裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

16日

土曜日

星野の王子さま

星野監督、北京五輪日本野球チームに斎藤佑樹選手を熱望!

※『DVDデラックス』原稿 『トンデモ本大賞』OPビデオ撮影『トンデモ本大賞』最終打ち合せ ロフトプラスワン『ライオン丸G』イベント出演

朝5時半起床。入浴してまた寝る。人生の愉楽。8時半再起床、9時の朝食を待つが母から電話で、珍しく9時半にしてちょうだい、と。昨日が重労働すぎたか。

9時半改めて朝食、スイカ。京は1時半からトンデモ本大賞OPビデオ撮影打ち合せなので、早めに原稿を、と思いDVDデラックス原稿を書く。6枚弱、1時までに書き上げ。

1時半に間に合うようすぐ家を出て、ざるラーメンを急いですすり込み、新中野駅前『Veloce』で、時間かっきりに山口A二郎氏とそのスタッフ二方と落ち合う。と学会からは出演者のS井さん、しら〜が来ている。あやさんはちょっと遅れて。S井さんが初期の頃からのPマンファンと分かり、意思疎通もスムーズ。

まず自宅のマンション裏手の公園に行き(ここは前に写真を撮って山口さんに確認してもらっていた)ロケハン。オチに使えるものなども発見、ここにしましょうと。この公園、爺さん連中が朝の犬の散歩につかうくらいしか能がない場所と思っていたが、こんな役に立つとは思わざりき。あやさんに自宅の衣装部屋を着替え室に使ってもらう。白無垢の女神のコスプレ。肩などの露出が多いため、こうもり傘を日よけに使ってもらう。梅雨入り宣言されたので天候が心配で、いざとなったらあやさんは室内で撮って合成、とか山口さんと言っていたのだが、日差しが逆に心配なほどのピーカン天気。よほどの晴れ男がいるか。

現場に戻るとS井さんのシーン、撮影中。IPPANさん、植木さんも手伝いに来てくれた。しかし、撮影は山口さん以下、慣れているPマンスタッフによって手際よく進んでいく。レフ板やモニターなども用意され、やはりわれわれとは段が違う。まかせてよかったとしみじみ思う。あやさんの金髪かつらに、スタッフがそこらのヤマイモの蔓をちぎって月桂冠まがいのものをつくり、ひょいとかぶせると、これが決まる。ここらが現場演出。そばにある水飲みの噴水を現場特撮で使ったら、という意見も出たが、これは却下だった。

とはいえ、山口監督、凝って、カット割り細かくし、何度もリテイクを繰り返す。こっちは素人感覚で、20分か30分で撮り終えてしまうんじゃないかと思っていたが、どうして、ホンの数分のOPにたっぷり1時間半くらいかけた。炎天とまではいかないがピーカンの昼間の太陽の下、S井さん、地べたに寝ころんだり、倒れたり、汗だくの演技。ご苦労様。あやさんが最後歩き去るところで、撮影に興味をもったらしくつきまとっていた子供が画面に入ったが、これが実にいい味で、みんな大喜び。

それから私の仕事場に場を移して、ナレーション録音と私の出演シーンを撮る。私の出演シーンは台本(私の作)にはなく、監督が急遽ギャグとして挿入を考えたもの。これはまったくのアドリブで、3分で撮影終了。

それから、イイノホール下見に行ってきたI矢さんたち一行と合流、またまた駅前のVeloceで雑談。SF大会についてなど。鼻の頭がちょっとかゆいのは、日焼けしたせいだろう。山口さん、編集が趣味で、
「一日中でもフィルムを(もうフィルムじゃないが)いじっていたい、人に手渡す一分前までいじっていたい」
という。その感覚はわかる。

雑談しているうちに5時半。山口さんたち一行と別れ、新宿へ。区役所裏のルノアール会議室で、眠田さん、K川さん、談之助さんらと合流、トンデモ本大賞最終打ち合せ。細かいところまでいちいちチェック。私は途中で抜け出して、ロフトプラスワンへ。今夜の『ライオン丸G』イベントに、監督の大根仁さんの希望でいきなり飛び込みで出演。ヒゲを生やした大月Pに挨拶。それから大根監督(私の『三丁目の猟奇』のファン)、獅子丸役の波岡一喜、コスK役の小田あさ美、オザキ役の人(本人も今日はオザキになりきっていた)。それに漫画版を描いているゴツボ・マサル氏。

監督のブログには、
「どうせ客来ねえんだろうなあ。少なければ少ないなりに濃いカンジでやろうとおもいます。全員小田のおっぱい触れるとか」
などとあって、よからぬ期待をしていた、わけではないが客席ほぼ満杯。しかし小田あさ美ちゃんはまだ18になったばかりだというが、やはり実に可愛い。小林恵美のエロ系と対比した彼女のキャスティングがこの作品の成功でもあるな。

最初のトークの部分に出て、監督と波岡さんとオザキさんとトーク。観客が普通の特撮番組マニアのオタク層とかなり異なるのでとまどうが、少し話して調子つかんだのでいろいろひっぱり回して笑いとる。“なぜ『ライオン丸G』のDVDは売れないか”について話してくれ、とさいとうさんに言われ、
「これはいわゆる今の特撮ファンたちが喜ぶ、“感性の快楽”に訴える作品ではなく、低予算ぶりや悪趣味含めて楽しむ“知性の快楽”の作品。ある程度時間的サイクルが過ぎないと評価されない」
「しかし、自分で望まないのに力を与えられた、世界を救う意志のない主人公と、なにやら背後にうごめいてはいるが正体のわからない悪など、いかにも大月さんらしい作品で、これはジワジワと評価が高まってくる。もっとも、それを阻止する要素も作品内に多いことも某作品に似ている」
などと分析。30分、あっと言う間。監督にも喜んでもらえてよかった。
「今度は(台詞全然覚えてこない大久保鷹の代わりに)出してください!」
と監督に挨拶して辞去。会場大拍手だったのが嬉しい。

みなさんへの挨拶もそこそこにさいとうさんに送られてロフトを出る。談之助さん主催の『温故知新の会』のチラシ、置いてもらう。

出演者のサイン入りポスター、ギャラ代わりにもらえてラッキー。あと、大月Pにもちょっと内緒ばなし。

ルノアールに戻ると驚いたことに、まだ打ち合せやっていた。実に細かいことまできちんと決定させている。打ち合せ終え、さて食事、ということでまた青葉へ。ここに通いだしてもう5年以上だと思うのだが、初めておばちゃんに
「仕事場がこの辺ナノ?」
と訊かれた。料理、カエルのトウガラシ炒め、アヒル、キャベツの塩炒めなど。キャベツの塩炒めは確かにキャベツの塩炒め、だった。

古本マンガ収集で同じ趣味の新田五郎さんとIPPANさんの話が面白く、ひえださんが
「お金とって聞かせればいいのに」
と。私もちょっと、IPPANさんにお願いごと。あと、奇想天外シネマテークを今後どうしていくか、ということなど。

トイレで開田さん、
「(大賞の発表用のビデオの)編集が楽しくってねえ!三日もかけちゃった」
と。山口さんの言葉も思いあわせると、わかるわかる。伊丹十三が言っていたが、撮影は素材集めに過ぎず、映画にそれが変身するのは編集室において、なのだ。

11時ころ、お開き。植木不等式さん、送ってくださる。車中でいろいろ話す。個人的に申し訳ないこともあり。自宅で、メールチェックなどしつつ、ホッピーで酔いの仕上げ。ビデオで『家族ゲーム』見る。『伊丹十三の映画』読み終わったので、急に見たくなったのだが、これはこんなにフレームの狭い映画でありながら、スクリーンで見るべき映画に作られており、ビデオではつらい。

初期の森田芳光の伏線の周到な張り方、スクリーンの中の人物やものの配置そのものに意味を持たせていく画の作り方は明らかに後に監督になる伊丹十三に影響を与えているのだが、伊丹の方が年長でしかも森田以上の人気監督になってしまったため、それが語りにくい現状になっているような気がする。しかし、大月Pが大根監督に言ったという、
「説明なんてしないでいいんだよ。見た人が後から考えてくれるんだから」
という言葉と、たぶん、森田、伊丹が思っていた、観客の思考を全て監督の思いの方向に向かわせていく演出、正反対のものがどちらも映画の世界には存在しているところが面白い。
もし私が映画を撮ったら、どっちに向かうだろうか?

Copyright 2006 Shunichi Karasawa