメディ方式だった。スタジオ収録だからさまざまな技術が使え、
合成で長吉と信長が同一場面に登場するシーンもあった。
この信長、大変な恐妻家という設定。長吉が恋人のお美代(九重祐三子)
に追いかけられて、やはり奥方に追いかけられた信長とハチ合わせ、
「お互いに、女には苦労するなあ……」
とボヤくシーンなど爆笑ものだった。思えばこれも中村主水に一脈通じる。

今でも、谷しげるの木下藤吉郎(「あー忙し、あー忙し」)や、原哲男の
前田犬千代(「カバ千代さま」「誰がカバやねん、犬千代じゃ」)など、
私の戦国大名のイメージはあの番組がかなり影を落としている。
そう、私の中での藤田まことは、日本一の信長役者、なのである。
黙祷。

3時半、家を出て神保町へ。
打ち合わせ。そのあと、カスミ書房さんに立ちより。
話していたら、声をかけられる。以前、本の企画を
一緒にやっていたカメラマンのMさん。
懐しい。あのときの企画は結局カタチにならなかったが、
「今ならいけるんじゃない?」
というような話になる。

地下鉄で新宿に戻り、京王デパ地下で買い物。
帰宅して、ちと疲れたので資料本持ってベッドへ。
暖房を切って外出すると帰宅後しばらくはとにかく家中が寒い。
1時間ほど読書、ちょっと眠ったり。

起き出して原稿。
10枚のものをカリカリと書き出し、3時間ほどでほぼ、書き終える。
で、最後に原稿の一部分を消去しようとしたら……なんといきなり
原稿全部が無くなってしまった。一気書きだったので、うっかり
バックアップをとっていなかった。3時間の作業が全部パーになる。
呆然。

教はもうやめて明日にしようかと思うが、明日はまた予定ぎっしり。
何としても今日のうちに、と、すぐ再度書き始める。記憶にある内容で
同じものを再現しようと思ったが、書いているうちに文章がどんどん
変化してくる。気がイラついていたからだろう。で、ここらへんが
文筆というものの興味深いところだが、こういう精神状態で書いた
文章の方が、あきらかに勢いがあり、ラフではあるが読んで面白い。
まあ、そう思わないと気がおさまらない、というところはあるだろうが
実際問題、前の原稿を下書きとするならば、こっちはそれをベースに
した本番原稿なのだから、大いに有り得る話なのである。
と、言うことで11時50分に書き上げ、編集部にメール。
ふう、と息をつく。

京王で買った初物のホタルイカでスペイン風サラダを作る(檀流クッキング
でタコのスペイン風として紹介されているものをホタルイカで作ってみた
もの。私はこっちの方が好みで、もっぱらホタルイカでやっている)。
それと、冷蔵庫の中のひき肉などを使って応急酢辣丼。
これで黒ビール小缶一本、黒ホッピー二杯。
英語版の『怪獣大戦争』。フジ隊員(宝田明)の吹替えをしている
のは声優(顔出しもときどきしている)のマーヴィン・ミラー。
『禁断の惑星』でロボット・ロビーの声をアテている人である。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa