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2011年8月7日投稿

開田裕治絵画展

開田さんと丸山浩さんの『ウルトラ戯画2』に、行ってきた。
「会場が、小劇場なんですよ」
とは聞いていたが、早稲田駅から歩いていく途中で、アレ、と
いささかデジャブを感じる。
途中で思い出した。アア! ここ!
『THE GUIDE』という会場名を見て完全に記憶が鮮明になった。
前に芝居を観に来たことがある。コンタキンテさんの一人芝居だった。
あのときは
「うわあ、まるでアートスペースみたいなところで芝居をやるなあ」
と思っていたのだが、今回はまさにそこをアートスペースに使っていたの
だった。

あのとき、楽屋はどこにあるんだろう、とか、調光室はどこなんだ、とか
芝居を観ながら気になっていたのだが、今回、改めて、そのとき舞台だった
ところ、舞台裏だったところなども子細に観察できた。いや、開田さんの
絵を見なかったわけではないです(笑)。

大画面に出力されたレッドキングの迫力はやはりすごい。
やはり私には昭和のウルトラシリーズの怪獣デザインがしっくり来る。
あの頃は毎日、こないだまで空き地だったところに巨大なビルが建ったり、
学校の通学路にあった林が夏休み中にそっくり無くなって工場になったり
していた。「文明」というものが、日常を侵食している光景が間近に展開
されていた。われらが怪獣は、その、文明に侵略された自然の怒りの代弁者と
して、街を破壊し、宇宙ロケットを襲い、人間を右往左往させていた。
所詮ははかない抵抗ではあったが、しかし、その破壊にどこかスカッと
したものを感じたのは、文明の発展が、われわれに“便利”の代償として、
どこか窮屈な、締めつけを強要していたからに他ならない。

怪獣は失われつつある自然へのノスタルジーによって出現したものなのだ。
その、存在の基盤に、すでに郷愁が含まれているのである。
それは、近代の落語が、失われつつある江戸の文化へのノスタルジーに
よって生れたのと同じなのだ。ノスタルジーは、しょせん、言うて
せんないケムリのようなものである。せんないものであるからこそ、
その残り香が、たまらなくいとおしい。

そうか、それで私は怪獣と落語と、あと本格ミステリと怪談と、粋なコメディ
が好きなんだ。いずれも、平成のこの世の中で、ちょっと居心地が悪そう
なところにたまらない可憐さを感じてしまうのである。

こういう小劇場(とさえ言えない演劇スペース)もまた、ノスタルジーの
香り極めて高いところであるなあ、と思いつつ、だから怪獣との相性が
よかったのかもしれないなあなどとつぶやいて会場を後にしたので
ありました。

残念ながらこの『ウルトラ戯画2』は7日で終了ですが、この後、
24日からは渋谷PARCOのロゴスギャラリーで『総天然色ウルトラQ
リターンズ 怪獣絵師 開田裕治とTOYの世界』が開催。
こちらの方がよりノスタルジックです。
http://m-78.jp/news.php?id=1061

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