裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

2日

土曜日

マンガ家通ってストライク

 エロ漫画家の原典。応援団がチャッチャッチャ……。朝7時半起床、入浴、日記つけなど。母が東京を歩く会で早く出てしまっているので、用意してくれたスイカとサ クランボ、コーヒーで朝食。

 日テレ『世界一受けたい〜』の番宣用アンケートに答え、さらにリクエストで“小さい頃の写真”をデータで送る。12時、家を出て千駄ヶ谷。某件で某人に会う。ついでに、と言ってはなんだがホープ軒でチャーシューメン食べて昼食。林由美香は野方ホープ軒の娘だったが、ここのホープ軒とは系列が違う。武道の流派みたいなもんでややこしい。五年ぶりくらいに食べたがさすがに脂っこく、しょっぱくて決してうまいというモンじゃないが、変なもので、名物というのは“まずいのになぜか流行っている”でなくてはいけない。うまいから流行っている、ではフツーの店にしかなら ないのである。食べ物ばかりのことではない。

 ちょうど神宮外苑のフリマをやっているので探し物を。天本英世さんをここではよく見かけた。ぐるり回るがやはり楽しい。またフリマ回りを再開させるか。ちょうど探していたものにピッタリのもの見つけ、成果十分。買ったら周囲の常連さんが歓声を上げる。この出店に、三年くらい前からあった品だそうだ。タクシーひろう際にスタッフ章首にかけたおじさんに
「あ、先生、どうも。テレビ見てます」
 と声をかけられる。声をかけてふりむいたときにはもう、こっちの方は見もせず、周囲に
「な、声ですぐワカッたよ」
 と自慢している。腹が立つ、というよりむしろ懐かしいね、こういうおじさん。

 仕事場に行き、二見米田さんに出す原稿一本。それからタクシーで新宿、滝沢別館あとの椿屋珈琲店へ。道路まだメチャ混みで15分遅れ。おぐりに電話したら店自体メチャ混みで、いま5人待ちのところなのでごゆっくり、と。どうしたんだ新宿。

 椿屋珈琲店、おしゃれな感じのレトロな内装。滝沢に比べるとフツーの喫茶店であるが、客層が滝沢と同じで、業界系ばかり(隣の席もどうもAV関係の面接らしかっ た)なのがオカシイ。

 おぐりに原稿チェックしてもらう。自前の赤ペンまで用意して意欲満々。もっとも今回の原稿はOKでチェックいらなかった。そこから移動して区役所通りのカラオケパセラ。そこの部屋を借りてと学会トンデモ本大賞スタッフによる記録DVD観賞&反省会。IPPANさん、開田さん、K子、S井さん、しら〜さん、のび太くん、I矢くん。今回は裏方模様の記録DVDだけだったが、当日の全員の興奮状態が伝わっ てくるいい映像だった。

 K子が映るたびに誰か彼かに小言を言っているのに笑う。IPPANさん曰く
「黒沢明が現場でやたら怒鳴りまくっているのは、あれは怒っているんじゃなくて、テンションが上がりまくっている状態の発言が言葉になると怒鳴りになるというのが初めてわかりました」
 と。もっとも、終了後に取りに来るよう頼んだ弁当屋と花屋の“両方とも”取りに来なかったには本当に怒りまくったようだが。

 あと、楽屋でK子がウサギコスプレの声ちゃんに
「オタクどもを萌えさせるのはヘソよ。ヘソを出すのよ!」
 とハッパをかけ、
「ハズカシイデスウ」
 と声ちゃんが引いていたのにみんな爆笑。

 6時45分、鳥源に移動。そこでさらにあやさん、K川さん、植木さん、FKJさんが参加、鶏鍋で乾杯。植木さんが、さっきまでDVDで見ていた、最初の会見の貴 乃花みたいな髪型からスッキリした夏向きに変わっていたのを見ておぐりが
「私の知ってる植木さんと違う!」
 と。確かに髪を短くしただけでこれほどイメージが変わる人も珍しい。顔とのバラ ンスの問題か。

