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2011年1月2日投稿

分析した男 【訃報 ジェフリー・クローリー】

10月29日、ジェフリー・クローリー83歳で死去。
イギリスにおける写真解析の専門家として非情に名高い人物で、
ケネディ暗殺の写真の解析も依頼されたことがあるそうだが、
トンデモ系の人にとってはあのコティングレー妖精写真の
分析に当たった人として有名。

コティングレー妖精写真事件とは、1917年、イギリスの小村
コティングレーで、エルシーとフランシスという二人の少女が
妖精の写真を撮ったという事件。後にシャーロック・ホームズの作者
であるコナン・ドイルがこれを見て“ホンモノ”と断定したために
大騒ぎになった。ちなみに、ドイルの原稿の載ったストランド・
マガジンに掲載された妖精写真があまりにインチキ臭かったために、
後世ドイルはこんなチャチなトリック写真も見抜けぬ明きめくら、と
言われ続けることになったが、これは編集部がピンボケの
オリジナル写真を修正したためわざとくさくなったもので、
オリジナルの写真はなるほど、ちょっとインチキとはわかりにくい。
http://www.ash-tree.bc.ca/acdsfairies.htm

1979年、クローリーはこの写真を分析し、少女たちのトリックを
暴露した(少女たちが捏造を告白した証言も出てきた)ことで有名に
なったが、しかし彼はトンデモをあばいて、信じるものの愚鈍を
あざ笑うような偏狭な懐疑論者ではなかったようだ。
彼は、フランシスが最後まで“これだけは本もの”と言っていた写真につき
「どう調べても偽造の証拠は発見できなかった」
と言っているが、これは彼の優しさが言わせた言葉ではないか(実際、
その写真もインチキ臭さという点では他の写真と変わりない)。
ニューヨークタイムスの訃報記事は、この事件に対するクローリーの
次のような言葉で締めくくられている。
「もちろん妖精は存在する。サンタクロースが存在するのと同じくね。
だが、私はそれらをこの苛酷な現代社会にひきずり出そうとは思わんね」
「エルシーたちは、誰にも危害を与えていない。彼女たちはわれわれ
に神話を与えてくれたんだ。世界中のプロカメラマンのうちの誰に、
そんな真似が出来ると思うかね?」
ユーモアとファンタジーを解するイギリス人らしい言葉である。
黙祷。

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