裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

8日

金曜日

シルバージャンプはつむじ風、シルバーシートはひとりがけ

座れ病人ご老人。

※『ポケット』収録

朝6時半起き。ベロではあったが昨日は寝るのが早かったし。入浴、朝食8時半。柿、ミカン。ジャガイモとセロリのスープ。とにかく寒い。京都はいい時期に出かけた(仕事がそういう時期にあった)なあ、と思う。

10時15分、家を出る。今日、番組でかけるCDは『ジャン・ペーチャン・ホゥ』と、予備で『ダイヤル110番』のテーマ、と思っていたが、家を出たところで、そうだ、茶木みやこの『まぼろしの人』(テレビドラマ『横溝正史シリーズ』主題歌)のCDがあったんだった、と思い出すが、引き返すのも業腹なのでTBSにあることを(毎日放送の番組なんだが)願っておいて地下鉄で。

芦辺拓さんすでにスタジオ入りで、案の定もう芦辺節全開で語っている。博識でおしゃべりで、とにかく面白いのに
「いや、わたし面白いことなんも言えませんので、今日は相槌しか打てません」
などと謙譲も過ぎすぎまっせ、と言いたくなるような言を。打ち合わせが“講義”でたびたび中断されて、しかもそれに私や海保アナ、I井D、イニャワラさんが聞きほれるので収録開始がいつもより15分も延びたほど。

収録開始、無事、茶木みやこ『まぼろしの人』もかけられる。ただし、CDがなくてレコードだったのに驚いたが。芦辺さんの推薦した藤山一郎『一九四七年への序曲』が凄まじい能天気歌謡。
「お米はとれて魚は大漁、買った富くじみな当たる……」
という、荒廃した敗戦直後の世相で、半ばヤケになった歌詞と見ることも出来るし、放送の中で言った、
「何もなかったが希望だけはふんだんにあった」
時代の象徴なのかもしれない。

内容的には実に面白かったが、ちょっとゲストの話を聞きすぎた(ファンである人を呼ぶとつい、そのジレンマに陥る)かも、と思う。で、しかも芦辺さんから衝撃的ニュース。いや、ええことなんですが。オノだけは聞いていたというが。

アイデアコーナー(“考えることを考える”コーナー)ではミステリ作家をせっかく呼んだのだから、と、
「カラサワシュンイチの殺し方」
を考える、ということにする。ああ、これ、今日冒頭の打ち合わせで決めて、きちんと笑えるトリックを考えてからやれば、絶対傑作になったものを。ちょっと急場の感はまぬがれず。

ラスト、いきなりI井&イニャハラコンビのアイデアで
「カラサワさんが殺されたことにしよう」
ということになり、私はエンディング、一切出ず。これも、も少しダンドリを作ってやるべきだった。アイデアは抜群、なのだが……。

収録終えたあと、芦辺ファンのオノがサイン貰って喜んでいた。三人で今井屋本店で昼食。私は親子丼。ロンドン旅行のドタバタの話など聞いて笑う。しかし、本当にわれわれのようなレトロ都会マニアにとってはロンドンは夢の街ですなあ。

事務所に帰る、原稿、書けず。『ワナゴナ』の件でNマネ(半田健人くんのところの)が来るというので待つがなかなか来ず、電話で“カラサワさんがいるとちょっと話づらいのでオノさんと月曜日に”と
言ってきたらしい。マネージャー同士のグチり用事ですな、これは。

6時半、タクシーにオノ、バーバラ乗合で新中野。バーバラは初台で、オノは同人誌データをパイデザに届けるために新中野で降りる。私はその数十メートル先の自宅まで。オノに学研の時代小説の構想話す。

『男の部屋』原稿執筆。書きながらポケット聞く。語尾を笑い声でごまかす悪い話しグセが出てしまって、聞きずらいことおびただしい。芦辺さんにも申し訳ない。ちょっと鬱っ気。実況板などを見るに、内容的には評判よかったようだし、エンディングの編集は見事なものだったが。

原稿アゲて、10時過ぎ、酒にする。サントクに生桜エビがあったので、桜エビ湯豆腐。昆布出しの中に豆腐を入れ、生桜エビと、万能ネギの寸切りを一束分入れて、煮えばなをポン酢で。これで能登の『竹葉』をやる。1時半就寝。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa