裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

30日

木曜日

サンヨー全自動変革期

 いま、洗濯機が変わらねばならない時代だ。朝8時起き。朝食、バジリコスパゲッティ小皿一パイ、ダイエットポタージュ。K子にはジャガイモ炒め。昨日ほぼ半日、家をあけたので仕事関係の留守録、十本以上。いろいろ連絡。西手新九郎の暗躍いろいろあり、ちょっと驚きながら仕事する。

 昨日の日記つける。そう言えば薩摩しゃもで飲んでるとき、快楽亭から、N氏についての情報を仕入れた。快楽亭も歌舞伎座でバッタリ出会って、奇妙に決めつけられた応対をされてとまどったそうだ。ははあ、私に対してばかりでなく、あらゆる人に対してそういう風な感じで接しているタイプの人なのか、と、ちょっと納得する。午 前中、カタログハウス原稿ゲラチェック。行数調整いくつか。こういう、誌面デザイ ンに添った細かな字数あわせ、さぞめんどくさい作業のように思うだろうが、やってみるとこれが、ここで何字削ってここを足して、と、パズルみたいでなかなか面 白いものである。

 これを送った後、さらに『エンジン』原稿で『ハイ・フィデリティ』評。オタクの視点から、という注文だったが、バリオタで書くと“こんな中途ハンパな奴ァオタクじゃないやい!”になるので、いくぶん目盛を落として、一般人的視線で“オタクの恋愛って?”みたいなところに焦点を当てて書く。他に、車雑誌だから車のことにも一箇所くらい言及した方がいいだろう、とか、短い原稿だが気を使い、完璧にクライアントヨイショ仕様原稿とする。さすがに喜ばれた。

 書き上げて、青山まで出る。宇明家で緑玉どんぶり。メシの上にソースカツ、生姜焼き、煮卵、明太子、もやしナムルが乗っているという、いささか精神分裂気味のどんぶりもの。まあ、空き腹にはうまい。スーパーで晩飯の材料を買って帰る。

 海拓舎Fくんから電話。彼の友人が某社で吉田豪の本を作っているが、好美のぼるについての章があり、図版使用許可を取るのに、夫人の連絡先を教えてくれないだろうかということ。吉田豪のB級マンガ評論本なら早く読みたいので、どうぞどうぞ、必要なら資料もお貸しいたしますが、という感じで返事をしておく。彼も雑誌連載が忙しくて、なかなか単行本用の原稿が書けないそうだ。そう言えば、こないだある人から、“唐沢さんは、吉田豪の文章は自分の真似だ、と言っているそうですね”と言われた。なんでも、どこだかの掲示板にそんなデマを書き散らしている奴がいるそうである。そんなこと、誰が言うか。吉田氏の文章は誰かの真似をして書けるものではない。あれは天性のリズム感覚を持った者の文章だと思う。

 3時、時間割で新風舎M氏と打ち合わせ。ゲッツ板矢、根本敬などと共著のコラム集の件。来年三月くらいに刊行なので、年明けくらいに前書き原稿をお願いしますとのこと。その他の単行本、いくつか企画の売り込みをしておく。

 5時、新宿に出てサウナ&マッサージ。さすがに先週の博多行きからの疲れが全身にたまっているらしく、きつめの指圧が心地良い。施術されながらウトウトしてしまう。帰るとハローケイエンターテインメントからまた取材原稿の申し込み。さすがは師走、といった感じ。夕食の支度をしながら編集部と電話で打ち合わせ。8時半、夕食。あまりものをぶちこんだ鯛ちりモドキと、わっぱ飯。ビデオでチャップリンものなど見る。日本酒、春先に能登で買ってきた竹葉の小ビンがあったので、お燗して三合。

・「わっぱ飯」
 冷蔵庫の中にあまっている菜っ葉類(本日は水菜、菜の花)を細かく切って、ひとつまみだけ残し、後をゴマ油と塩で炒める。醤油で香りをつけ、一味唐辛子、ゴマをふる。冷凍のウナギ(アナゴでも)蒲焼きをやはり細かく切り、炒めた菜っ葉と一緒に、冷飯とよく混ぜる。蒸篭(我が家では昔、シューマイを買ったときについてきた小さいのをいまだに使っている)にその冷飯を詰め、鍋にかけて十数分、蒸す。食べるとき、残しておいた菜を上にのせて供する。酒の後の食事に最高。濃い味が好みならウナギのタレをまぶすが、うちではウナギと菜っ葉の味だけのあっさり味が夫婦とも気に入っている。

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