裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

25日

木曜日

フリオの死を遂げる

歌っている最中に、カブトムシが口の中に飛び込んで窒息。

※ミリオンエッセイ リーディング稽古 『新耳袋楽園出張版』

今朝の夢。
山本会長と私でトークをしなくてはいけないのだが、
キャンプ場のようなところで打ち合わせて、二人でお茶を酒と
見せかけて飲みながら酔っぱらったフリをして、
業界バクロトークをしよう、と打ち合わせる。
山本さんがトークの記録用に持ってきている
ビデオカメラセットが、他人には動かせないようキーロックできる
装置がついており大変カッコいい(ロック中はランプが明滅してさらに
カッコいい)。
で、マスコミの取材にも煙幕を張るひつようがあり、そこを
三才ブックスのTくんに頼む。Tくんが、会長に変装してテレビの前で
いろいろ話しているのを見て、笑いをこらえるのに苦労する。

朝9時半、何とか起床。
遅れるかも、と母に先夜メールしたのだが届かず。
「夜は携帯の電源を切っているから」
と。何にもならない。
バナナダイエット。

ミリオンエッセイ2本目、完成させてメール。
なんだかやたらスケールが大きい話(国家の根源、とか)に
なってしまった。猟奇漫画本なのに。

福岡の男児誘拐殺害事件が母親の犯行、というニュースに
引き続き千葉県で女児が遺体で発見というニュース。
憎むべき、あってはならない事件である、と胸をいためる
一方で、女児の名前が幸満、というところが脳の別の部分で
ひっかかる。しかも読みが“ゆきまろ”(まあ、直の音読みで
ないだけマシだが)。
まろというのは“麿”“麻呂”から来ているのだと思うが
こういうことを言うのも何だが、“まろ”は“まら(摩羅。男性器)”
が語源であり、男児を表す呼称である。
子供の名前に関してはもう少し気をつかってほしいと
つくづく思うんである。

2時半、事務所。
朗読会用の原稿をコピー。
最初、小さめの原稿を1.5倍に拡大して5枚ほどコピーし、
次に普通の大きさの原稿を40枚、コピーする。
コピーの手際案外よく、自分で自分を褒めていたのだが、
出来上がって確認したら、1.5倍の拡大をもとに戻すのを
忘れていたため、みんな用紙からハミ出てしまっていて、
40枚のコピーが全部無駄になった。
思わず力の抜けた“ハハハハ”という笑いが漏れる。

仕方なく、自分用と希依子ちゃん用のコピーのみ持って
下北沢。『さるにされる』と『暗中の接吻』をざっと読む。
希依子ちゃん、持ち前のノーブルさがどうしても全面に出て
お嬢さんになり過ぎる。もっとやんちゃに演じてちょうだい、と
注文。しかしやる気十分で、本来地の文のところで処理する
心理描写のところも自分が読みたい、と言い出す。

読み合わせしているうちに劇団員三々五々小屋入り、
舞台を作り始める。腹に何か入れておこうとファーストキッチン。
出て、歩いていたら“唐沢さん!”と声をかけられる。
何と、十年前、富久町ロフトの店長だったMさんだった。
当時のMさんは不思議少女といったおもむきの女性だったが
さすがに十年の年月は人を変える。
「唐沢さんは何でそんなに変わらないんですか!」
と言われる。まあ、あの時から老けていたから。
今は音楽関係の事務所にいて、さっきもその打ち合わせで外人アーティスト
と話していたら、その外人が
「てれびニ出テイル先生ネ」
と私を指さしたので、驚いて飛んできたそうだ。
「下北で何やっているんですか」
というので、芝居をプロデュースしてんだよ、と劇場の前まで
連れていったら、観に行きます、と、その場でチケット買ってくれた。

ハッシーと少し打ち合わせ。今回の公演の収支。
おお、というような結果もあり。
今日は最後の新耳袋。
木原さん相変わらずの張り切り様。
シヴヲさん、前回、この劇場に“出る”ということを聞いたので
定点観測用にカメラを据え付け、夜中の劇場の様子を
逐一チェックしたそうな。
足跡、カラスの鳴き声のようなもの、などが時折響いて、
なかなか怖かったりする。はっきりと霊とわかるものは
出なかったけど。

前々回は少し怖さの中和を目論んで笑いに走ってしまったので
今回は怖い話を私もふる。ちょうど神社の話が出たので、
ミリオンの原作のためにまとめた、“サムハラ神社の話”を
してみる。ラストの“そして二年後……”の部分で、お客と壇上の
シヴヲさんが“ええっ!”と叫んだのを見て、心の中で快哉を叫ぶ。

最後は木原さんの秘蔵ビデオ紹介。
いや、気味悪い。
怖がりの佐藤歩(今日は怖がりガールズとして壇上にいた)が
最後に感想を述べて
「誰か今夜私の家に泊まってくださーい!」
と叫んだが、私と木原さんが同時に
「喜んで!」
と身を乗り出したのにみんな爆笑。
芦辺夫妻がまた来てくださったが、奥様、
「休息時間があれば逃げ出そうと思っていたのですが……」
と。ナジャさんはサムハラばなしがいたくお気に召した模様で、
芝居の方もチケット予約してくださった。
FKJさん、YAGIさんからもサムハラばなしは絶賛受けた。

今日はテンション高く、気持ちよく打ち上げ。
とはいえ、祝日の前の日でなかなか店が決まらず、えん屋になる。
えん屋になる、などと書いたが、しかし料理は評判よし。
山芋と卵のふわふわお好み焼き、冷したぬき豆腐など。
乾ちゃんがジブリの話を熱心に木原さんに訊いていた。
長いと思っていた一カ月公演も、あと一週間。
いや、この高揚感が芝居の魔力なのだなあ。

*シヴヲコレクションのひとつの幽霊画の前で。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa