裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

6日

木曜日

信長の野暮

 本能寺で豆腐の角に頭ぶつけて死亡! 何か最近、タイトルを考えつくたびに“前にもうやったんじゃないか”と疑心暗鬼になる。チェック用のタイトル表を作れば便利なんだが、毎度やろうとしては挫折。朝7時45分起床。マゾヒスティックなまでに自分の書いたものをけなされまくる夢を見た。こういうのも快感である。朝食、トウモロコシとアスパラガス。アスパラガスはもう限界。

 昨日の『戦争と平和』書評の件をささきはてるさんに連絡しようとしていたら、日記読んだらしくささきさんの方から電話。“あれってカラサワさんの一番嫌いなアニメの見方でしょう”と言うから、“そもそも二十年前にぴあで貶したのが、ああいう見方だったよねえ”と答えたら大笑い。“もう、徹底して否定しちゃっていいです。私もああ、こっち側にいっちゃいけないなあと思い思い、あの本まとめてたんで”となんだか屈託しているようすである。とはいえ私もオトナになったもので、“しかしあれから二十数年、いまだああいう見方で本が出る、というのは、正しい正しくないに関わらず、そういうニーズに応え続けてきた作品なわけだ”と思う。ここらへん、自分の好悪だけで否定しきってしまっては偏頗なものになってしまう。

 ひさしぶりにとみさわ昭仁氏からメール。昨日の“日経○○”の記載に関し、その他、何につけてもおさまってしまう語に“ぴあ”があるのではないか、という話。そうそう、あれも“焼き肉ぴあ”“エロゲーぴあ”などから“不倫ぴあ”“殺人ぴあ”と、なんでもありそうだな。ところで不倫雑誌などあるのかとお思いかもしれないが昨日の鈴木さんの話だと、東京デートスポット案内みたいな表向きで、不倫カップル向きの人目につかないホテルやレストラン情報を紹介して、部数を稼いでいる雑誌はちゃんとあるそうである。

 11時半、家を出てチャーリーハウスで早めの昼食。甘ったるいソースをかけた腓骨飯だが、暑苦しいこの天候には合った食い物。10分で食べ終えて時間割。ちくま文庫Mくんと。『お父さんたちの好色広告博覧会』文庫化の件。“こういう下世話に読めて実は教養的、というのはちくまのカラーにぴったりです”と喜んでくれる。デザインは一考の余地あり、なので井上デザインにやってもらうよう頼む。文庫編集長がイケイケで行ってくれているのが頼もしい。

 帰宅して、少しとっちらかり過ぎているパソコン回りを整理。ASAHIパソコンの取材が入るのである。棚などにたまったホコリを強力噴射のエアーダスターで吹き飛ばすのにハマり、ホコリのたまっているところを探してはシューッ、シューッと吹き飛ばして遊んでしまう。2時、スタッフ来。編集部のIさん、ライターのHさん、カメラマンMさんの三人。器機についての話は人任せ人間故ほとんど出来ず。ネットの魅力とか危なさなどについて雑談みたいなことを一時間ほど。Iさんは皆神龍太郎さんの下で働いたことがあるそうで、いろいろ話を聞く。知り合いが会社でどういう風に仕事しているのか、聞き出すのは楽しいものだが、皆神さんの場合はほとんど、こっちが思っていた通りの勤務状況であった。HさんはHさんで、下関マグロのところでライター修行したそうな。初めて会った二人が二人、知り合いの後輩というのもなかなか。世間はせまいものである。少ししゃべりすぎて、ノドがヒリついた。帰り際に、Hさんが居間に積んであると学会10周年記念マグカップを見て、へえ、こんなもの作ったんですかというので、あ、欲しければどうぞどうぞと売りつける。

 と学会誌の校正。図版を一つ増やしたいと平塚くんに電話。なら16行ほど削ってくださいと言われたので、しばらく頭をひねってあっちを削りこっちを書き換え、なんとか16行分を削ってFAX。くたびれて横になり、少しウトウト。変な夢を連続して見る。岡田さんのオタキング事務所に言ってみたら柳瀬くんはじめ社員全員海水着で仕事をしていて、変な会社だなあ、と思ったりとか。

 起きて仕事少し。K子と待ち合わせの時間が迫ったのに気がついて、あわててタクシーで新宿紀伊国屋前8時。伊奈浩太郎さんがいて、一緒に『鳥源』へ行く。いつもここはこの時間帯は満杯で入れないのだが、今日はどうしたことかガラガラ。みんなサッカーを見ているのか? 『ゑびす秘宝館』のパンフ同人誌をもらい、鶏を食いながらいろいろ雑談。伊奈さんはもう、大の親ばかで、“ウチの娘も難病なんですよ、もう、生まれたときからの可愛い病、美人病で”と凄まじい。それからいろいろ仕事がらみの話を聞いたが、どれもこれもちと外聞をはばかるものばかりなのでここには記せず。一番罪のないようなやつを一つ紹介すると、モロボシ・ダンこと森次晃嗣の奥さんが店を出して、お祝いに行ったアンヌことひし美百合子、例によって大酔っぱらいとなり、奥さんに向かって森次氏を指さしながら“ねえねえ、コイツの初体験って知ってるー? コイツの初体験ってさー”と言うから、聞いてるみんな、ああ、ひし美さん食っちゃったのね、と思って仕方ねえなあ、と思いつつ奥さんも苦笑して聞いてたら“コイツ、初体験、オトコとなのよー!”……店内は一瞬、ガンダーに襲われた防衛軍基地のような状況と化したらしい。

 鶏わさ、冷やし蒸し鶏、茄子揚げ、梅和えにササミカツなど。冷やし蒸し鶏は鶏肉を鶏挽肉の味噌で食べるという、共和えみたいな工夫が面白い。あと水炊き。雑炊は遠慮しとこうと思ったのだが店員に勧められ、結局食べてしまって腹がきつい。生一杯に、メローコズルの水割り、ボトルキープしていた、ひと瓶の残り三分の二くらいを三人でほぼ、空けた。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa