裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

6日

土曜日

とかく世はトリコモナス

 性病になったくらいで。朝5時半起き、7時半朝食。バナナ、サツマイモ、リンゴなど。そういえば兵庫医大の研究によれば、食物繊維はいくらとっても大腸ガンなどの予防には効果がない、というデータが出たそうな。煙草も酒もガンガンやって90まで生きる奴もいれば、体に悪いとされるもの一切摂らずに30で死ぬ奴もいる。カルヴァンの予定調和説じゃないが、人間の運命なんてものは生まれたときから神に定められている。善行を積むことでいい結果がその人の上に降るなんて考えは思い上が り以外の何物でもないのかも知れぬ。

 今日は日テレ『世界一受けたい授業』収録日。髪が伸び放題なので、トルーサウスを予約。朗読用原稿などをまとめる作業シコシコ。11時半に出かけて、スガワラ先生にやってもらう。テレビ収録のため、というとやはり熱が入るらしく、いつもより丁寧な感じっぽい。眉毛が伸びている(これも老化現象だな)ので少しカットしてくれる。眉が薄いのはコンプレックスの一つなのだが、不思議や、カットしたら少し濃 く見えるようになった。

 帰りにブックファーストに寄り、今日発売の『月刊少年ジャンプ』と『笑芸人』を買う。共にうわの空がらみで、もちろんジャンプはみずしなさんの『うわ注(うわの空注意報)』、『笑芸人』は喜劇を主体とする劇団特集で、村木藤志郎座長のインタビューが一ページだが掲載されている。『うわ注』はまた前回に続き私が登場。主要登場人物欄にも紹介されていてほとんどセミレギュラー化。座長インタビューは何か ずいぶん殊勝なことばかり言っている感じになっていて面白い。

 その二冊抱えて兆楽で味噌ラーメン啜って昼飯。帰宅して、〆切が過ぎている『男の部屋』原稿にかかるが、今日収録の『世界一〜』の雑学ネタ仕込みの方を優先、と思い、そっちにかかる。親切な制作プロダクションで、番組内で私が披露するネタも 全部、用意してくれているが、そこはやはり、自分で仕込みたい。

 5時半、家を出て麹町日本テレビ。何回か忘れ物に気がつき、部屋に引き返す。タクシー拾うが、この運転手が実にどうも頼りない親父さんで、ハラハラする。途中で一瞬ブレーキをかけ、
「あの、麹町の日テレということですが、日テレはすでに汐留に……」
 と言うので、“まだ麹町にも残っているんです”と説明して、再び走り出してもらう。それでも時間ちょうどに麹町着。角のローソンでしばらく待つうち、迎えに来てくれたKさんと、一緒にスタジオへ。……しかし、さっきの運転手さんの言ではないが、ここ、このあいだ『メレンゲの気持ち』で来たときはまだテレビ局らしいごった返し的雰囲気だったのが、今やほとんどの機能が汐留に移り、こちらはゴーストタウン状態。このあいだ入った通用口も、既に封鎖されているから、ぐるりと回って正門から入ってくれ、と言われてKさんと遠回りして歩く。汐留〜麹町間のシャトルバスが出ていた。かけもちのスタッフ用だろう。私もこの次の日テレ仕事(『サンクチュアリ』)は汐留で、ということになっている。何回か行った麹町のスタジオもこれが最後かと思うとしんみり。ただ、決して使いやすいとこではなかったな、とは思う。 控室の設備も古いし(いまだに和室で畳敷)。

 ディレクター氏から、“お願いしていた、時事ネタでの雑学は”と言われて、アッと心の中であわてる。すっかり忘れていた。しかし、表向きは平然を装い、何かネタがないかとポケットを探ったら、さっきタクシーのお釣りでたまたま貰った樋口一葉の五千円札と野口英世の千円札があったので、これを並べてみせて、“〜てのはどうです?”と何気ない調子で披露してみせたら、向こうはえらく感心していた。内心、 ホッと胸をなでおろす。

 私は放送第四回目の、一時間目の美輪明宏さま(ひえっ)に続いての二時間目の授業。美輪さんが予想通り話をなかなか終わらせずに一時間目が長引いているという。モニターでセット裏から見たが、まっ黄色の髪で生まれ変わりについての講義をし、どういうつながりがあるのかしかとはわからぬが“舌切り雀”の紙芝居などをやっておられた。異様というかなんというか、スター・ウォーズにジェダイの一員で出ても浮かないような存在感。その次なので、これはヘタにやると記憶に残らないな、と思い、クサくやろうと決めた。始まる前に一応、最新鋭の画像パネルの操作を説明される。これがうまく使えないと番組進行がかなり中断されるので、スタッフも心配であ るらしい。

 この番組、堺正章の司会で、私の講義(日常の中の雑学について)を、有田哲平、鈴木史朗、田島令子、石塚英彦、美倉茉奈・佳奈、リサ・スティッグマイヤーなどといった面々が受けるのだが(スティッグマイヤーも田島令子もほぼスッピンで出ていたのに驚いた)、その中に、あの柴田倫世アナがいる。時の人ってのはしかし、オーラ出すものだな、と感心。はっきり言って、以前はいい印象あまりない人だったのだ が、モニターの中で一番、輝いていた。

 で、収録、最初の新札ネタがきちんとウケてくれたので、あとは一気呵成。45分くらいという予定を一時間たっぷりやってしまい、しかも予定していたものの半分しか進まず。つまりは、ひとつのネタでスタジオが盛り上がったということ。私のネタがよかったというよりは美輪先生から解放されて、みんなホッとしていたのではないか。田島令子がボケキャラで笑いをとっていた。田島令子と言えばオスカル様で、クイーン・エメラルダスでバイオニック・ジェミーなのに、とつい思ってしまうのであ るが。これを15分に縮めるのであるが、さて、どのネタが残るか。

 柴田アナには、ちょうど食事の雑学が出ていたので、“ご主人は焼肉が好きなんで すよね”と聴いたら、
「いえ、大豆たんぱく中心で、肉はほとんど食べません」
 と。ああ〜、あがってしまってイチローと松坂と間違えてしまった。恥かしい。まあ、すぐそこから“大豆たんぱくと言えば納豆ですが……”と話を転じてゴマかしたけれど。

 ともあれ、無事、授業は終了。スタッフにも“盛り上げていただいて”と感謝され る。とはいえ、最も絶賛されたのは、画像パネルの使い方。
「お上手ですね〜!」
 と感心される。自分としてはミスばっかりだったと反省していたのだが、これまでの先生陣がいかに最新機器に疎かったかということか。

 タクシーで新中野まで。家で母とK子とメシを食う。カキフライ美味し。あと、長野みやげの野沢菜、ダイコン漬けで飯。ホッピー飲んで酔っぱらって寝る。テレビは新潟地震特集番組。こういう報道は大事だと思うが、仕事終わってホッとしたいときに見るものではない。さほど仕事らしい仕事はしなかった日なのに、やたらくたびれ た。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa