裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

2日

木曜日

最後の海底巨乳

 海底から発見された氷漬けの巨乳が・・・・・・(あまりにも安易な駄ジャレを考えつくと後で苦労する、という見本)。朝8時起床。朝食、サツマイモとスープ。この五郎金時、ホントにうまい。朝刊に角川春樹容疑者の実刑確定、のニュースに思わず新聞をバシバシ、叩く。なんというタイミング。今日のオタアミのツカミはもう、決まりだね。もともと、去年、ここのNくんと会ったときに、“そろそろ社長が収監されるのですが・・・・・・”と聞いていたのが、かなりのびのびになり“もうされないのか?”と思っていた矢先であった。ちなみに、出版に影響はございません、ご心配なく。

 ライターの野沢義範氏から送られた、映画同人誌『映画バカ一代』を読む。同人誌といっても、一般書店にも置けるツクリの立派なもの。『シベリア超特急2』の脚本を担当した北里宇一郎氏のエッセイが載っている。水野映画はいかにして出来るか?の貴重な資料である。黒沢明風を少し、市川崑風を少し、ヒッチコックとデ・パルマも、という風な水野氏の脚本への注文の仕方に苦笑。イソップの、落ち羽根をまとったカラスだよ、それじゃ。・・・・・・ところが、製作中に全てのスポンサーが降りて、あの映画は水野氏の自己資金で作られた、という件りを読んで驚愕した。うーむ、それなら彼が何をやろうと、フランシス・コッポラの如く、まったくの自由ではないか。氏の映画にかける愛とその情熱には感動を覚える。さまざまなテーマを盛り込みながらも、映画は娯楽だ、という考えを根底に持つ氏の理念にも大いに賛同する。出来たモノがアレである、ということと、この感動や賛同とは無関係だ。それに、今日びのチンピラ俳優の誰が、あの映画の中の水野晴郎と同等の大印象を残せるか? 前にこの日記で、フィルムをオモチャにするのは天才の特権だ、と書いた。しかし、己れでリスクを全て背負う決心さえあれば、素人だって、フィルムをオモチャにできる、と言うことを教えられた。甘かったぜ、オレも。

 デジタルCSよりの出演依頼、撮り日決定。ギャランティは最初から“金がありませんので”とクギを刺されるが、まあ、地上波の文化人値段程度ではある。エンターブレイン原稿ナオシ、微量なりと、とやって送る。

 1時、新宿へ出て買い物。銀行で入金(印税)確認。ロフトで食べるヒレカツサンドを買ったあと、永坂更科で鴨なんせいろを頼むが、いつまでたっても持って来ず、少しイラつく。急いで渋谷にとって返し、2時歯医者。歯をガリガリやられながら眠くなって弱る。帰って、オタアミ用ビデオをまとめる。ダビングの不調はリモコンの電池が粉をふいた状態になっていたためと判明する。

 5時、雨(かなり強い)の中、ロフトプラスワン。NくんとKさん、“いろいろとご心配をかけまして”と開口一番。“ゆうべ聖ジェルノンで大笑いしていたあたりで会社ではえらいことになってたんですね”と笑ってる。Kさんに冗談で“お母さんから「おまえの会社の社長が逮捕されたけど大丈夫かい?」と電話あったでしょう”と 言ったら、マジな顔で“・・・・・・本当にありました”とのこと。

 6時、客入れ。雨の中、どんどん人が入ってくる。そんなにまでしてオタク話を聞きたいか、とヒトゴトのように思う。立ち見は出さない方針だが、ほぼ通路奥まで、ギッシリと詰まる。今日も岡田さん11時でケツカッチンであり、また休日前で深夜ライブもあるので、7時半開演では時間が足りなくなるかも知れぬと判断し、岡田さんと7時過ぎには壇上に上がり、昨日と同じく同人誌販売。客が同じだとどうか、と思っていたが売れ行き繁し。十分もせずに完売。そこからなしくずしにトークを開始 する。

 今日は三人ともネタ充実。トルコのスター・トレック、タイのバットマン(しかもミュージカル)、猫目小僧、セレブリティ・デスマッチ、スーパーマン横浜破壊、長靴をはいた猫のぬいぐるみアンコール(以上唐沢)、血祭さんのお宅訪問、ベスト・オブ・マッドテープ(岡田)、僕のセクシャルハラスメント3、ガンダムのコスプレAV、聖ジェルノン新作、伊勢田監督新作アニメ集(眠田)。他にもいろいろネタはあったが、伊勢田アニメの前に全て雲散霧消。毎年、実写で新作ジェルノンを作り、五○分のアニメを多作し、しまいには人形アニメまで作ってしまう。もはやこれはわれわれの認識の遠く及ばぬ天才の域ではないかと思う。例えば彼の『シャリダマン』というアニメ、鉄火巻の怪人が出てくれば、普通の感覚では“寿司怪人”とかつけるではないか。それがこの人のネーミングセンスでは“怪寿司”になるのである。不良グループが実は怪人であった、というと、“怪不良”とテロップが出るのである。おまけにこの寿司アニメは、耽美なのである。かなわん。最後、眠田さんがコミケでビデオについてきた、伊勢田監督直筆の耽美美少年イラストを紹介。オタクのセクシャリティとかについて研究しようという者は、ヘンリー・ダーガーなんぞどうでもいいから、この伊勢田作品を研究すべきである。いや、本気である。

 終了後、知り合いのお客さんたちと挨拶。IPPANさん、気楽院さん、ひえださん、開田夫妻、小杉あやさん等。小杉さんとちょっとコミイッた話(笑)。眠田さんと、その友人のゲーム作家のゾルゲさん、QPさん、FKJさん、鈴之助さん、YくんとK子、のメンツで打ち上げ。東京ホルモン市場という焼肉屋に行く。マッコリがかなり進んでしまった。領収書に“角川春樹事務所、とお願いします”と言ったら、店員が目を丸くしていた。社長が逮捕されたのに、なんという社員どもだと思ったであろう。帰宅2時ちょっと過ぎ。

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