 談之助さんが持ってきたスポーツ新聞見たら、林由美香の記事に出ていた写真が、快楽亭に胸をまさぐられているところ。
「成仏できないでしょうなあ」
 と二人で苦笑。

 うずら、つくね、いずれも結構。メローコヅルの酔いのせいか、みんななにかハイ テンションで憑かれたようにしゃべりまくっていた。おぐり曰く
「こないだ母から電話があって、暗ーい声で“弟がな、お前がこのごろカラサワ先生と一緒に仕事してるの雑誌で見てな……”“うん……?”“凄く喜んで、今度プレイボーイにサインして貰っといてくれって言っとったわ”“そういう話なら明るい声で 言えーっ、母!”」
 一家揃って面白い。

 あと、K川さんの書画カメラの話題。トンデモ本大賞の打ち上げの日記にも書いたが、書画カメラはこれまでK川さんが某所から調達してくれていたが、来年以降、その調達が可能かどうかが不確定で、これをどうするか(なにしろと学会の発表には書画カメラは必要不可欠なツールなのである)と話し合っていたら、なんとポケットマネーでK川さん、書画カメラを買ってしまった。会員一同、その犠牲的精神に感涙滂沱であったが、聞いたら
「故障するといけないので、同じものを二台、買ってしまいました」
 というのにはみんな
「それは異常!」
 と笑いながらも呆れ顔。9時、雑炊とデザートまで食べて解散。K子とタクシーで帰宅。

 6月は本当にいろんな分野のいろんな人が亡くなった。いずれも私を“作ってくれた”人ばかりで、心からのお礼を捧げたい。
・ジョナサン・アダムズ 13日死去、74才。
『ロッキー・ホラー・ショー』のオリジナルの舞台ではナレーターを勤め、映画の方では車椅子の科学者、ドクター・スコットを演じた。渋い太い美声の持ち主で、フランケンファーターに殺された息子のエディーを悼む歌を歌うあたりの芸達者なことに感心し、そしてラスト、車椅子から伸び上がるストッキングの足……! 会場大爆笑大拍手であったのが昨日のように思い出される。その他の経歴を見ると歴史劇やシェイクスピア劇が多く、本来はそっちの方の俳優さんなのかと改めて知って、今さらながらにイギリスの役者の芸の幅の広いことに驚かされる。それにしても、享年74才ということは、あの役を映画版(75年)で演じたときには44才!(写真参照)。やはり役者は老け顔の方が長持ちをするということか。なお、今月は24日に同じ映画でトランシルバニア星人の一人を演じたイモジン・クレア(ケン・ラッセル映画の 常連)も亡くなっている。

・ポール・ウィンチェル 24日死去、82才。
『ワッキー・レース』こと『チキチキマシン猛レース』のブラック魔王(声・大塚周夫)ことディック・ダスタードリィの声をアテていた声優。本職は腹話術師だったそうだが、アニメの声優として有名で、他にはディズニーアニメ『熊のプーさん』で虎のティガーの声をずっとアテていた。ティガーはともかく、顔写真を見ると、実際ブラック魔王の役が実写でも出来そうなハマリ役だったように思う。ナマ声は聞いたこ とのない声優さんであるがしかし。

・ダナ・エルカー 6日死去、77才。
『ミネソタ大強盗団』あたりから顔と名前を一致させたが、とにかくいろんな映画やテレビにやたら顔を出していた丸顔、ハゲ、短躯、出バラのおじさん。『冒険野郎マクガイバー』『刑事バレッタ』など、主人公の上司で、主人公の暴走ぶりに血圧をあ げる頭の固い署長とか部長とかを演じさせれば右に出る人がいなかった。
「貴様ら、命令に従えと何度言ったらわかる!」
「まかせときなって、オヤジさん、あまり怒鳴ると血圧が上がって頭がハゲるぜ」
「もうハゲとるわい!」
 などいう吹き替えを何度洋ものドラマで聞いたことか。『スティング』でやたらドスをきかせたFBIのGメンで出てきて、ロバート・ショーやチャールズ・ダニングまで食っていた。それが一転、『セント・アイブス』では美人怪盗ジャクリーヌ・ビセットに翻弄される気の弱い刑事役。最後はなんと逮捕したビセットに色仕掛けで迫られる彼の顔のアップでエンドとなるのだ。人気俳優だった証拠だろう。苦労人の生活臭が感じられる人で、SFとかには似合わないなと思っていたら、『2010』にソ連の(というところが古いが)科学者ディミトリ・モーゼビッチ博士として出てきたのには驚いた。何でも演じられる人だったとはいえ、ありゃミスキャストだったん じゃないかな。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa