裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

1日

木曜日

萬子(ワンズ)と厨子王

 山椒太夫さまは麻雀がお上手で(ああ、フリーネタのダジャレは楽だ)。朝4時に目が覚めてしまい、夢声戦争日記(8月の定番読書)など読む。またその後ウトついているときに夢を見る。新製品のオモチャのレビューを書く仕事に、山本会長、なをき、私の三人が選ばれるが、そのオモチャ会社の若い社長というのが生意気でやたら威張るので三人ともイヤになり、嫌味から悪態のつきあいになってケンカになり、社長ががなっているうちにアゴがはずれて中のゼンマイ仕掛が見え、“あ、社長もオモチャだったのか”と驚く、いうものだった。

 朝食、冷蔵庫の中をチェックすると母から送ってきたウナギとゴボウの炊き合わせがそろそろ危ないかな、というギリギリの線。そこでパスタを茹で、バタ半かけを溶かして混ぜ、きざんだゴボウとウナギをのっけて和風パスタ。新聞に藤本敏夫死去の報。ただ、“歌手・加藤登紀子さんの夫”とだけしか書かれていない。かつての全学連のヒーロー、反帝全学連委員長ももはや遠い々々過去の話か(ATOK12では全学連という単語も学習させないと出ない)。Googleで検索しても、出てくる記述の四分の三が、加藤登紀子との獄中結婚のことである。ところで、肺炎で死去と出ていた。58歳という若さで肺炎とは、と思いネットで調べると(最近、フレッシュアイの機能が変わって使いにくくなったのは困ったもの)、肝臓ガンが肺に転移し、治療中に肺炎を併発したとあった。抗ガン剤、または放射線療法による治療で免疫力が低下していると、通常は無害であるグラム陰性桿菌等によって肺炎になる場合がある。これを医学用語で“日和見感染”という。全学連の先頭に立つ闘士であった人物が“日和見”で死亡とは、あまりに。

 〆切が昨日だった『クルー』連載原稿、書く。コピーのインク交換、その他いくつかの部分がやはり劣化しているというのでそこらもチェックしてもらう。メール、ナンビョーさんから自分の病気をダジャレにしてくれてありがとうございます、というお礼。こういうお礼を言われた人物というのも私が世界で一人であろう。

 3時から新宿の談話室・滝沢において美好沖野さんと出版の打ち合わせ予定。少し早めに出て買い物だとか銀行口座のチェックだとかいろいろする予定だったが、企画書を用意していないことに出がけに気がつき、あわててパソコンの前で15分ほどでざっとしたものをデッチあげる。とはいえ、構想はコラボやろうという話がまとまったときにメールでのやりとりで形を思い浮かべていたので、ヤッツケではない。あわてて新宿へ。銀行へ寄り、西口の半地下の食堂街で立ち食いの肉天ざるをすすり込んで、時間ピッタリに東口滝沢へ。沖野さんと編集さん、来ていた。去年の冬コミ以来だが、さすがに主婦っぽくなっていた。

 沖野さんが“文芸社”と言っていたので、自費出版中心のあの文芸社なのかな、と思っていたら、そうではなくて日本文芸社だった。かの『漫画ゴラク』の日本文芸社である。『漫画ゴラク』と聞くだけで、何かワクワクするのは可笑しい。担当のHさんに挨拶。Hさんは自分の腕ひとつであちこちの編集をわたり歩いているサムライらしく、個性の強い人。企画書見せると、大筋はいいですが、も少し詰めましょう、と言うので、ならばデータで、と数字をいくつか出してみせると、“うーん、いいですねえ”と乗り気になってきた。雑談もいろいろ。Hさん、エニックス時代に久美沙織さんの担当もしていたそうで、私と久美さんがロフトでやったトークのときにも来ていて、聞いてたそうだ。久美さんの多作、速筆の話もし、へええ、と感嘆する沖野さんに“プロというのはそういうモンなんだよ”と、少しオドす。

 漫画ゴラク連載の柳田理科雄本、単行本はやはり売れているとのこと。コラム、私もやりたいから担当を紹介して頂戴と頼んでおく。柳下&町山のファビュラス・バーカー・ボーイズにもH氏、何か連載しないかとフッていて、町山氏が(やはり)漫画ゴラク、ということで大喜びしているそうである。オトコの物書きだったら、『漫画ゴラク』『アサヒ芸能』『噂の真相』あたりに連載を、という声がかかると、何か全身の毛穴が、嬉しさとオゾケの中間でゾゾッと開くようなところがある。叶姉妹と寝てみたい、というような、一種のゲテ趣味かもしれない。そのこと自体がどうこう、ではなく、話のタネになる、という魅力の方が強いのである。とりあえず、この企画書の方向性で内容を具体的にしていきましょう、というあたりで次回へと。帰り道、沖野さんと『奇跡の詩人』ばなしなど。

 伊勢丹で買い物して帰宅、しばらく休む。とにかく今日は暑い。暴力的な熱気で、外に出ただけでクラとなる。7時近くになって、やや陽もかげったのでセンター街に出て、さくらやでカセットテープを買う。最初東急ハンズに行ったのだが30分というテープがなく、さくらやまで行くが10分、20分、46分などというのはあっても、30分のはない。やっと、11本セットというのを見つけて(それでも600円だが)買う。私が生まれて初めて買ったカセットテープというのが30分のソニーのもので、それ以来30分のテープを買うのは30年ぶり。

 談之助師匠から電話で、10月の12日、ロフトに企画OK出したが、その日に仕事が入ってしまっているという。あわてて斎藤さんに電話するも、留守録。状況のみ 伝えておく。さて、どうするか。

 8時半、夕食の支度にかかり、9時、K子と。お中元のマカロニを茹でて、これもお中元のカニ缶に、生ハム、野菜類、トマトソースとまぜ、上にチーズを乗せてオーブンで焼く。簡便グラタン。もひとつオーブンを使った、イサキのガーリック焼き。ニガウリの残りを羊肉と炒めたジンギスカン風。どれもK子には好評。LDで『電撃フリントGO!GO!作戦』。テンポのタルいところがいかにも60年代風。テレビではもう十回近く見ているが、編集と、声優(小林清志、富田耕生)さんのハイテンション芝居でかなりテンポを上げていたんだな、とわかる。リー・J・コッブみたいな名優に女装させてしまうナンセンスはさすがだが。

 ネットでメール確認、先日、ヤマトトークのとき、この日記に戦争論、どこか出版してくれるところ募集、と書いたらなんと、本当にメールがあった。SF大会で会ったIくんの関係している出版社である。小さい出版社だが、ガメラ本、ゴジラ本などを出していて、オタク系には強いところがミソか。条件面で折り合いがつけば、ということであるが、どういうことになるか、ちょっと打診してみる予定。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa