裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

29日

水曜日

京都大もんじゃ焼き

 大木屋京都支店。朝6時30分起床。窓外を見ると霏霏たる雪。コミケの日にこれか、とちと驚く。昔は“天長節とコミケは晴れる”と誰かが戯れ言で言っていたくらい、たとえ台風でもコミケはよけて通るのが不思議だった。最近は台風の直撃を受けることも多い。オタクの念力も弱まっているのであろう。開田さんたちはどうしてい るだろうか。私は明日だが、天気予報では晴れ。果たしてどうか?

 入浴朝食、如例。地下鉄で出勤。関口誠人さん等に9日の件で連絡メール。日記つけ、昨日の原稿のために出した資料を基の棚にもどす作業などしていたらすぐに1時 を過ぎる。昼食はオニギリに納豆、しじみ汁。

 昨日資料で使った講談社ブルーバックス『Q&A人体のふしぎ』(スティーヴン・ワァーン著)に、使った部分ではないが面白い記事があった。アラバマ州オーバーン大学社会学部のスティーブン・スタック博士とニュージャージー州ストックトン大学心理学部のデビッド・レスター博士の二人が、共同で自殺観念作用の研究を進め、星座別にこの自殺観念作用(自殺を真剣に考え、実行しようとする傾向のこと)との関係のデータをとったところ、当然のことながらほとんどの星座で関係性はネガティブ だったのだが、ただひとつ、
「魚座だけに関しては密接な関係下にある」
 という結果が出てしまったという。魚座の人は他の星座の人に比べて、自殺をポジティブにとらえる傾向が確かにあるそうだ。

 占星術では魚座は“失うものが多い星座”であり、そう運命づけられていると信じている人は鬱になりやすく、絶望することが多いからではないか、と考えられるが、 二人の研究者は
「これが占星術そのものを反映しているのか、悪い星座という考え方が現実感をともなって社会現象化しているのかは、現在の分析範囲を超えている」
 と言っている……そうな。

 もう少し追調査すれば関係性などすぐわかると思うし、この話を紹介している著者のワァーンは、この程度のデータのかたよりは行動科学の研究ではよくあることであり、あまり真剣に考えないように、とは言っている。しかし、こういう結果が偶然にせよ出てしまうということ自体は面白いし、最近、ナニカというと統計データの数字しか論の根拠にできない人が増えていることを思うと、魚座の人には悪いが、ちょっ と笑ってしまった。

 雪なお降り止まず。2時に東武ホテルに傘さして向かう。今日のコミビアの収録メンバー、おぐりゆか、声で特出を頼んでいる尾針恵、マネージャーの土田真巳、つきそい(?)の村木座長と落ち合う。もひとり、ここで明日のコミケの件の打ち合わせで卯月妙子さんと落ち合うことになっているのだが(彼女の本をうちのブースで委託販売する)会えず、あれあれと思って15分待ち、仕方ないと出たところで携帯が鳴る。喫茶店に入っていたらしい。ここで待ち合わせるとよくあること。そっちの方は 無事、すます。

 わが仕事場は現在、居間の暖房が壊れて、今日は冷蔵庫状態なのでルノアールの会議室とろうかと思ったら満員、せめて時間割ででもと思ったらなんと29日で年内の営業は終了。仕方なく、うちの物置&仮眠室になっている和室をざざっと片付け、そこで打ち合わせを。尾針ちゃんの吹き替え部分の読み合わせなどする。しかし、出来たコミビアみんなに見せたり、雑談と軽食でほぼ、時間は使い果たしてしまった。尾針ちゃん、かなり緊張しているが、座長が控えているのがこういうときには何よりの 安心感だろう。

 タクシーで原宿BS朝日スタジオ。楽屋入りしてすぐメーク、ディレクターのIさん、ADの康さん、社長のSさんに挨拶。すぐ撮りに入る。いつも通り四本撮りの最初が尾針ちゃん出演のもの。要するに“声”の雑学がテーマで、私の声を尾針ちゃんが吹き替えるわけ。ライブに来ている人にはおなじみの例のネタも入れ、リハ一回、撮り直し一回のぶっつけだったが、見事に仕上がる。宮垣についで尾針もこれでコミ ビアコーナー出演成功。

 あと三本は毎度のテーマである、このコーナーでいかにおぐりを視聴者に印象づけるかということに集中、サングラスの謎の女にさせたり(個人的にはこの姿、今回一番の収穫。チャイナドレスに大きなサングラス、真知子巻き風のスカーフ姿が60年代の東宝アクション映画の浜美枝や若林映子のテイストが出せた)、チンパンジーの真似をさせたり、しまいにはバレーボールのユニフォーム姿にさせたり。スタッフにはこのバレーボールの回が最も受けて、スタジオのスタッフが吹き出していた。

 3時間くらいかかるかなと思っていたが2時間半で無事終了、さすがにもうみんな慣れている。次回の収録がうわの空本公演の仕込み日にあたるのでその調整を土田さんと康さんがやっている。さらに私はSさんとちょっとオトナの打ち合わせ。思っていたよりも脈アリ的な積極的返事(“センセイさえよろしければ……”)だったので大いに意を強くする。康さんは尾針ちゃんの声を絶賛し、積極的な提案をしてきて、みんなおお、と勢いづく。Sさんと話した件、康さんにも話しておく。こちらもごく当然というように受け取ってもらえた。

 スタジオから外に出ると、すでに真っ暗だったが雪はすっかり上がっていて、やった、これで明日は大丈夫だと喜ぶ。さて、これにて仕事納め。その後みんなで(メンバーの強力なリクエストにより)日暮里のもんじゃ屋・大木屋へと向かう。間違えて 山手線逆回りに乗ってしまったが、時間的にはそれでピッタリだった。

 土田・尾針と三人がけの席に同席して、まだ興奮さめやらぬ体の尾針ちゃんと、演技の話、今後の話。ふと見ると、ちょうどおぐりの座っている斜め前あたりの席に、顔を寄せ合ってはキスしたり耳を噛んだりと、えらいイチャつきぶりのカップルがいた。一人で乗っているときはこういうのにブチあたると、バカウォッチャーの身とし てじっくり観察させていただくのだが、おぐりや尾針と一緒だと、
「けしからん、嫁入り前の娘の前でこのケダモノどもが」
 と、いきなりお父さんモードになる私。大木屋の大将、今日はご機嫌で
「どう? お腹の具合いい? よければ秘密メニューを出すか」
 と言う。もつ煮といつものカツオのたたき、肉、牡蠣炒めなど、順調にメニュー進むが、その次になんと巨大なメンチカツが、鉄板の上にでーんと。焼きカツキャベツ付きである。これが巨大な固まりでありながら実にあっさりめの味付けで、全員感嘆 感激。

 そこらへんで土田さんに携帯で連絡あり、康さんから。収録日のことだろうが、私にも用事がある、と携帯渡され、聞くとコミビアの四コマ、1月1日編集なので31日中に欲しいとのこと。今日が仕事納め、ではなくなってしまった。とはいえテレビの人たちは元旦から編集作業するのだなあ、大変だなあ、などと他人の仕事に感心しながら、こっちはビール飲んでもんじゃ食べる。ここのもんじゃの後をひく味に村木さん、
「なんかクスリ入ってんじゃないのか」
 と。具をいちいち土田さんはメモっていた。すでにお腹はパンパンのはずなのに
「ああ、もう無くなってしまう」
 とおぐりなど惜しがっていた。思うに、この苦しい感が脳内にアドレナリンを放出させて、こっちをもんじゃハイにするのではあるまいか。確かに、一度と学会のメンツで来たとき、“前回は少しもんじゃが多くて苦しかったから少な目にしよう”と一人前減らしたら、食後、物足りなくて仕方なかった。お腹の膨張感あっての快楽なのかもしれない。今日は他に謎の黒衣美女軍団も来襲して、大将の機嫌ますます上々。 少しお値段もサービスしてくれた。

 おぐりとは明日のコミケもあるので、今日はあまり深酒もせず、帰宅。開田さんたちの今日のコミケ打ち上げに参加していたK子も早めに帰っていて(後で聞いたら雪 の外出が嫌なので欠席したとか)
「すごく早いじゃないの」
「キミこそ早いね」
 と、驚きあって、明日の件をいろいろ事前打ち合わせして、すぐ寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa