裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

11日

火曜日

ビバルディ、ほんま。

 また『四季』かいな。朝、7時45分起床。天候は陰鬱に雨だが、不思議と昨日の鬱に打って変わって心ほがらか。朝食、キノコ(タモギタケ、はなたけ)の残りを使いスープスパゲッティ。食い終わってから洗顔、歯磨きなど。朝起きて一番に顔を洗うのが普通だろうが、歯磨きを食後にするために、めんどくさいから洗顔と一緒にしようとしていつも食後になる。日記書くためにネットにつなぐが、初期設定の変更がいつの間にかシカトされていて、アクティブコンテンツをオフにしておいたのが復活し、立川談笑や中野貴雄のサイトを見にいくと、ポップアップ広告がうるさいほど出 る。すぐまた出ないよう変更するが、なんでときどき元に戻ってしまうのか?

『裏モノ日記座談会』、いいかげんにやらないとと思い、手を入れ出す。しかし分量が山のようにあってなかなか進まない。光文社文庫から著者プロフィール原稿が送られて来たのでチェック。“主著”のところをどうしようかちょっと悩む。サンマーク出版からメール、会社のサイトでの宣伝写真を撮らせてほしいとの依頼。

 昼飯を食いに雨の中、出かける。サムラートでチキンカレーとナン。三人連れの若い金髪美人(正確には若いのが一人と中年増二人だが、美人は美人だった)がいろいろ会話していたが、英語ではなし、フランス語やイタリア語でもなし、かといって、ロシアや東欧っぽい響きでもなしという、不思議な言葉だった。食べ終わって、ブックファーストで雑誌数冊。『噂の真相』12月号も買う。トリビア関連で私の名前が山ほど出ている。……しかし、あれだけ言ってあったのに“出演者の女性タレントに手をつけまくっている”というのが載っていないではないか、“フリーライター(鶴岡法斎)”。頼りにならん男である。まあ、私が被害者、という感じで記事が仕立てられている以上、そういうことも言えないか。しかし、それはいいとして、れっきとした民放局、営利企業であるフジに向かって“金儲けのために番組を作っている”と非難する神経はよくわからない。サラリーマンに“給料を貰うために会社に行っている”と文句を言うようなものだ。難癖にしたってもう少しうまくつけられそうなものである。しかし、噂真ファンというのはこの記事を読んで、“なぜ、取材者は正体のわからぬフリーライターとか、匿名の番組スタッフなどにばかり取材せず、あの番組に出演して楽屋裏を見ている筈の筒井康隆のところに訊きに行かないのか?”と疑問 に思わないのだろうか。そのタブーを犯してこそ噂真ではないか。

 難癖と言えば、氷川きよしのショーの公演に文句をつけている35歳会社員の投稿があって笑えた。氷川きよしの扮する駆け出しのやくざが親分の代参を命じられ、百 両の金を持って旅に出る、というものだったらしいが
「渡世人の流儀すら全く知らぬ音次郎に現在の貨幣価値で数千万円もの大金を現なまで(当時も為替や小切手はあるのに……)持たせ、しかも御丁寧に護衛までつけてやる親分の真意が謎。又、非生産者である事で当時は一段低く見られていた筈の渡世人が、まるで歴とした職業の様に扱われているのも釈然としない(劇のラス前には大店の主人が何処の馬の骨とも判らぬ音次郎の後見人にすらなっている!)」
 などと言い、こんな程度の低い芝居に客のおばちゃんファンが大満足である様子にいたく憤慨している。自分の方に大衆演劇に関する素養が全くない、ということには気がついていないのである。こういうTPOのわからぬインテリ気取りを馬鹿にする のが噂真だと思っていたのだが。

 帰宅、ミリオンNくんが図版資料を取りにくるはずだと思って玄関にビニール袋に入れてぶら下げておいたが、まだ取りに来てなかった。胃がもたれるので横になる。しばらくグーと熟睡してしまった。起きてみたら、袋が無くなっていた。持っていったようである。チャイムを鳴らしたのだろうか。鳴らしても気がつかなかったかも知 れない。

 光文社文庫Oさんからメール、図版版権のことについて。共同通信から電話、先日のインタビュー掲載誌の送付について。そんな雑用や何かで9時過ぎまで。9時半、タクシーで中目黒すし好。ポー語帰りのK子と待ち合わせて、夕食。この店は自動ドアが開くとカウンターまで風がダイレクトに吹き込む。冬は坐る場所を考えた方がいいかもしれない。カレイ、サヨリ、甘エビ、煮ハマなど。つまみはアジ、それからキノコの天ぷら。職人さんから“お強いですね”と言われたくらいに二人で酒をクイクイやって、やはりいつもよりちとお値段は高かった(それにしたって巷の寿司屋に比べれば安いが)。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa