裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

27日

月曜日

ギララ豪雨

いきなり赤い火球が降り注ぎ……。

※角川ホールディングス原稿 神楽坂飲み会

長い長い夢。
私はロックミュージシャンである(別に甲斐バンドの影響ではないと
思う)。最近スランプで、新曲のレコーディングも思うようにいかず
何度もリテイクしている。バンドのメンバーがよくないのでは
ないかと思い、入れ替えも検討している。
所属事務所のプロデューサーが変わったというので、事務所で
名刺をもらう。もの凄くモダンだが薄暗い事務所。
新Pはイモい感じの姉ちゃんであるが、名刺に“田聖”と
ある。何と読むのかと訊いたら“タージャ”であるという。
本名はタージャ・ワナハフェットルンとかいう東南アジア系だが、
ずっと日本で暮らしているのでもう中身も日本人です、と笑う。
彼女のオフィスで業界人数人と雑談するが、不思議なことに、
オフィスの中にタオルが何枚もある。中には湿ったのを乾かしている
最中なのもある。訊いたら、このオフィスには
温水プールが隣接しているという。
出て見ると、なるほど、O型をしているビルの中庭が全部プールに
なっているのが見おろせる。模擬ビーチなどもあり、そこでダンスの
練習などをしているグループもいるが、プールには若い男性二人が
泳いでいるだけ。その、広いプールに二人だけがぽつんと泳いでいる
光景が凄く気に入り、降りていって、服を来たままざぶざぶと
プールに入り、彼らと話す。そして、自分も服を脱ぎ、裸になって
泳ぐ。泳ぐのなど何年ぶりかだったが、水と同化したつもりに
なると、不思議に自由自在に泳げ、みんなに賛嘆される。
そうか、こういう自由な気持が俺のいまの音楽には欠けていたんだな、
と思い、次のレコーディングはうまく行きそうな気がしてきて
いい気分になったまま、泳ぎ続ける。

9時半、朝食。
アオマメのスープ、バナナジュース。
開田さんから、画集の推薦文のお礼。
某出版社からはそれとない原稿催促。
京極夏彦さんからは送ったDVDのお礼。
それぞれに返事。

同人誌のあとがきを書き、
来年のルナティック・サーキットのアオリ文を書き、
某映画の宣伝用コメントを書く。
コメント用資料に送られてきていたDVDをもう一回見直す。
マニアックなコピー文を思いつくがこれはマニアック過ぎてボツ。

昼は弁当、シャケと小松菜炒め。
海苔の味噌汁。近くのコンビニで売っているカップ味噌汁のうち、
海苔だけが小カップなので、ずっと海苔ばかり。

泰葉と小朝の泥仕合、というより泰葉のひとりドツボ状態、
見るだに痛々し。長女の美どりはまだ、三平が売り出し中の修業時代に
生れた子だが、泰葉は父が真打になり、日本一の人気者になって
からの出生である。“家”の中で幼い頃から万能感を持って育ち、
かつ逆にその万能の力を与えてくれる家のために犠牲を払うことも
いとわなかった人物が、初めて家の意向と離反し“一人”になったとき、
己の無力さに気づき、それを頭で理解したくなくてパニックに
陥っている、という状況なのではないか。
こうなっちゃった理由も以前からいろいろ耳に入ってきており、
理解できないこともないのだが、すでに全ての関係者にとり、
彼女の存在がブラック・シープになりつつあり、そのことがさらに
彼女の自暴自棄を加速させている。

5時、家を出て渋谷へ。
家でずっと原稿書きだったので、外に出て、初めて雨に気がつく。
新宿までバスで出るが、やがて凄まじい降りになり、小粒の雹が
混じる凄い集中豪雨。バスの屋根がダダダダダ、という凄い音。
新宿から仕方なくタクシーにして、渋谷の『包むファクトリー』へ。
麻衣夢への誕生日プレゼント(マトリョーシカ入浴剤)を
プレゼント風に包んでもらう。ちょうどあつらえたような大きさの
箱も見つかり、入浴剤が可愛い、と店員さんにも好評。
おまけに、この梱包の時間が丁度いい雨宿りになった。
渋谷駅まで傘をほとんど使わず歩き、銀座線で永田町乗り換え、
有楽町線で飯田橋。

飯田橋で梅田佳江さん、オノ&マド、麻衣夢と待ち合わせ。
来年、飯田橋に事務所を移転させる計画で、まずは飯田橋〜神楽坂
近辺で飲みましょうという、何だか意味のあるようなないような
飲み会。こっちの連絡ミスで麻衣夢が有楽町駅に行ってしまっていた。

神楽坂を上がり、飯田橋に仕事場のある佳江さんの案内で、
ちょっと普通じゃ見つけられないような場所にある
祇園料理の店『和raku』へ。
一軒家を買い取ってそこを料理屋にした、という風情の店で、
個室に案内される。

料理はきわめてまっとうな京料理。
湯葉豆腐、メダイのお造り、エビ芋の煮物、シイタケのすり身詰め
天ぷら(オノは当然ダメ)、シャケのあられ揚げ、柚庵焼き、
豚とろと大根の煮物、〆は焼き茄子といくらのお茶漬け。
酒は唐芋焼酎の火唐(ぽから)というのを頼む。

麻衣夢に誕生日プレゼント、やはり包装を喜んでくれたので
成功! とVサイン。
その店を出て、次は庶民的な店を、と佳江さんにリクエスト。
一軒、向かったところが月曜定休だったが、その脇にある、
これまた佳江さんなじみの、『緑』なる、古い飲み屋に行く。
ホッピー頼んで、雑談いろいろ。オノはすっかり神楽坂気に入った
ようで、何かはしゃいでいる。古い店(老舗というほどではない)
がたくさんあるのが嬉しいようだ。飲み屋、飯屋がこうまで
密集して軒をつらねているというのもなかなか壮観である。

あまり酔った気になってないが、実はかなり過ごした模様。
総武線で中野まで。
帰ってメール等チェックする間もなくグー。
明日は書き下ろし原稿書かないと……。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa