裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

8日

木曜日

風とマンデラ

 南アフリカ落語会。ちなみにマンデラ大統領の名前はロリシャシャ・ネルソン・タンブリンカ。さらにちなみに立川志加吾が『風マンナイト』のパーソナリティをやっている(やっていた、か?)FMやまとのサイトでは、名前の読みが“タチカワ”とローマ字記載されている。自分とこのパーソナリティの名前くらいきちんと読め。朝7時起き。例によって寝床でクシャミ十数連発。不思議なもので、薬ものまないのに頭がポーッとして、ナチュラル・ハイ的な気分である。花粉症による神経過敏を緩和するため、脳内麻薬が分泌されているのかもしれない。台湾で暴れた篠原ともえ、会見のときマスクをしていたが、彼女も花粉症でハイになったのではないか? 朝食、コーンスープ、札幌から送ってきたイクラでサンドイッチ。

 トイレに入ったら、便が真っ黒で、腸内出血でもしているのか、と一瞬驚いたが、考えてみたら、昨日アワビのキモの佃煮を小鉢一杯、食べたせい。海拓舎原稿、枚数的にそろそろクライマックス的に盛り上がらなければいかんのだが、どうも堂々巡りになってきた。夢野久作の文章を引用しているからと言ってドウメグリメクラマシはシャレにならぬ。大幅に全体の構成を考え直す。

 仕事場の資料棚を少し整理。洋書のアート本の中に、次のと学会に持ってくネタにいいものを発見。喜々。昼は稲荷寿司と、応急で作ったゴボウのミソ汁。このミソ汁がうまくて、しばし恍惚となる。春のせいか、何か多幸症気味だな。催促FAXがきた福音館原稿を書き上げて送り、青山まで出て買い物。帰宅、SFマガジン原稿用の資料をネットであさっていたら、いいものを発見。

 3時、エンターブレインNくんと鶴岡来宅して、打ち合わせ、の予定であったがどちらも来ず。鶴岡はド忘れしていて、Nくんはドタバタしていて、どちらも一時間ほど遅れてくるとのこと。その間に世界文化社の連載最終回原稿やっつけてしまおうと三枚強、書き出すが、あと数行、のところで来てしまう。

 Nくん、いささか興奮気味で報告してくれたところによると、『ブンカザツロン』書店からの予約状況がかなりいいそうだ。エンターブレイン社の本としては、『ゲーム業界就職読本』シリーズがダントツなのだが、それに次ぐ評判だということ。幸先はよし。いろいろとメディア関係へのアプローチを考える。鶴岡がやはり春先状態にあり、ムヤミに神経が高ぶっていて、やたら早口となり、まるで不安神経症である。次のロフトでのトークのツカミのギャグに、いいのを考えついたんですよ! と披露してくれるが、客の半分は大笑いして、半分は引く、というもの。売り出しを考えるなら、こういうアブナいギャグは控えた方が本人のためなんだが、まあ、これもこいつの虎の縞で、洗っても落ちまい。昔の私が、およそあらゆる諸先輩から、“もう少し落ち着いて話せばお前は立派に人の上に立てる人間なんだから”と説教されて、ついに改められなかった人間なんで、いまさらその件では人に何も言えない。

 Nくんの持ってきたタイヤキを一個半、齧る。抹茶白餡と、チョコレートカスタード。気分が悪くなった。二人帰ってから、世界文化社原稿、大急ぎで書き上げてメール。首が凝り固まった感じがするので、マッサージに電話して、急いで出かける。整体だけのつもりだったが、花粉症で水代謝が悪くなっていると思ったので、サウナにも入り、汗を流す。こちらが出たあたりで、二人連れの客が入ってきた。一人はデブの白人、もうひとりは若い日本人で、ちょっとジャニ系の入ったショウユ顔(いまでもこう言うのか?)。ビジネスマンらしいスーツ姿だったが、デブ白人の方がやたらウレシそうに、ジャニ君に話しかけ、冗談みたいなこと言って笑わせている。横目で見ながら、“どうもこいつら、アヤシイな”と、心の中でニヤつきながらやおい妄想していたら、いきなりデブが、脱いだジャニくんの肩を引き寄せるようにして後ろから抱きしめた。抱きしめられた方も拒否するでなく、笑顔で小さくノオ、とか言うだけでなすがままにされている。さすがの私もこれにはオドロき、二人がサウナに入っていくのを呆然と見送っていた。

 マッサージ受けて着替えに戻ると、まだあの二人、浴場ではしゃいでいる様子である(二人ならんでジャグジーに浸かっている)。やがて出てきたが、ジャニ君がバスローブを着ようとすると、デブがその裾の方をひっぱっていたずらしたり(やはりノオ、とか笑ってる)、実に仲のいいことである。アテられて、ソソクサと出る。『僕のセクシャルハラスメント』(ビジネスマンホモアニメ)の世界って、ホントにあるんだなあ。自分の方は、整体のセンセイに、“前回より体が七、八歳も若返っています”と言われる。春の効能か。

 帰って、食事の支度。9時ころ、K子と夕食。白魚とカニと豆腐の小鍋立て、桜鱒の塩焼き。さっきのホモカップルのことを話して盛り上がる。ビデオで、『赤胴鈴之助・月夜の怪人』。シリーズ二作目で、まだ原作のストーリィをなぞっており、三ツ目の鳥人だとか一本足の魔人だとかという化物どもは登場しない。演出は逆にマンガの映画化、ということを意識してギャグも入れており、鈴之助と竜巻雷之進が決闘中に、目つぶしのコショウ玉でクシャミの連発になり、中村玉緒のしのぶまでそれに巻き込まれてハックション、などという珍シーンもある。火京物太夫が、奪った千葉周作の羽織をネタに鈴之助を脅迫するシーンは傑作で、これはロフトのネタになる。

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