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2011年1月14日投稿

巨匠(エロホラーの)と呼ばれた男 【訃報 ジャン・ローラン】

フランスの映画監督ジャン・ローラン、
2010年11月15日癌で死去、72歳。

生涯にわたって50本以上の作品を撮ったがその
ことごとくがポルノかホラー、もしくはその両方であったという、
ユーロトラッシュ映画の一方の雄と言うべき存在であった。
日本でのビデオ発売タイトルを見ただけでも、まあどういう
作品化は想像がつく。
『呪われたレイプ魔』
『リビング・デッド・ガール』
『血に濡れた肉唇』
『催淫吸血鬼』
『猟奇殺人の夜』

エロの中でもローランの好みはレズビアンであって、
大抵の作品で女同士のからみシーンがあり、
ヨーロッパという地の利を活かした由緒ある古城での撮影、
あふれる退廃趣味、セリフを極力排した映像主義などから
耽美系ホラー映画の監督と呼ばれることもないではないが、
残念ながらローランの作品はビスコンティ的な退廃耽美を描くには
低予算でありすぎ、趣味も俗悪でありすぎた。

耽美的なその映像美も言を変えれば間延びしたしまりのない映像、
となってしまうわけで、ヨーロッパのホラー映画マニアにはローラン
の作品を毛嫌いする一派も根強いという。
それでも、ここまで自分の作品のスタイルを統一させると
一種のカリスマとなり得るわけで、彼の作風を表す“ロリネード”
という言葉まで造語されるほどであり、アメリカの若手映像作家
たちは、彼の作品を非常に高く評価しているようだ。

代表作である『ファシネーション』(79)は日本版タイトルが
『ジャン・ローランの血の誘い』と、監督名が冠されるほどの
カリスマ的扱いを受けている。
もっとも、この映画は脚本もなく、いきあたりばったりに
話を作っていって2週間で完成させたそうな。
http://www.youtube.com/watch?v=b-BEpqQH_TQ&feature=player_embedded

近影を見るとどこの大監督か、と疑われるほどの貫録ある体躯と
顔つきをしているが、気難しげに見えて気はいい男であったらしい。
同じくユーロトラッシュ映画のキングであるスペインの
ジェス・フランコが撮影途中で投げ出して行方不明になったという
二本の映画、『バージン・ゾンビ』と『ナチス・ゾンビ』の二本の
後始末を引き受け、非常にやる気のない演出ながら完成させている。

http://www.youtube.com/watch?v=cvelUDUZmH4&feature=player_embedded
……これは『ナチスゾンビ』。ここまで安っぽいと一種美学を感じる
(ような気もしないではないと言えなくもないかもしれないと思わない
でもない)。

とにもかくにもジャン・ローランは自分の好きなタイプの映画を
一生にわたり、最晩年にいたるまで撮り続け、特異なジャンルでは
あるが大御所として名を残した。この上何を望もう。
冥福を祈るよりはゾンビとなってまた甦らんことを。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa