裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

26日

金曜日

アニメのズデンドウ

ほら、実現前にずっこけた。

※『黄金夢幻城殺人事件』プレミアムステージ

弟と2人、イベントのゲストで招かれて地方都市に行く。
実はその前日に親が亡くなっており、肉親の死も関係なく
こうやって仕事に駆り出されるのは商売とはいえつらいことだなあ、
としみじみ悲しさが胸にわいてくる。
……という夢を見て目が覚めたら、マイケル・ジャクソンが
死んでいた。一報ではまだ心肺停止状態という報道だったがすぐ、
死亡が確認、と。ペインキラーのオーバードーズらしいという
話もあったが、さて。

マイケルが『スリラー』を発表した82〜3年、
ちょうど東京で下宿生活を私は送っていたが、当時の新文化
であったレンタルビデオ店の、開店する際のカンバンとなる商品が
まず、たいてい『スリラー』のビデオであった。どれだけ、『スリラー』
のPVの本数をそろえているかで、そこのレンタルショップの
資産規模がわかったというくらい、みんな、このビデオを借りまくった。
たとえばプレスリーの歌うときの腰つきがどんなに色っぽくても、
レコードではそれは鑑賞できず、テレビや映画でときおり見かける
それを頭に思い浮かべなくてはならなかったのに比べ、
マイケル・ジャクソンのダンスは、ビデオという最新機器によって
常にファンは目の前にそれを見ることが出来、模倣することが出来た。
これまでのどのスターよりも、マイケルは“手軽に見ることが出来る”
スターだったのだ。

家庭用ビデオデッキというアイテムの普及とマイケル人気の高まりは
たぶん、パラレルであるはずだ。ここらへん、まさに彼は
80年代が生んだスターということが出来るだろう。
音楽性から言えば、むしろその前のジャクソン5の頃が図抜けて
いたように思う。

後半生はミュージシャンというよりむしろ奇行の人、という感じで
世間の耳目を集めていた感があったが、それもこれも、彼の得た
“ちょっとやそっとじゃなさすぎる成功”がもたらしたもの。
彼の影響で“セレブは奇行をするもの”という“常識”が定着して
しまったのも皮肉なことだった。
それにしても私もマイケルと同じ年生まれである。
私はドラッグをやっていないけれど心臓がそろそろバテはじめて
くる年齢なのだな、と思う。
気をつけなくては。

一方でファラ・フォーセット・メジャースも25日死去
(リー・メジャースと離婚してからはメジャースはつかないの
だが、絶頂期を知る者にとってはこれをつけないとどうも
落ち着かない)。70年代、彼女終演の映画『サンバーン』の
ポスターがいたるところに貼ってあった。
60年代のマリリン・モンロー的なふくよかなセックス・
シンボルに比べ、顔も肉体も笑顔も鋭角な、まさに
新時代の記号化されたセックス・シンボルというイメージだった。
『サンバーン』自体はどうということのないB級サスペンスだったが
旬の女優というのは凄いものだなあ、とつくづく感心するくらい、
この映画は最も美しい時期の女優を最も美しく撮る、という一点に
絞って、成立してしまっていた。
ピーター・バラカンがマイケル・ジャクソンの死について、
「『スリラー』が売れ過ぎて、それがマイケルを呪縛にかけた」
というようなことを言っていたが、ファラ・フォーセットもまた、
70年代の彼女があまりに美しすぎて、それが呪縛になって
しまったような気がしないでもない。

2人の偉大なエンターテイナーに、黙祷。
8時、起きだしてサクランボ数粒つまみ、タクシーで病院へ。
その心臓の再検査。診察は明日なのだが、それをスムーズに
するために、採血、心電図、レントゲンのみ先にやっておく。
母によると、私は小児マヒをやって、まだ2歳にもならぬとき、
病院で毎日脊髄液を採取され、その痛みと恐怖に白衣を
見るだけで泣き叫んだという。
それが別段トラウマになるということもなく、白衣に足がすくむ
こともなし。まず、ありがたい。

20分もかからずに検査終り(予約は偉大なり)、自動支払機で
検査代払い込んで、院内ナチュラルローソンで買い物して帰宅。
朝食とり、今日の集合時間の12時半まで少し心臓を休ませる。
なぜか普通に起きるより、病院から帰った今日みたいな日の方が
確実に午前中という時間に余裕あり。

12時半、下北沢『楽園』。ちょっと遅れたがまだ稽古始まっておらず。
今日はハッシー、テリー、琴ちゃんの三人がテレビ生出演のため、
代役プレミアムステージ。劇団ノーコンタクツの麻見拓斗さん、
松原由賀ちゃんの2人、それに劇団レトロノートの前澤航也くんが
特別出演で、一回のみの役を演じる。
演出はNC赤英。さまざまなシーンをどんどんNCチックに変えていき、
舞台監督の早さんたち、
「アカホリック・シアター(赤英の本名は赤堀)だ」
と。

昼をまるまる稽古に費やし、気分はほとんどマチネやった感じ。
麻見さんと松下あゆみの、“ブサイクとワイシャツと私“も結構。
由賀ちゃん、怪しげなメイド役結構。
琴重もいいのだが、やはり最後にメガネっ娘にならないと
菊園女史は。
麻見さんは私もズッパリと“ブサイク!”と怒鳴れて、
何かいい気分。

劇場隣の韓国食堂でスンドゥブ。
劇場にもどり、いろいろみんなと話す。
今回の舞台、光っているのは、佐藤歩の少年探偵スバルは別格と
すると、若手の吉澤純子(バカ娘役で見事なブレイク)、
それとゲストの鈴木希依子(楽屋で見ても感心する美人なのだが、
それが赤英しこみのギャグを連発して、イメージ大逆転)の
2人だなあ、としみじみ。

やがて本番、小さなミスはいくつかあれど、まず大過なく
最後まで持っていけた。なんとなんと、の役柄変更だったなべかつ
さん、本番直前まで不安がっていたが、実際の舞台ではさすが、
見事なもの。イメージ的にはこちらが本役より合っているような。

三度目の観劇になる芦辺さんと、二度目の奥様、満足された様子
なのでホッと。オノ、マドも来ていた。
集合したところで麻見さんと由賀ちゃんにお礼。
陣太鼓でお疲れさま打ち上げ。
麻見、由賀、私、オノ、マド、早さん、菊ちゃん、ミヤッキ。
麻見さんたちと、先日のトツゲキの舞台の話など。
12時、おひらき。
タクシーで帰宅。マイケル死去の話になり、
「私も51ですからね、もうダメですわ」
というと、
「いや、私59ですが、51なんてまだまだ青年ですよ」
とナグサメ(?)られる。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa