裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

16日

火曜日

オイラーが怒れば嵐を呼ぶぜ

 こんな橋、渡れるかい! 朝7時起き。朝食、チェリーパイとコーヒー、イチゴ。三浦洋一死去のワイドショーを見ているうち、急にガックリと落ち込み、鬱状態のようになって何も手がつかない状態になるが、やがて“三浦洋一の死んだことはオレには何の関係もないじゃないか”と気がつき、急に正常に戻る。おとついの結婚式のハイ状態で脳内麻薬みたいな物質が分泌され、昨日はそれを抑えるダウナー系物質が分泌されていたのではないか。今朝までそれが残っていたのだろう、と推測する。薬局新聞一本アゲ。エアコン配管工事、早ければ午前中に来るというから待つが来ない。早川書房宛バイク便手配など。

 昼はタラコごはんで済ませる。復帰なった鶴岡から電話。あちこちの裏事情交換しあって笑う。あと、どこへいっちゃったんだかわからない人の話題など。しかしながら、変にモノカキにこだわって業界で貧乏しているより、今の出版状況だと、どこかへいっちゃった方が、少なくとも食えていけている可能性は高いのではないかと思えるのが情けない。現在、モノカキで食っていこうなどと考えるのは暴虎馮河の類に属する。1時、原稿フロッピーもって大和書房Iくんと打ち合わせする(於時間割)。その話いろいろ。Iくん、今の状況下でカラサワさんはもう別格です、大物です、超売れっ子です、などとこっちをヤタラ持ち上げるが、このご時世ではまったく実感できないのが悲しい。

 帰ると留守録いろいろ。某K社、こないだから電話続けてかけてくるが、いつもこちらが留守のとき。ねらっているみたいである。ジャンボ鶴田死去の報。マニラで肝臓移植手術中、と聞いたとたん、“いくらで買った?”と反射的に考えるのは裏者のサガ。創出版打ち合わせのために4年前のコラムを別フロッピーにコピーするが、読み返すとやはり古い。単行本にしてしまうと古びないのに、雑誌に載ったきりのものはどんどんしなびていくのである。これが不思議。出がけにエアコン配管工事の人がくる。工事だけでもしててもらおう、と現在の配管状況を見せると、“あれ、これなら別に工事する必要ないなあ”という。“なにしろこのマンション、部屋がたくさんあるんでどこかとマチガエたらしいです。すいません”と去る。なんじゃ、そりゃ。

 3時半、東武ホテルで『創』のS田編集長。“カラサワさんは松沢さんとケンカしていたの?”と訊くので、因縁を話してきかせると、苦笑して“そうかあ、いや、こちらとのやりとりの中にまで突如カラサワさんの名前が出てくるんで、なんでなのかと思って”とのこと。いや、彼は自己中心世界状況地図を己れの脳内に常にひいている男なので、彼の中では密接なツナガリがあるんでありましょう。一応フロッピー渡すが、やはり古いということ伝え、新連載の件でこちらの案を出す。その線で、ということで大体話かたまる。ベーシックな形を早めに掲示することにして別れる。

 六本木まで足をのばし、買い物。映画関係書籍のフェスをやっていたので数冊、品切れものを買う。帰ってメール数本、すぐまた出て、新宿南口。中野に出て、芸能小劇場で快楽亭ブラック独演会。出演者でもない談之助、談生などが来ている。肝臓移植の話いろいろ。マニラじゃ高いよ、というから、どこなら安いだろうというと、今ならロシアじゃないか、という話。なるほど、ロシアならボールペンと交換できそうだ、というとソコまで安かないでしょう、せめて百円ライターくらい、などとひどい話題だね。前座ブラ汁、ブラックの『野ざらし』、本日の呼び物五月小一郎の『浪曲版・一発のおまんこ』。木馬亭(浪曲専門の定席)で客が怒って帰ったという因縁つきの作。“父はおまんこ兄は口ィ、弟(おとと)は〜アナァルゥでエ〜エエ〜なぐ〜さ〜めェ〜るぅ〜”なんて文句に三味線のお姉さんが真面目に伴奏していたのが何ともよかった。休息時間、談之助、談生たちが楽屋から逃げてきているので何かと思ったら、白山センセイがいらっしゃっているとのこと。続くときゃ続く。

 中入り後、まず白山先生がちょっと出て、圓生を少しやったあと、ブラックの『文七ぶっとい』。話の三分の二はまじめな文七元結なんで、聞いてる方も少々とまどった。ハネ後、いつもの『俺ん家』で打ち上げ。K子(ポーランド語の教室終わってから駆けつけた)と談生とで白山先生の話をずっと聞く。談志の話、圓生の話、小野栄一の話。高座では決してやらない“朝鮮の野球放送”“朝鮮の噺家”が聞けたのは結構。ギャグ再現したいが残念ながらココじゃあできない。そもそも、密室以外ではどこが面白いんだかわかるまい。

 先生を中野駅で送ったあと、トラジで開田夫妻、談之助と。パソ通&ネット話などで爆笑。冷麺と豚足食って私はゴキゲン。12時過ぎ帰宅。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa