裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

9日

土曜日

若花田のトナカイ

ちゃんこ屋やってる元横綱はいつもみんなの笑いもの……。

※同人誌原稿、トンデモ映画会

朝7時起床。珍しい女性が夢に出てくる。この人が出てくるとはまさか思わなかった女性なのだが、出てきてうれしいという人物でもない。以前言い争ったときの場面が夢に出てきた。いまだにそんなときの記憶が出てくるのはこっちの脳のせいで、彼女のせいではないのだが、あのときの憎さげな表情や態度、メールの文章などを思い出すだに憤慨の念にかられる。とはいえ、思い出したのは夢に出てきたからであって。気持ち的にはこの一年以上、考えの端っこにも上らなかった女性なのだが、思い出したから夢に出たのか、夢に出たから思い出したのか?

入浴、9時朝食、王林、柿(これで最後)、スープ。原稿、あぁルナ本、円谷対談本脚注。弁当、納豆とキャベツ。すでにキャベツ飽き、味噌汁にぶちこんで食べる。キャベツ汁の様相を呈するが、甘くて案外おいしい。

原稿だいたいアゲ、マド、パイデザ等にメールの後、事務所に出る。
母が掃除してくれていた。文サバ同人誌原稿ゲラチェック。バーバラに渡す。今年の冬コミは『ショウケイ・ロコ・カラサワ/三大怪獣地球最大の鼎談』がメイン新刊。他に『あぁルナティックシアター結成20周年記念本』『文筆業サバイバル塾同人誌』の2冊が出る予定。ちなみにブースは31日(日) 東地区“Q”59-a。

書庫の整理をちょっとする。ネタ探しも兼ねて。昭和49年の『ユーモリスト』(加藤芳郎、小島功責任編集のカートゥーン雑誌)が出てきて、その投稿欄『円形大劇場』が挟み込まれていた。この雑誌は4号で休刊になったが、その休刊号に投稿したはがきをまとめたものを、印刷物にして送ってきていた。ああ、懐かしいなあ30年以上も前なんだなあ、と見てみると、“札幌市東区 唐沢俊一 高校生十六歳”という投書が載っていた。この印刷物が来たことは知っていたが自分がそれに投稿していたことはコロリと忘れていた。見ると私の投稿が最年少のようである。他に十代で地味な一コマ漫画などに興味持つような酔狂かつ年寄り臭いやつはおらんかな、と探していたら、十九歳、というのがいた。名前を見たら“東京都板橋区 片山雅博”とある。アニドウでのなみきの相方、日本漫画家協会の番頭、映画イラストレーターにして多摩美大教授の、あのデブの片山氏。知り合いかよ、と呆れ、また、あまりにものイカニモさに苦笑。よく、昔のオールナイト上映会場で河崎実氏や開田裕治氏と同じ場所に実はいた、という話をしたりするが、こんなところで後年の友人とご一緒していたとは。最近の座右の銘。
「この世の中は100人だけで成り立っている」

6時半、タントンに行く。カード読み取り機が途中でつまって、15分そこで時間ロス。もみ終わって夕食、今日は深夜イベントなのでパワーつけようとステーキハウスに行って肉を食う。

池袋まで。新文芸座。入り口のところでrikiさんに会って、差し入れに門前仲町の寿司屋『匠』のちらし寿司をいただく。楽屋入り。IPPANくん、山本会長、中野監督、岡田さん、岡田さんの連れてきたライターの橋上さん。楽屋でもこのメンバーなもので話が盛り上がること。実相寺監督が亡くなったという話で“盛り上がる”のだから凄いことである。

『シルバー假面』の話になって、
「続編が出来ればいいなあ」
という話から、中野監督、続編は満州を舞台にして川島芳子を出そう、でもただ出すだけじゃ面白くない、という話になり、やはりここは『仮面ライダーX』風に怪人にしちゃうべきだろう、という話になる。
「大体、李香蘭なんて名前からして怪人ぽい」
「いいですね、“ムカデリコウラン”!」
で大笑い。
「あのころの満州には円生と志ん生がいた筈だからこれも怪人にしちゃおう」
「森繁久彌もいましたねえ」
「他の怪人が先に死ぬと“神様は残酷だ!”と嘆く」
などとワイワイ。あと、山本さんが
「“どうでもいいけど忘れられないセリフ”コミュを作りたい」
と。“ぬるいっ、砂糖も多いっ!”とか。山本さん曰く“笑いすぎでこんな喉が渇く楽屋はない”と。

rikiさんにいただいた『匠』の生ちらしをいただく。イカ、ミル貝、大トロ、ウニ、クルマエビ、アジ、イクラ、卵焼きという超豪華な折が二つ。うまいうまい、とIPPANさんと中野監督とで食べる。『匠』は今度行ってみなくては。

やがて開演時間。まず岡田さんが開口一番で出て、『落語2.0』の宣伝。岡田さんはこれだけのために今日、やってきた。なんと手ぬぐい冊子という、岡田斗司夫と落語を見事に融合させたグッズを持ってきていて、ひとついただく。その後が鯉朝くんの落語。楽屋のモニターで聞くが、このモニターが昭和のもので、画面が白黒。会長曰く
「これ、もはや古いっていうより貴重なんじゃないの?」

それから私と会長が出て、トーク。今回は私は会長の相手役なので、ほぼ、聞くに徹する。会長が持ってきた『悪魔の人形』の特撮の見事さ、『雨ぞ降る』の地震と洪水が一度に起こるそのスペクタクルシーンの大胆さ、そして、大爆発がとにかく連続するTV『核戦争後の地球』の三本を見せる。会長、テンションあがって某日本映画の爆発を叱咤罵倒。“なっとらーん!”と。いいノリですねえ。

終わったあと、映画の上映までサイン会。それからいよいよ上映。
『直撃! 地獄拳・大逆転』、『黒蜥蜴(京マチ子版)』、それに『妖婆・死棺の呪い』の三本だが、この三本、内容は何度も私がこの日記に書いているものなので略。初めてこの三本を見る、という人も多いだろうが、これだけ凄いものを一度に見られるというのは人生でもそうない機会である。会場、爆笑の連続。

最初の二本のみ見て、明日は早い(し、たぶん帰るのは遅い)だろうから切り上げる。とはいえ、あぁルナの橋沢さんがいたので声をかけ、近くの居酒屋で1時間ほど飲み。いろんな人物の近況など情報交換。河崎監督の新作へのあぁルナのみんなの出演のことなど。京都でやった私の物真似は“やらんでもない”というセリフだとか。これ、以前、オノと橋沢さんと飲んだときに、あるシチュエーションで私が口走ったセリフで、オノと橋沢さんにやたらウケてしまったものであった。橋沢さん、河崎作品で踊るのであるが、どう踊ろうか、悩んでいたが『黒蜥蜴』見て、“あれでいこう!”と思った、とのこと。どこで何が役に立つかわからない。

4時、店を出てタクシー相乗りで帰る。橋沢さんと飲むと大抵午前様になるのだが、今日は飲み始めたのがそもそも午前。ベッドにもぐりこんで寝る。何時間寝られるか。
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