裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

20日

火曜日

オイラン・ショッピング

 電子モールであなたも女郎買いが! 朝4時に目が覚める。アルコールと風邪薬でぐっすり寝られると思ったんだが。しかたないので日記など書く。6時にもう一度フトンにもぐり込み、ちょっと熟睡。7時半起床。朝食、K子にはコーンとカボチャ炒め、私はハムチーズ・サンド。夫婦で朝食が異なるのは、私は新聞片手にざざっと食べられる朝食を好み、K子はきちんと朝ごはんらしいメニューを希望するから。

 微熱っぽいが体温をはかるとそんなになし。咳のみいらだたしい。原稿、彷書月刊のをやり出すが、どうも長引きそうだということがわかり、エンターブレインのものに変更。前書、十三枚半。昨日三分の一ほど書いたもの、読み返してみるにテンポが悪い。思いきって全部放擲、イチから書き出す。案外、すらすらと行く。とはいえ、十三枚半というのは前書にしては異例の長さで、時間はかかる。中で、斎藤環『戦闘美少女の精神分析』に触れる。この対談集をやろうというモチベーションのひとつになったのが、斎藤氏のこの著作に対し、氏自身に“こんど書評書きますから”と口約束したまんまになってしまっているので、その義理を果たそうということがあったため。たまたま、書評原稿依頼がこの本を取り上げるには不適当なところからばかりであったので、タイミングを逸してしまったのだ。

 まあ、どんな風に触れているかは、興味ある方はこの前書を読んでもらいたいが、一言でいうと、この斎藤氏の著作を読んで、オタクたちは揃って“面白い本だが、さて、誰のことを言っているのだろう”と思うだろう、ということ。この本を元にしたML討論の参加者たちが、揃いも揃って“自分語り”を始めてしまったというのがその何よりの証拠だろう。斎藤氏の理論をオタク共同体批判に使いたい、しかし自分もオタクとしてこういう一例だと思ってもらっては困る、という、あれは防波線を引いているのだ。

 昼過ぎて、2時半になってやっと書き上げてメールする。まだ、この本は各章扉部分のまとめが残っている。なかなか完成しないなあ。3時、時間割にて福音館『大きなポケット』T氏打ち合わせ。次回のストーリィについて。出逢いがしらにTさん、すまなさそうな表情で、“実は、この作品について、こないだ編集会議で話が出まして……”と、言い出すので、テッキリ打ち切りだと思い、まあ七転八倒しながらやっている連載だから仕方ない、むしろ楽になってその方がいいや、と思って“はあ”と元気なく答えたら、“おもしろいので近いうちに増ページ特集でやりたいね、ということでして”と続けるのでずっこける。こっちが苦しい出来だと思っているときに相手はそうも思わない。なかなか、結果というのは読めないモノである。

 一端帰り、カップヤキソバで昼飯(情けない)。今度は新風舎原稿ゲラチェック。根本敬、ゲッツ板谷、松尾スズキ氏などと共著(要するに『知的B級〜』のシリーズがここに移った)のエッセイ集『ステキな自分を見失う本』(タイトルはなんだかなという感じ)の前書・後書のゲラである。アリモノのネタに手を加えたものだが、文体を統一したのでまあ、読めるものになった、と思う。FAX。

 で、またトンボ帰りで時間割、『ウルトラグラフィックス』村崎百郎氏との対談。写真撮影があるので服を着替えていく(向こうがいっつも同じ格好なので、こちらは変えないと絵的にマズい)。この対談、原稿忙しいさなかに三時間近く拘束されて、荷だなあ、と思っていたのだが、やはり鬼畜な話をするのはストレス解消になるのかだいぶ盛り上がってしまった。さるにてもこの対談、ネタにだけは毎月々々、困らないどころか豊富すぎて困るほどである。写真撮影はいつも渋谷近辺のオシャレな喫茶店をカメラマン氏が見つけてきて、そこで行うのだが、今日はなんと、わがマンション一階の『ザリガニ・カフェ』。二人とも原稿押せ押せで、疲れているのでアクビ連発。村崎さん、『GON!』の原稿、一応次々号分まで注文が来ているが、どうなる かわからない、と言う。

 撮影終わって8時。半に『船山』でK子と食事。アナゴのハモ風しゃぶしゃぶというのが新メニューで美味。雑炊を残った汁で作ってもらう。風邪は咳が残るが、なん とか抑えた。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa