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2012年7月28日投稿

つぶやき日記7月24日〜26日

6月
24日(火)「おおかみこどもだよ」

チャイルドウルフガイ。……もう平井和正も若い人たちには通じないだろうなあ。

朝まだ冷え込むが、全身にじっとりと寝汗をかいていた。夜半に暑苦しかったのだろう。母の室での朝食中、某人から頼まれ雑用の催促電話。食後すぐ外出してその雑用すます。すましたらすましたきりでお礼の電話一本もないが、まあ、これは人間、そんなもの。

さらに二時ころ、別の頼まれ雑用でベローチェ。これは雑用と言っても大事なこと。この雑用のおかげでこの数年、こちらが助かった部分もあり。

昼は少し遅く二時ころ、チキンレバーをソテー(油をひかないので厳密にはソテーではない。パンブロイリングというらしいが面倒くさいので向後ソテーと表記する)して冷凍レタスと共にサンドイッチにして。冷凍レタスというのは、レタスをカットしてビニール袋に入れ、冷蔵庫の野菜室室に置いといたのだが、昨日ラムもも肉2キロのかたまりの冷凍が届き、仕事中だったのでとりあえず凍ったままを野菜室に放り込んでおいたら、その下敷きになった部分のレタスがカチカチに凍ってしまっていたのだった。

食べて原稿資料用読書しばらく。気がついたら寝ていた。電話で起される。こないだやった某仕事の関係者。評判よかったのでぜひもう一回やりたいです、というので、「よござんすとも、いつでもお声おかけください」と言ったら「では、再来週の×日は空いてますか」といきなり具体的な日程が出て驚く。お愛想だと思って適当に返事していた。借り押えの日を確認したら、休みとって長野にでも旅行しようと思っていたが、まあ、これは延期だな。

12月公演の日程がちょっと(月内で)ずれたので、出演・スタッフメンバーに確認のメールや電話。WAHAHAの清水ひとみちゃん、子犬会議の大橋健一くん、みな元気ある言葉を添えて参加表明してくれる。ありがたし。

明日は所要で大阪経由福岡。大阪はホンのサカション。パブの打ち合わせである。福岡のMさん、粋にまず整体院での施療をスケジュールに組んでくれた。しかし、こういう忙しさは好きである。と、いうか、好きでないとできない。

http://jump.cx/QnGPEだから、いくら安全性を数字で出しても人間は見た目であれ(オスプレイ)を危ないと判断するのである。兵器の能力の中に、それが民衆に与える信頼性というものまで含まれるとすれば、オスプレイはそこの根本設計が間違っている。オタクの犯罪率は低いといくらデータで示しても誰も納得しないのと同じ。

7時半、下北沢『楽園』。一週間ちょっと前まで詰めていた場所だが、菊田貴公の売り声が場内に響いて、完全にもうルナの劇場と化している。個性強いなあ。菊ちゃんが、なのかこの劇団が、なのか知らないが。

ルナティックシアター『デビュー』。全員芝居に出るのが初めてというキャスティングだが、お客もほとんどが芝居を観るのが初めてだろう。
劇場でビール売ったりするルナティック風を面白がったり戸惑ったり。

観劇終了。詳しくは観劇日記で書くが、思っていた以上に面白かった! たどたどしくも初々しい三人の女性の演技に、ある意味、演劇の原点を見た気がした。ここの影響を私は嫌でも最大に受けている。別の流れが演劇にはあることも充分に体験したが、どちらかというとこっちの方が私の好みである。ハッシーはこの分野を商売にできると思うぞ。

打ちあげ参加したかったが明日博多行きなのでちょっと12月に協力依頼の方々にのみ、詳細(現時点での)プリントしたもの渡して辞去。帰宅したらすぐ、照明のヨッシーから電話、いろいろ打ち合わせ、12月彼女も参加OK。

食べたもの。朝:夏野菜酒粕和え、トウモロコシ掻き揚げ、ご飯、梨(今年初)。昼:チキンレバーソテーサンドイッチ、オレンジジュース一杯。夕方:味噌ラーメン(オーソドックス)。夜:発芽大豆、トマト、鶏手羽カレーとナン。カレーはココナッツミルクと生姜の絞り汁を入れてエスニック風を強調。

25日(水)おおかみこづれの雨と雪
しとしとぴっちゃん。

朝10時、『ゆうゆう散歩』見ながら朝食。地井さんには悪いが、『ゆうゆう散歩』は『ちい散歩』以上に面白い。ハマり中である。何が面白いって、加山雄三のキャラクターが散歩する街に勝っちゃっているのが面白い。大名行列のお殿様が庶民の生活をかいまみて、「許せよ」みたいなことを言ってついと店に入っていく、そんな感じのキャラが今、数少ないからたまらない魅力がある。落語の『石返し』『時そば』などでときどき、松平不昧公が夜鳴き蕎麦を食ったエピソードが紹介されるが、あれに近いイメージがある。

今日は東京から新大阪、しかるのち福岡へという予定だったがまぎわで新大阪がトび、福岡直行。少し楽になる(金は無駄した)。原稿書きで12時まで。

大塚周夫さんインタビューの中で、「バイプレーヤーでいくとフジモリとかね」という発言あり、まとめているIPPANくんから「フジモリとは誰のことでしょう」と質問。前後の発言から時代劇の人で、高原駿雄さんと一緒に仕事をしていた人で……とせばめていき、検索すると、新国劇出身で池波正太郎ものによく出ていた真田健一郎氏(故人)の前名が藤森達雄であったとわかる。わかったときはビンゴ、という感じであるが、昔の話のインタビューというのはしかし調べるのが大変。

1時、羽田新空港。昼を食う時間がなくなり、陣中牛タン弁当なるものを買って機内で食う。麦飯で牛タン焼きをサンドイッチしたもの。機内での食いやすさを考えて作ってある。

博多着、急いで整体院『クプクプ』に行き、90分揉んでもらう。1月以来だが、同じ先生に「痩せましたね!」と驚かれる。揉んでもらっている間はリラックスだが、スケジュールがタイトで、Mさんの事務所に行く予定が時間なくなり、直接食事する店に来てくださいと店にFAXがあった。

焼肉『泰元』別館。本館は看板が大きく出ていてわかりやすいが、別館は何やら隠れ家のような趣。Mさんと息子さんと。イチボ、ミスジ、カイノミなど牛肉のさまざまな部位、それと野菜焼き。ヒジキの塩というので食べる。柔らかくて、サシがまったく胸につかえない。

話はちょっといろいろ突っ込んだ内容になっていく。その店では話が終らず、中洲のカクテルバーに行き続きを話し、さらに近くのホテルのロビーで深夜まで。前からわかっていたことだが、小劇場演劇というものと株式会社組織というものの、性格の全く違うもの同士のスリ合わせは大変。これまでは私は会社組織を2つ、経験しているが、芸能プロダクションと物書きのプロダクションであり、会社のミニチュアみたいなものだった。本格的な株式会社運営というものは初めてで、いろいろとまどうこと多し。他の企画の話もあれとか、これとか。来月もう一回来福が必要か。

ホテルに1時過ぎに帰り、ぶっ倒れるように寝るが、全身に汗が吹き出て急性脱水症みたいになる。あわてて炭酸水飲むが、九州の暑さ、あなどりがたし。

本日食べたもの。朝:塩鮭、漬物、ご飯、果物。その他は日記に全部記したので省略。

26日(木)おおきなこどもの雨と雪
アニメ映画はチケットに大人用子供用の他に“おおきなこども用”を。

明け方、夢にうなされる。悪夢というのではないが、『カリオストロの城』を、身振り手振り、歌なども自分で歌って、まったく知らない人に内容を説明している夢。コミュニケーションの原点みたいなものの大変さにうなされていた。トイレに行こうと立ち上がったとたん、眩暈あり。

シャワー浴びてかなり快復。バナナとミルクティーで朝食代わり。もやもやした感覚のまま、ホテルをチェックアウトして空港へ。昨日の打ち合わせでイラストの資料が欲しいということだったので、渋谷でベギと打ち合わせることにする。

博多ラーメンの店に空港で飛び込んで注文したらサッポロラーメンが出て来てしまった。これと明太ごはんという取り合わせ。機内読書は戸部良一『逆説の軍隊』(中公文庫)。

羽田着、京王バスで渋谷マークシティ駅。マークシティ内の喫茶店でベギに博多での打ち合わせ報告、今後の活動をいろいろ話す。打ち合わせはいいのだが、いや、東京のやかましいこと。地方から帰った身には、工場の中で打ち合わせしている如しである。東京というより渋谷か。地方から帰っての打ち合わせでいつも感じることだが、騒音の度合が全く違う。

そこから今度は銀座線乗って上野広小路。立川左談次『ひとりでやる会』。広小路亭の前を通ったらキウイがいて、「あ、先生! きのうテレビ見ましたよ!」とまとわりつかれる(笑)。コンビニ探して公共料金振り込み、風月堂でオムライス食べて時間つぶし。某女優さんからメール、女優としてがんばるために周辺状況を整理したとのこと。何とか応援してあげたいと思う。

『ひとりでやる会』、最初から四回予定だったそうで、今日が最終回。惜しいものである。前座名人さん、中村さん、待乳庵さん、ぎじんさんなどいつもの顔ぶれ。途中から立川流顧問のYさん入ってきた。談吉くんの『置き泥』、なかなか個性出てきていい感じで面白かった。あと、さだやん師匠が出てきて、「ゆうべサッカー見ながら飲んでたらべろんべろんになって二日酔いで……」と始める。いかにもこの師匠らしい。

で、三席。『町内の若い衆』『錦の袈裟』、そして『妾馬』。前回、私は芝居の稽古で来られなかったのだが、その時はたっぷりと『大工調べ』をお白洲まで演じたという。今回はそんなに力が入っていたわけではないが、私の隣にいて、かなり受けていた女性客が、終ったあと、「前回は難しくてよくわからなかったけど、今回はわかりやすくてとってもよかった!」と言っていた。『大工調べ』が難しいというのはちょっと問題だが(笑)、しかし、一本チカラを抜いた今回の方が左談次らしい、ということは一般聴衆にもわかっているんだな、と、思ったことだった。

それにしても、本来なら落語界ではかなり個性的(談之助やブラックみたいに邪道・異端ではないが)な部類に属するはずの左談次の高座が、この頃聞き込めば聞き込むほど“落語”の本流みたいに思えてくるのは何故だろう。

演劇と落語の人物描写が、最近似通ってきている。演劇出身の落語家さんたちが、ひとり芝居の一ジャンルとして落語をとらえ、そのセオリーでの作品(落語)を高座にかけているためだろう。それは時代の趨勢で、それが若い観客を落語会によんでいる原因なのだろうから、否定しはしない。だが、われわれ昭和の落語を聞いて育った(聞いて老けた)世代にとっては、どこか違和感を覚える現象であることも確かである。

落語を聞くということは、演者が成りきった八っつぁん熊さんを受容するのでなく、あくまで「その演者が演じている」人物を楽しむのが本寸法である。リアリズムではなく、演者がいかにその役を演じているか、その技術を評価する(演者もそれを客にわかりやすく見せる)芸である。そして、全編を通してその技術を見せては客が疲れるから、重要でない場面などは露骨に適当に流す。キャラクターを明確に演じ分ける演出は邪道とされ、戦後、ラジオ向きに登場人物ごとに声質を変えて演じた三代目三遊亭金馬は通と呼ばれる人たちから徹底してこきおろされた。要は、描写をあまり丁寧にやっては野暮、な世界なのだ。

「そんなのあり?」と若い人は思うだろうが、落語というのがそもそもそういうものだから仕方がない。なんであんまり丁寧にやらないかというと、昔は寄席というのは(現代人がテレビを見る感覚で)ほぼ毎日通ってきていたものだったから、聞きなれた話を丁寧にくどくやっては聞く方でたまったものではなかったからである。

しかし、そんな演り方を拳々服膺していては今の独演会中心の若い人の支持は得られないから、落語もどんどん、登場人物描写を現代的表現をもって演じるようになる。

これの典型例が談志の『芝浜』であり、談志は落語家の仕事の基盤が寄席とか江戸文化から離れた地方での興業が中心になった時代に、それに合わせた演出法を開発しなければならない、という観点から、あの演出法を取り入れたのだろう(地方を馬鹿にしているのではない、落語という芸能がそもそも江戸の文化を産湯に使い江戸っ子相手に商売をして育ってきた文化なのだから是非もない。私などは江戸っ子でも通でもないが、周囲に業界関係者がいたために、自然そういう聴き方を本来のものとして落語教養をつけてしまった)。

と、いうわけで最近は若手ばかりかベテランまでどんどん、演劇的演出の落語へとシフトしはじめ、やむを得ないとはいい条、ちょっと落語を聞くことが苦痛にもなりかけてきた状況下で、昨日の左談次の『妾馬』に、演者の個性が立った「落語らしい落語」の懐かしい正当な「型」を見せてもらい、喝を癒したというのが正直な感想だった。

江戸落語、とはさすがに言わないが昭和の落語をひさびさに聞いた。こういう型を残せたのが、寄席で「今」の客を相手にせざるを得ない落語協会や芸協の噺家でない、立川流の噺家だから、ということになると、立川流というのは昭和の落語のDNAを孤島化することで保存している、ガラパゴス諸島のような存在かと思える。聞けば、トイレのことを「セコ場」というような古い楽屋用語を使っているのも、今や立川流くらいだとか。談志という人が立川流を創設して協会をオン出たときには伝統を無視する横車な奴、というイメージで世間はとらえただろうが、それがこうして昭和の落語の匂いを現代に残す役割をしていたのだとしたら、それもまた皮肉な、しかしまことに益あることだったと言えると思う。

打ちあげは例により『加賀屋』。飲み物の新メニュー(?)にバイスが入り、ノリローさん、待っちゃん、前座名人さん、中村さんなどと「バイスとはそもそもなんぞや」と。私は「梅酢」説を述べる。快楽亭骨折の報あり。http://blog.livedoor.jp/katumi707/archives/51997252.htmlというような状況だったらしい。訊いたら全治四週間で、私が大須に行く頃にはギプスも取れているようだが、この暑さの中のギプス生活はつらかろうなあ(笑)。あ、(笑)をつけちゃ悪いか。

左談次師匠の背中の壁の後ろにキウイが(真打なのに)控えていて、何か呼ばれるとひょい、と顔を出す。その様子を例えて左談次が「お前はポーランドの人形劇か!」

11時過ぎ、帰宅。さすがに体力使い果たし、そのままベッドに電池切れのように倒れこむ。いろいろ考えること多いが、考えてもまだどうにもならないことばかり。

本日食べたもの、夜は加賀屋でもつ煮、もつ焼き、やきそばなど。後は日記中に全て書いてあるので省略。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa