裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

5日

火曜日

みすてりファン劇場

岩谷テンホーがミステリファンに送る本格ミステリ四コマ!

※タカラトミーコラム原稿、フィギュア王原稿、ラジオライフ原稿執筆、『シルバー假面』試写@五反田イマジカ

朝8時起床。入浴、日記つけ、9時朝食。柿、王林、スープ。服薬如例。小青竜湯、黄蓮解毒湯の他、最近は麻黄附子細辛湯の代わりに補中益気湯を。これが案外いい。

原稿片づけ一束。タカラトミーのDS用コラムを書く。13本と数は多いが一気に。これがとりあえずソフト作成に関しての私の最も大きい作業であり、しかしギャラを考えると、これまでのモノカキ人生中、もっとも費用対効果のいい仕事と言えるかもしれない。

今日から弁当を母の考案のダイエット食で、温キャベツと納豆という取り合わせにする。へんてこな感じ。食べながらドグマのAVを見る。これも仕事で、今年のベストAVを決めるアンケートなのである。ダイエットにもいいかも。

食べてから事務所へ。フィギュア王原稿(6枚)、ラジオライフ原稿(11枚)、一気に片づける。鼻息が荒くなるね。二見書房Yさんからは、企画通ったとの報告。打ち合わせ日取りをオノに回す。

五反田に『シルバー假面』の試写に行く。タクシー使うが、この運転手さんが2ちゃんねらー。
「“懐かしのテレビ番組”スレにはまっているんだけど、あそこ凄いね。『海底人8823』でも『水道完備ガス見込み』でも、ちょっと記憶の端にあることを書き込むと、すぐ誰かが答えてくれる」
と。話にあまり噛み過ぎると止まらなくなりそうな人だったので適当に相づちを打っておくのみにとどめる。

五反田駅前でロフトのさいとうさんと待ち合わせて、イマジカに。いつも目印にしていたボーリング場が無くなっていた。五反田の思い出をいろいろ頭に浮かべながら歩く。

イマジカの奥の第二試写室で。なをき夫妻が来ていた。なをきとちょっと、昔の五反田ばなし。ドブ臭くて、暑い日など鼻をつままないと歩けない町だった五反田の、そのドブ川(小さな黒い猫の死骸が、実に気持ちよさそうにスーッと下流へ流れていくのをずっと見つめていたことがあった)端がいまや“リバーサイド”である。こないだ通夜で会ったジェネオンのMさんに挨拶。その他、業界の人たちが数人、こっちの顔を見て名刺交換に来る。ふと見ると、押井守監督もいた。

上映開始前に、Mさんから実相寺監督死去のお知らせと、告別式の模様の報告がある。弔辞を述べた寺田農氏によれば、寺田氏を主役にして実相寺監督が初演出したテレビドラマ『でっかく生きよう』のテーマが、『シルバー假面』のマーチとほとんど同じ、なのだそうである。人生の円環を自ら閉じた、ということか、とちょっと感動する。

で、観賞2時間15分(三話分)。以下、感想をメモ風に。

※石橋蓮司のカリガリ博士が私のカラーサワ俊一郎の格好にそっくり。これからあの衣装つけると真似に思われてしまうかも。こちらはマッド・ハッター、あちらのモチーフは白塗り、コウモリ傘など、『バットマンリターンズ』のペンギンなんだが(脚本の中野さんは『うらつき童子』でも二村ヒトシにペンギンのセリフを言わせているし、本当にペンギンが好きなのだなあ)。

※やはり三部の中で実相寺演出の一部が最も光る。演出家の力量の差というものをはっきり見せつけられた感じ。これだけ単体で売った方がいいのでは? と思える。仏像、走る光、SM趣味、浅草、オペラ、机に座る指揮官、人の頭ナメと実相寺趣味図鑑といった感のある画面造りは、やはり遺作という意識が明確にあった証拠だと思う。

※第二部はちょっとすごい演出。アイデアはアイデアなんだろうがこれだけ『トンデモ映画祭』でかけたいくらい。韓国の(それも20年くらい前の)SFドラマみたいだった。

※中野貴雄の脚本はあらゆるオタク的知識のアラベスクの様相を呈した傑作。しかし森鷗外とルンペルシュテルツヒェンの問答で、『モンティパイソン・アンド・ホーリーグレイル』まで出てくるとは思わなかった。

※やはり大正時代の再現をこの予算では苦しい、というのが正直なところ。まあ、『盲獣vs一寸法師』なんかよりははるかにマシだが……。そこらへんの処理も実相寺編が一番ボロを出していない。レトロオタクとして、だいたい、撮影はどこで行われたかが見ただけでわかった。どこも、ちょっとカメラをふると、現在が見えちゃうんで、カメラアングルがピシッと固定されていて動かない。いや、動けないんである。苦労はわかるが。

※第三部に、京都で共演した高嶋ひとみちゃんが出ていた。おお、演技がしっかり出来る子なのだな(山田作品では演技らしい演技というものがないのでよくわからない)。彼女のセリフで“たかはた華宵”って言っていたが正しくは“たかばたけ(高畠)華宵”だろう、と思っていたが、彼女によると、“たかばたけ”だと主張したのを、監督が強固に“たかはた”と訂正したという。

※CG効果ではルンペルシテルツヒェンの赤星満が手鏡の中から出てくるシーンが一番よかった。

※原口智生のデザインする怪人っていつも同じような気がするんですけれど。

映画終わってイマジカを出て、五反田の飲み屋街を歩く。いつぞや、清水ひとみさんと偶然入ったらそこの店主が私のファンで、しかもその店は浅野耕一郎さんの行きつけだったという、世間狭すぎな店にもう一度入りたいと思ったが、店の名も、場所も調べてくるのを忘れた。ところが、ぶらぶらと歩き回っていたら、なんと、まるでここを目当てに来た、というように、いつの間にかそこの店の前に立っていた。やはり縁があるところなのかなあ。『旬材店・あぜくら』という店。店主夫妻にも久闊を辞すことが出来てよかった。

さいとうさんと、ジンギスカン、牡蛎フライなどつまみながらいろいろと話す。途中で電話、アルゴピクチャーズのHさんから。さいとうさんと飲んでる、と言ったら“行っていいですか”というので待つ。この寒空を自転車で来た。

『シルバー假面』の話、知り合いの話などいろいろ。例の企画、××××くんを主体にする、と企画メモに書いていたのが周囲に評判がよく、早く形にしたい、とのこと。やる気、わく。今年じゅうにカタをつけようと決意。今年の私は半分は死人みたいだったが、年末に至りなんとか復調できたのはありがたい。

さいとうさんが日本酒をドンドンすすめる。このあいだのもんじゃ屋のときと同じ。途中までタクシーで一緒に帰るが、もうべろべろで何もできない。もったいない話である。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa