裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

17日

土曜日

ガラダマ三千代

 カ〜ヨ、隕石ずら!(このシャレ、なをきがどこかでやってた記憶があるが、受けをやりたかったから、まあやっちゃえ)朝7時半起床。朝食、バタロールドッグ。昨日出した荷物類、もう届く。イッセーの舞台にあったセリフだが、“どこまで便利になるものやら”。

 Web現代原稿、書き出す。お題は“ザーメン”(笑)。エロ三連チャンで行くと編集のIくんに宣言したその三弾目なのだが、私がネタとして考えるエロは、フツー人にとってさっぱりエロにならないことを改めて発見。AV系のサイトも入れて、なんとかエロっぽくする。旅行帰りのせいか、ペース取り戻せず、悶々とする。

 2時、雨の中、駿河台の古書センター、紙魚の会(だったか?)古書展。今日は行くまいと思っていたのだが、原稿書きが思わしくはかどらないので、気分を変えようと。行きの電車の中で、安達瑤さんから恵贈の祥伝社文庫新刊『ざ・だぶる』を読みすすむ。官能サスペンスミステリーだが、いっそ官能を全部そぎ落としても、と思える緊迫したストーリィ運びで、舞台がめまぐるしく変わり、またそれぞれのシーンが凝った設定と描写で展開する。ことに映画製作現場の事情はお手のもので読んでいて楽しい。ただ、瑕というほどのこともないのだが、主要登場人物の一人の名前が“沢竜二”(大衆演劇のスターと同じ名前)、作中の映画俳優の名前が“速水亮”(昼メロ俳優、『仮面ライダーX』の主演者と同じ名前)というのが、読んでいて頭の中にその顔がどうしても浮かんでしまい、往生する。主役の名前は、ネットの検索あたりでチェックして、同名のヒトができるだけいないようにした方がよろしいのではあるまいか。

 古書即売会、オッと驚くようなものはあまりなかったが、ちょっと固めのものなどを二万ばかし買い込む。このままなじみをひと回り、と思ったが、原稿のこともあり、メシだけ食って退散。メシは神保町交差点近くのギョーザ屋。ここはどうかな、と思って入ったのだが、定食についていたスープが意外にうまかった他は、黒豚ギョーザというものもそれほどでなし。脇で若い学生みたいな連中が、なにやら生化学系のベンチャービジネスを立ち上げる相談をしていた。その顧問格で、台湾系らしい学生が、自分の人脈や所持している技術について大変に大きな言を吐いており、周りのみんなはそれを感心して聞いている。事情はまるでわからぬし、言ってる専門用語もチンプンカンプンであるものの、何かウサンな感じがした。芸能プロダクション時代、同じ口調で大言壮語するサギ師を山程見ているのである。希望に燃えたという感じの表情でみんな出ていったけれど、果してどうなることやら。

 帰宅して、ちょっと休む。さっきのシンクロニシティというわけではないが、古書展で買った青江徹『興行師』(知性社・1958年)を読む。美空ひばり、力道山、ケニイ・ダンカン(戦後すぐ、西部の拳銃王、というフレコミで来日したインチキスター)などのエピソードが満載でいずれも同時代、力道山だってまだ現役でバリバリやっている頃の記事だから、迫真力があることあること。で、山師やイカモノ師のエピソードもいろいろ出ているが、その口調がまさにさっきの台湾系の男にソックリなのである。

 夕方からなんとかペースを取り戻してWeb現代、やり出す。6時半ころ完成。K子と編集部双方にメール。今日も夕食、作るつもりだったが気力も時間もなくなり、携帯に電話して、外で食べることにする。8時、パルコ7階のレストランで、しゃぶしゃぶ。生ビール三バイ飲んだ他は、肉もおかわりせず、ささやかに。某古書店からメールされてきた、オークションの値段付け。なかなかいいものにさっぱり値がついていなかったり、こんなもの、と思っていたものが数倍の値になっていたり。10時半、帰って早寝する。

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